ずっとそばに… (香苗・カナエ)




「俺も、言わなきゃいけない事がある……でも、まずは――――」


「おかえり――」




 始まる…

 これからまた始まるんだ。

 俺と香苗の物語。

 夢の中で見続けた記憶、ともに歩んだ時間、触れていたこのぬくもり。

 昔の約束を、夢の中で育み続けてきたんだから。

 これからも、ずっとずっと、香苗のそばで共に歩み続けていくんだから。

 だから、もう離さない。

 ずっと……ずっと一緒に――――



 ピンポーン

「あ、はーいっ」


 ドタドタドタ……ガチャ


「あっ香苗さん、いらっしゃ〜い」

「こんにちは、由衣ちゃん」

「お兄ちゃんなら二階だよ。ささ、どうぞ上がっちゃってくださいな〜」

「うん。おじゃまします」


 トン、トン、トン、トン、トン…………ガチャ


「たくみく……まだ寝てる」


 ………………


「巧己君、起きてよ〜」


 ………………


「巧己君、巧己君ってば〜」


 ………………


「もう、しょうがないなぁ……」


 ごそごそごそ


「口を開けて、これを中に入れて」


 ぐいっ……


「御月印の目覚ましくん10号、設置完了。あとはこれをここに繋げて……と」


 ぷすっ。


「そして空気を入れていくだけっと」


 しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこっ。


 …………?

 …な、なんだろう。やけに口の中がぱんぱん……

 ってかむしろどんどんキツくなってくし?


 しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ……


「……そろそろかな? それじゃあ…これで、えいっ」

「……んあ?」

「あっ……?」


 ぷすっ


 刹那……


 パァァァンッ!!


「○☆△々◇#@●℃Σ”%〜ッ梶I?」


 部屋中に破裂音と共に声にならない叫びが大きく木霊した……。




「殺す気かッ!!」

「ご、ごめ〜ん」

「つーか口の中に風船なんか入れるか? 更にそれを針で割るなんてなぁ」

「だって、巧己君いくら話しかけても起きてくれなかったし」

「俺は眠いんだ」

「でも、あんまり遅くまで寝てるのは身体に悪いよ。せっかくこうやって目が覚めたんだから……」

「いや……それは、そうなんだけどなぁ」


 香苗の視線が俺の心に訴えかける。

 ううぅ……


「分ぁったよ。起きるよ」

「うん。それが一番だよ」

「三年も寝てたらしいからな。少しは起きとかないと」


 もっとも、今の俺に三年も寝てたなんて感覚無いけど。

 いろいろあったけど、俺からすれば一瞬の出来事だったし。

 だから目が覚めたときの由衣の喜びように実感がわかないのか。

 向こうにとって三年ぶりでも、俺にとっちゃつい数日ぶりだもんな。


「ねぇ、巧己君…」

「なんだ?」

「その……そばに行っても、いい?」

「えっ? そんな、言わなくたって俺は大歓迎だ」


 ふっと微笑むと、香苗は俺の隣に腰掛けた。

 俺は香苗の肩をそっと抱きしめると、向こうからも寄り添うように身体を預けてきた。

 肩口に香苗の頭が触れる。

 お互い何も言わないけれど、幸せなひと時が広がっていた。


「なぁ、香苗」

「うん?」

「なんだか、実感わかないよな。ついこの間までさ、俺たち普通に生活してたんだぜ? なのに、今では長年の眠りから覚めたことになってる。俺はあんまり変化無いけど、香苗は髪の毛短くなってるし」

「うん……そうだね。なんだか、私たちが過ごしてきた今までってなんだろうって思っちゃう。本来なら存在し得なかった、この間までの巧己君との記憶、私の記憶、そして……」

「カナエちゃんの記憶、か?」


 コクリ、と小さく頷く香苗。


「私、自分でも分からなかった。まさか事故にあってたなんて……自分が、物に触れる幽霊だったなんて」

「そりゃ、俺だってそうさ」

「私たち、幽霊になっても恋してたんだね」

「いや、幽霊とかそんなの以前にさ……あの木の下の約束をした頃から俺たちはずっと一緒にいようって、決めてただろ? だから、例え自分が何者だろうとも……俺は香苗のそばにいる。ずっとずっと、な」

「巧己君……」


 自然と二人の距離が縮まって、そして触れ合う二人の唇。

 その感触はあの時と何の変わりもなかった。

 香苗であり、そしてカナエちゃんでもあるんだから……。



 俺と香苗の物語は、また動き出したんだから―――





PCゲーム『ALMA-ずっとそばに…-』より

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