ずっとそばに… (梗)




 そう、俺たちは出逢う前から恋をしてたんだ――――



 よく、判らなかった。

 ある日突然見るようになった一つの夢。

 あたしはある日、一人の男の人と出会う夢。

 最初はバカやってたりしてたんだけど、あたしの心の中に、確実に彼は居残ってた。

 誰だかわからない……あったこともないのに、あたしは夢の中の彼に一目ぼれした。

 あたしと同じ高校に通っていて、どういうわけかあたしと一緒の部活にまで入ってきた。

 彼はあたしの親友の幼馴染で、親友は彼のことを好きだった。

 ずっと一緒にいるのに、あたしが入り込めるはずがない。

 自分の想いに蓋をして、あたしはいつも通りの態度をとる。

 でも……彼への想いは募るばかり。

 そして、雨の日にあたしは彼と繋がりを求めてしまう…。

 こうすれば、親友への罪悪感でいっぱいになって彼を諦められると思ったから……

 でも、それは大きな間違いだった。

 諦められるどころか、更に想いは溢れてく。

 彼と一緒にいたい。繋がりを……求めたい。

 その想いは、彼のある一言であたしの口からあふれ出した。

 彼は、幼馴染を恋人として好きじゃないといった。

 だから……あたしは彼への想いを伝えた。

 ダメかと思った……でも、抱き寄せられ、引き寄せられたあたしは唇を塞がれて……

 彼も、あたしの事を好きだといってくれた。

 そう、あたし達はついに恋人へと――――


 夢の中の、毎日続く物語。

 夢の中にいて、現実にはいない彼、十崎 巧己という人物。

 分けが判らなかった。

 なんで、こんな夢を見るんだろう?

 なんで、毎日同じ夢が続きものとして流れていくんだろう。

 夢なのに……なんでこんなに胸が苦しいんだろう。


 そして、そんな夢が続いたある日のこと……


 街を歩いていたあたしは、とある人物とすれ違った。

 あれ……あの人、どこかで――――

 その瞬間、あたしは……。


 あれは、夢だった。

 夢だったはずなのに……

 彼への想い、彼のぬくもり、そして、彼と過ごしたすべての思い出が、あたしの心の中に溢れんばかりに咲き乱れた。

 そして、夢の最後に彼が残した言葉を思い出して――――




「納得いかねぇ……」

「ん? なにがよ」


 何か不満でも? と言いたげな梗の顔。

 放課後、いつもの部活での事だった。


「お前を“先輩”って呼ばなきゃいけないことだ。 つーか同い年だろうに」

「だぁってしょうがないでしょ。 ここじゃあんた三年も寝てたんだから。一年からやり直せるだけありがたいと思いなさい“後輩”クン」

「くっ……なんかすっげームカつく」

「おほほほほほ。先輩の言うことはちゃ〜んと守るのよ」

「クソッ……可愛かったのはアノ時とこの間だけか」

「もっぺん三年くらい眠ってみる?」

「……いえ、激しく遠慮しときます」

「そう、ざんね〜ん」

「……やっぱ、梗は梗か……」

「ン? なんか言った?」

「なんにも。“先輩”殿」

「…なんか、気になるわね。 ま、そんな事言ってないで、あんたはさっさと練習する! 今度こそ飛べるまでは容赦しないからね!」

「俺は病み上がりだっつの!」

「問答無用!」


 全てはその一言で一蹴された……


 日が傾いていって、いつしか辺りは暗くなる。

 賑やかだったグラウンドも、気が付けば残っているのは俺と梗の二人だけ……

 そして俺は…。



「ちょぉ〜っと、生きてる?」

「………………」

「死んだ?」

「…………ぅ〜っ」

「なんだ、生きてるじゃない。ほら、もう帰りましょ」

「…………だ」

「ん?」

「……お前、やっぱ鬼だ」

「えっ、なんでよ。あたしの何処が鬼なのよ」

「…退院してそう日も経ってないのに、体力も戻りきってないやつに人並みの……いや、いつも通りのメニューをこなせると……思ってんのか」


 息も絶え絶えに吐いた言葉。

 これには半分以上恨めしい思いも含まれてる。

 でも、梗はそんな事は気にも留めずに、


「あたしが指導してんだから、大丈夫よ」


 とあっさりのたまったのだった。


「でもま、辛そうだから動けるまでここで付き合ったげる」

「………………」


 そういってマットに座る梗。

 もちろん、俺が倒れてるすぐ隣に、だ。

 周りにはもちろん人気もないし、聞こえてくるのは虫の鳴く声だけ。

 こんな時間まで……よくもまぁ動けたこと。

 そんな自分がある意味恐ろしい…。


「でもさ、十崎」

「……ぁん?」

「……良かった。またアンタに逢えて。またアンタとこうして歩めて」

「梗?」

「ホントはね、あたし……怖かったんだ。あの神社の時、十崎が生き返ったとしても、あたしが本当に何も覚えてなかったらって」

「………………」

「だから、今こうして一緒にいられるのが……本当に、嬉しいんだ」

「あぁ、そうだな」

「あの時みたいに……十崎のいない世界じゃ、あたしもう生きていけないよ……」

「梗……」


 やっぱり、なんだかんだ言ってコイツは寂しかったんだな。

 そりゃそうだ。俺だって……梗に触れられなかったこと、話せなかったときのことは本当に苦しかった。

 目の前にいるのに気が付いてもらえなかったことが……本当に、悔しくて、悲しかった。

 俺は、梗の事が好きだから。

 それだけは、何があっても変えたくないから……。


「なぁ、梗」

「…なに?」

「その……もう部員は俺たちしか残ってないよなぁ」

「えっ…? そりゃあ、もうこれだけ暗くなったらねぇ」

「つまり、今の俺たちって、二人っきりって事だよな?」

「あっ……う、うん……そう、なるわね」

「……だから、つまりその……あれだ」

「………………」


 何かを待ち望んでるかのような梗の視線。

 暗くてもそれは俺にはハッキリと見える。

 俺が、いや……梗も望んでること……。


「更衣室、いかないか?」

「…………うん」


 俺のことをじっと見つめて、コクンと小さく頷いた。


「梗……」

「十崎……」



 上り始めた月の光に照らされて、俺と梗は久しぶりのキスをした――――



「十崎」

「うん?」

「あんた、元気あるじゃないの」

「それとこれとは、別ってやつだろ?」

「んもう、ホントにしょうがないなぁ……」





PCゲーム『ALMA-ずっとそばに…-』より

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