Snow White


#3 聡







ふと時々考える。
俺は、何のためにここまで頑張ってるんだろう?






学校ではい〜っつも寝てるって事は前にも話た。
それこそ、起きてる方が珍しいって言うくらいに。
こんな生活が始まったのはいつの日だったか。
そもそも、高校に入ってからの一年間はこうじゃなかった。
普段寝ている、のではなくしっかりと起きていたし、授業も真面目に受けていた方だった。
……そりゃ、眠くて寝た時もあったけど。
だけど、そんな生活も長くは続かない。
と言うより、自分におかれている状況を知ったのは親の一言だった。
『はぁ……今月も厳しいなあ』
もちろん、それが俺に向かって言われたものではない。
偶然聞こえたのだ。
そこで俺はハッとなる。
自分が今通ってるのは私立の高校。
これは高校入試をするに当たっての第二志望だった。
第一は当然公立であって……ものの見事に落ちた。
ただでさえ親に迷惑を掛けたくないと普段から考えている俺が私立に行く羽目になってしまったのだからさぁ大変。
まずお金が掛かる。
公立と違って、私立は国からの援助金が少ない。 だからよく私立援助額増加の署名が出てくるわけで。
その所為かどうかは個人の意見で言いかねるけど、入学費や授業料、その他もろもろ見積もっても公立の何倍も掛かるのだ。
その事に気がついた……と言うよりは思い出したのが高一の終わりごろ。
それまですっかり忘れて高校生活というのを楽しんでしまっていた。
いや別に、生活そのものが悪いってワケじゃないけど。
とにかく、このままじゃいけないと思ってバイトを始めた。
そして貰ったお金の何割かは家へと。
当初は『息子にそんな事されたら親の面子が潰れる』と言われて拒否されたのだが、俺が持ってると全部使いそうだから預かってくれ、と半ば強引に押し付けることによって何とか収まったのだった。


んで、バイトをやってるんだから報酬としてお金がもらえる。
全額を親に渡してるんじゃないから、当然いくらかは手元に残る。
大して趣味の無い俺は、とにかく使い道が見出せない。
自分の財布の利潤目的でバイトしてるんじゃないから当然だ。
そんな状況だから、支出よりも収入の方が多い。 だからドンドン溜まっていく。
本人の意思に関係なく……。
だったらバイトしなけりゃ、と考えたこともあったけど、それじゃ本来の目的を失うので却下。
ではバイト時間の減少。
これも却下。 家に入れるなら大いに越したことないし。
結局、自分の貯金が増えようが気にしないと言う事で今までどおり続けていたんだ。


この日も、学校が終わるとすぐにバイト先へと直行。
俺が働いてるのは、喫茶店のようなバーのような……ちょっとよく分からない店。
コーヒーや紅茶といった喫茶店向けのものから、カクテルやワインのようなバー向けの飲み物まで……
自分でもよくここに採用させてもらえたと内心驚いてる。 だって俺未成年。
でも、店そのものの雰囲気も良いし、なによりマスターが良い人だ。
だから俺も、楽しくバイトを続けられるんだ。
「ちは―ッス!」
店への階段を下りて――店自体が建物の下、ようは地下にある――ドアを開けて元気よく挨拶を。
お客がいるんじゃないか?何て思うかもしれないけど、何故か俺が行く時間帯は客足がパッタリ途切れる。
それを知ってるからこそできる事であって、マスターも笑顔で迎えてくれる。
そして今日も、やはりマスター以外に人はいなかった。
「やぁ、来たかい。今日もこの通り、この時間の客の出入りは皆無だ。ハッハッハ」
何でか知らないけど、この店の来客時間帯は昼前後と夕方以降の二つに綺麗に分かれてる。
店に置いてあるものが関係してるんだろうか?
「店大丈夫なんですか?」
「おいおい、そこまで深刻じゃないだろ」
「まぁそうなんですけどね」
「これもいつもの事だ。あっそうだ聡、新しいコーヒー豆仕入れてみたんだけど飲んでみるか?」
「新しいやつですか? どんなのだろ……じゃあそれまでに着替えてきます」
「おぉ、おまえさんもきっとそう言うと思ってな。なんとコーヒーはほぼ用意済みだ。早くしないと冷めるから着替えは早くな〜」
「そ、そんなぁー」
……とまぁ、マスターはおちゃめな部分もあるんだなこれが。


「あぁ〜いかんいかんすっかり忘れてた。聡、今日はちょいと用事が合ってね。店のほうは夕方一杯でおわりなんだ」
「あれま、そうなんですか?」
コーヒーを飲んだ後、いつものように接客をこなしながらマスターに注文を伝えに行った時に突然言われた。
「夕方一杯って……もう後少ししかないじゃないですか」
「そうなんだよ。急で悪いな」
「用事ならしょうがないですからね。じゃあ俺、上先に掃除してきますよ」
「あぁ、悪いな」
早く終わるなら仕方が無い、さくっと入り口前の掃除を終わらせよう。
ほうきとちり取り片手に入り口へ。
夕方の道は結構の人で賑わいを見せていた。
そして、さぁ始めようとした時に横から声を掛けられる。
「水沢……君?」
どこかで聞いた事のある声。
ふと見れば、そこには買い物袋を持った浦佐の姿が。
「う、浦佐?」


―――これが、引き金となったのかもしれない。





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