Snow White


#2 聡







事はとにかくあっという間に進んでいった。
まるでそうなる事があたりまえなのだ。と言わんばかりに――――






俺がぶつかってしまった相手は何と同じクラスだった。
その証拠に、今目の前に行って話をしてる。
話をするのは良いけれど、どういう訳か彼女は慌ててる。
まるで小さい子供が悪い事したのを隠そうとしているような……
何はともあれまずは落ち着いてもらわないとなぁ。
わたわた両手振って少しのパニックに入ってる彼女を何とか止めると、深呼吸するように促す。
「……スー……ハー……」
適当なところで聞いてみると、多少落ち着いた感じの声が返ってきた。
まだ少しどもってるような気がするけど……ひょっとして俺が怒ってると思ってるのかな。
よ〜く考えればさっきの慌てぶりも、それなら納得いくし。
「何か勘違いされてそうだから最初に言っておくな。俺文句いいに来たワケじゃないから」
それを聞いて、表情は一変。
まさに、そうだったの?と言わんばかりに安堵感が広がっていた……ように俺には見える。
う〜んやっぱそう思われてたか。 しょうがないかな。
とにかく、話をできる状態になったので切り出してみると―――
なんと言うか、頭のどこかにあったような展開が見事に形成されたわけだ。

「でっでも、悪いのは私で……」
と言う彼女と、
「キミは悪くなんかないさ。あれは俺の不注意だったんだし」
と言う俺。

さっきも似たような事やったし、まさかとは思ったけどやっぱりこう。
譲る譲らないの問題じゃないのは分かってるけど、彼女が悪いという事にはしたくなかった。
あれはどう考えても俺の不注意が招いたことなんだけどなぁ。
このままこう着状態が続くかと思ったその時、急に横から声が入った。
「はいはい。そこまで〜」
見ると、隣に女子生徒がパンパンと手を叩いて立っていた。 そして、堂々巡りになるからお互い悪かったという事で謝る、と言う事に落ち着けてしまった。
何と言うか、こう着状態を変えてくれたのは嬉しいけど……誰だろう?彼女。
まぁ、それは後で聞くとして…。
「……ありがとな、これ」
改めて手当てのお礼を言った。
せっかくのハンカチをこんなにしてしまって。 俺の左手に巻かれたそれは、もとは白かったのに、今は血が付き空気に触れて赤褐色へと色を変えていた。
こりゃあ洗っても染みが残っちまうだろうなぁ。 血って染み込んじまうとなかなか落ちないんだ。
「血、付いちまったな。洗っても綺麗に落ちないだろうから新しいの買って返すよ」
「えっ!い、いいよ別に。これは私がすきでやったことだから」
「でも、それじゃあ俺の気がおさまらないよ。やっぱり弁償させてくれ」
「弁償だなんて……」
「頼む、これだけはそうさせてくれ。な?」
「う、うん……」
まだ納得しきれてないようだけど、彼女は頷いてくれた。
流石にこればっかりは双方引き分けにはしたくないよなぁ。
ん、引き分けって言い方はヘンか。 とにかく、そう言うことだ。
「ありがとう」
―――と、ここで一つ思い出したことがある。
よく考えたら、俺彼女の名前知らないじゃん。
「まだ名前聞いてなかったな」
「あっ私も……」
ここでお互い自己紹介。 彼女は、浦佐亜矢と言うのだそうだ。
浦佐か……ふむ。
「俺は聡。水沢聡だ。よろしくな、浦佐」
「こちらこそ……水沢君」

「あれれ、水沢君名前知らなかったの?」

再びさっきの女子生徒が口を挟んだ。
同じクラスなのにー、と言って驚いている。
え?同じクラスだって?
でも、俺の方はしらな……あ、もしかして……。
「……寝てるからかも」
「は?ねてる?」
「あぁ。俺学校ではほとんど寝てんだよ。だからクラスの人間も、親しいの除いてほとんど知らないんだ」
当たり前だけど普段話す機会の無い女子は全員知りません。 という訳だ。
そう言ったらあちらさん額に手を当ててしまった。
そして何と、いい機会だから覚えて、と言われてしまった。
……これって、いい機会なんだろうか?
「私は、八色美香って言うの。覚えた?」
八色ねぇ、結構珍しい苗字だな。
こりゃ覚えられるわ。 変わってるから。
なんて失礼なこと頭に浮かべながらその後も話していると、ガラガラッとドアの開く音がして先生が入ってきた。
でも、いつも来る人ではない。
で、教壇に立つなり発せられたことは……
『担当の先生が不在のため、この時間は自習となる』
だそうで。 自習か〜……うんっ。これは睡眠タイムを取るいいチャンスだ!
寝てたって文句いわれないし、そうと決まればさぁ急げだ。
浦佐と八色に声をかけて、自分の席に戻るなり早速突っ伏した。
昼休み寝れなかった分を……ぐぅ。





Next...→

Back...→