Snow White


#2 亜矢







そのとき、私は思った。
『運命』と――――






「え?なに、一体どうしたって言うの?え、え?」
美香は私とその男の子を交互に見ながら頭にハテナマークを浮かべていた。
まさか……美香の言ってた事が本当だったなんて。
そんな思いと再び会えた事とが混ざったまま、私は彼を見ていた。
一方の彼も、先に話し掛けていた人に何か言うと、私のほうへ向かってきた。
ど、どうしよう。もしかして、走って行っちゃった事怒ってるのかな。
今になってあの事を後悔してる。
異性が苦手な私を、この時ばかりは呪った。
そして―――
「あ、あのs」
「ご、ごめんなさい!」
彼が切り出す前に自分から謝る。
許してもらえるかどうか分からないけど、とにかく謝らないと……。
「怪我させちゃったうえに走って行っちゃって。あのっそれで……」
「…え?あ、あのさ」
「悪気はなかったんですけど、ああいう時どうしたらいいのか分かんなくて。それで、それで……」
「ストーップ!」
「きゃあっ!」
「誰が悪いとかはこの際どうでもいいとして、まずは落ち着いてくれ」
「はっ……はぁ」
「深呼吸して」
「……スー……ハー……」
な、なんだか分からないけど……彼の言うとおりに。
いくつか深呼吸してるうちに、速まった動悸も収まりなんとか平常を取り戻せた。
「……落ち着いた?」
「は、はい……」
「じゃあ話を戻すけど、今の見てると何か勘違いされてそうだから最初に言っておくな。俺文句いいに来たワケじゃないから」
「……え、そっそうなんですか?」
「こっちが悪いのに、更に手当てまでしてもらってる。何処にも怒る原因なんてないだろ?」
「で、でもっ悪いのは私で……」
「キミは悪くなんかないさ。あれは俺の不注意だったんだし」
「いやっでも……」
「はいはい。そこまで〜」
急に、横から声が入った。 美香だ。
「二人とも、そんなんじゃ堂々巡りが関の山よ?水沢君も、さっき自分で誰が悪かは置いておくって言ったじゃない。亜矢も亜矢よ。そこまで自分を責めなくったっていいでしょう」
「「でもっ」」
「そこまで言うんだったら、両方悪いってことにすれば?そうすればお互いに謝るって事で落ち着くでしょ」
確かに……美香の言う通りかも。
このまま言ってても話が終わりそうになかったし、私も自分が悪いって決め付けてたかもしんない。
向こうも、そうだと思う。
「ご、ごめんね……」
「あっあぁ……こちらこそ、すまん」
ぎゅっと握手をして何とかおさまった。
「はいっよく出来ました〜」
「……ありがとな、これ」
彼は私が巻いたハンカチを触りながら言った。
真っ白だったはずのそれは、彼の血で赤褐色に色変わりしている。
ちょっと残念な気持ちもあったけど、ハンカチは使うものだから。 それに、立派に使命を果たしている方がハンカチにとってもいいだろうし。
「血、付いちまったな。洗っても綺麗に落ちないだろうから新しいの買って返すよ」
「えっ!い、いいよ別に。これは私がすきでやったことだから」
「でも、それじゃあ俺の気がおさまらないよ。やっぱり弁償させてくれ」
「弁償だなんて……」
「頼む、これだけはそうさせてくれ。な?」
「う、うん……」
「そっか、ありがとう」
 そう言って、彼はニッコリと笑った。
「ふぅ。―――あ、そうだ。まだ名前聞いてなかった」
「あっ私も……私は、浦佐亜矢」
「浦佐か……俺は聡。水沢聡だ。よろしくな、浦佐」
「こちらこそ……水沢君」
「あれれ?亜矢はとにかく、水沢君名前知らなかったの?」
一緒のクラスなのに、と美香が言った。
当の水沢君は、美香を見て『誰?』と言いたそうな顔。
「え?俺のこと知ってんのか?」
「知ってるも何も……同じクラスなんだから当たり前じゃない」
「俺は知らないぞ?」
「えぇっ!?ど、どうして。もう十二月だよ?いくらなんでもそれは……」
「たぶん……寝てるからかも」
「は?ねてる?」
「あぁ。俺学校ではほとんど寝てんだよ。だからクラスの人間も、親しいの除いてほとんど知らないんだ」
あ、そう言えば今になって思い出した…。
授業中、いっつも寝てる男子がいたっけ。
たまに先生が起こしても起きない時があって、それで怒ってたっけ。
あれが……水沢君だったんだ。
「って事は女子は……」
「全員知らない」
「あちゃ〜そうだったのか……ま、しょうがないか。いい機会だからこの際覚えてよね。私は、八色美香って言うの。覚えた?」
「あ、あぁ……」
「女の子と知り合うなんて滅多にないんだぞ〜。ラッキーって思わなきゃ」
「はぁ……」
美香……水沢君困惑してるよ?
「それにしても……先生遅いわねぇ。もうとっくに授業始まってるのに〜」
それを聞いて時計を見てみれば、午後の授業が始まってもう十数分が経過していた。
もう、そんなに経ったの? チャイムなんて聞こえなかった。
でも、美香の言うとおり遅いね。先生。


その後、先生が不在で自習になったことを代わりに来た先生から聞いた。




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