Snow White


#5 聡







半分賭けだった。
浦佐を誘った事は――――






いや、言葉が悪かったかもしれない。
軽い気持ちとかそんなんじゃなくて、ちゃんとした気持ちから誘ったんだ。
だから賭けなんかじゃない。
この間、ハンカチを弁償すると言ってまだ買ってなかった。
俺一人で買ってきても良かったけど、どうせなら浦佐が気に入ったものを買ってやりたい。
そう思って、放課後一緒に帰ってるときに、思い切って聞いてみた。
「……なぁ、浦佐」
「ん?」
「こ、今度の日曜さ……ヒマ、か?」
「えっ? ど、どうして急に?」
「もしよければだけどさ……出掛けないか? 二人で」
「出かける?」
「まだハンカチ返してなかっただろ? だからそれを買いにどうかなって思って」
「それならいのに……」
「やっぱダメ、かな」
「……うん、いい…よ」
「えっ?」
「いいよ……日曜、でしょ? うん。あいてるよ」
少し頬を染めながら、はにかみ加減に頷いた浦佐を見たとき心の中で思わず舞い踊ってしまった。
やった、二人で出かけられるぞ! と思ったその時に、ある言葉が頭の中に浮かんでいた。

――デート――

そうだよな。こういうのって実際デートって言うんだよな。
まさか自分が誘う立場に置かれるとは……
そんな日が来るなんて思ってもみなかった。
でも、そんな事はどうでもいい。 二人で出かけられるんだから。
浦佐を誘ったその日から、日曜が待ち遠しくてしょうがなかった。
その間に浦佐から八色の発言を聞いてヒヤリとした事もあったが、何事も無く時は流れていった。



水曜、木曜、金曜と流れて、週末。
いよいよ明日に迫っていた。
名目は買い物だけど、俺にとって初めての女の子とのデート。
いやがおうにも緊張する。
待ち合わせの時間は10時に公園の噴水前。
本当は駅前の方が買い物する時に近くてよかったんだけど、恥かしいから……と言うので人が少ない公園に待ち合わせることに。
寝坊だけはしないように目覚ましは早めにちゃんとセットしてある。
万が一時計が止まったりしないように電池も新品のを入れておいた。
洋服も準備してあるし、もう後は明日を迎えるだけ!
頼むから、晴れてくれよ……
ついでに逆さにつるしたてるてる坊主でも作っておくか?
……あれ? 逆さにつるしたら雨が降るんだっけか?
それとも普通でいいんだっけ……いかん。こんがらがってどっちだか忘れた。
あぁもう、てるてる坊主はいい! とにかく、晴れておくれ!!
パチンと電気のスイッチを切ると、部屋にようやく夜の帳が下りる。
しっかり睡眠とって、明日に備えるぞ。



…………

……………

………………


「ね、眠れん……」
我ながら何と恥かしい事だろう。
明日、と言っても時間的にもう今日になってるけど。
心臓がドキドキ興奮していて全然寝付けない。
目をつぶって何とか寝ようと頑張るけど、余計寝れない。
ちくしょう、こんな大事な時に。
時計の進む音がヤケに大きく聞こえてきやがる。
俺は負けないぞ。寝るったら寝るんだ。

…………

……………

………………

もう時間は経ったか……くそっ五分しか進んでねぇじゃんかよ。
どうして寝るのにこんなに苦労しなけりゃいけないんだ!
いっつも学校でグースカ寝られるのに。
そんなに緊張は―――してる、よなぁ。うん。
流石に今の状況を見ればよく分かる。
緊張と言うよりも、興奮とか不安とかそう言ったものの方が大きい。
俺はちゃんと接する事ができるだろうか?
いつもと変わるわけじゃないってのは分かるんだけど。私服で、しかも二人でどこか出かけるんだから……
今こんなんで、明日大丈夫なのかなぁ。
何だか今から不安を抱いてしまっていた―――。


pipipipipiッ――

「…………んっ……」
部屋に響き渡る電子音。
あんだよ……朝っぱらからうるせぇな。
手探りで音源を探し出して、少しだけ強めにてっぺんを叩いた。
音が止まって、ふぅと一息ついた瞬間にふとあることに気が付いた。


「俺……寝れてんじゃん」





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