Snow White


#プロローグ







太陽が顔をのぞかせる事が出来ないほど濃密な雲が空を覆っていた。
その雲が薄くなるぐらいの闇が辺りを支配する。
そこにはらはらと舞い降りてくる白い結晶。
漆黒の闇は、その白い結晶を更に引き立てていた。
いや、言うならばそれは、闇という海に白い精霊が舞い降りるような。そんな……。

そして、この雪の降る冬の夜空の下、一組の男女が誰もいない公園の一角で向き合っていた。
白と黒の空間の中に一際映える、青と赤の色の傘。
その青い傘をさしているのは、水沢聡という名の少年。
もう一人の赤い傘をさしているのは、浦佐亜矢と言う少女だ。
二人は、傘と傘が触れるか触れないかのギリギリの場所に立っていた。
静かな空間だった。
二人以外誰も居ない所為もあるが、聞こえてくるのは、静かなために聞こえる耳鳴りのキーンと言う音のみ。
「ごめんな。こんな時間に呼び出しちまって。親、何か言ってなかったか?」
「ううん、なにも。ちょっとお友達の家に行ってくるって言ったら、二つ返事でOKしてくれた」
「そっか。それは良かった」
安心したかのように笑うのを見て、亜矢もニッコリと笑う。
「はははっ。ホント安心したよ。呼んだのはいいけど、時間が時間だし来てくれなかったらどうしようかって思ってた」
「大丈夫だよ。もし駄目って言われても、絶対に来たよ。私」
「この親不孝者め〜」
「あはははははっ。どうせ私は親不孝者ですよ〜っ」
静かな公園に広がる二人の声。
誰も邪魔するものがいないからこそできる事だ。
ひとしきり取り留めのない会話が続いた後、急に真顔になった聡が、ゆっくりと口を開いた。
「なぁ、亜矢」
「ん?」
「すぐに済むから、真面目な話……してもいいか?」
それを聞いた亜矢はピクッと肩を上げたが、すぐに小さな声で『うん』と頷いた。
まるで、その先にあることが分かっているかのように。

そして、聡の口から発せられた言葉は―――――


「亜矢、俺さ――――――――――」



その時聡の頭の中にあったのは、今亜矢に伝えなければいけないことと、もう一つ。
出会ったころの事が浮かびあがっていた……。
クリスマスイブを目前に控えた、ある昼休みの事―――――







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