・夏は青空の色

ふと、空を見上げてみた。
思わず目を覆いたくなるくらい、蒼く輝く空。
まさに、快晴日和だ。
どこまでもそびえる入道雲。
一本の筋を残しながら高空を駆け抜ける航空機。
ずっと見ていれば吸い込まれていってしまいそうな空、空、空……

ぴとっ

「冷たっ!」

不意に感じた額の冷たさ。
上を見上げると、こっちを見ながらよっと片手をあげて笑ってるやつがいる。

「急にやったらびっくりするだろうが」
「気が付かないのが悪い。せっかく差し入れ持ってきてやったんだから、もっと喜びなさいって」
「あんがと」
「へぃへぃ、どーいたしまして」

まぁこんなもんか、とつぶやきながら隣に腰掛けた。
そのまま放り渡された缶ジュースを受け取って、ぐいっと一口。
冷たいのが喉を通り抜けてくのがまたたまらん。

「まったく、今日も暑いッたらありゃしない。朝シャワー浴びたのにもうこんなに」
「おまえ、朝シャンしてんの?」
「あのねぇ、汗臭いまま学校行けないでしょう。最低限の身だしなみでしょうが。そういうあんたは……って、してるわけないか」

はぁ、っとため息をつかれた。
ハナッから否定されるとなんかムカつく。……いや、事実なんだけどさ。

「どうせ俺はそう言うのは鈍いさ」
「だーから女の子にモテないんだよね〜」
「っさい。そういうお前こそ、自分の心配しなくていいのか?」
「あたし?」
「自分だって男いないくせに」
「あら、いるよ?」
「……マジッ!?」

まさか、先越されたのか?!

「弟」
「……はぁ?」
「彼氏はいないけど、弟ならいるって」
「〜〜〜〜〜ッ!!!!!」

……こいつは、そういうやつなんだ。

「あーあ、驚いて損した」
「してやったり?」
「返せ」
「え?」
「俺が驚いた分を」
「どうやって?」
「身体で」
「はぁ、バカ言ってんじゃないわよ。もっとまともな事言う頭だと思ったら……」
「あ〜、なんかどうでもよくなってきた」
「そうそう、まったりいきなさいって」

意味が分からん。
でも、たぶんお互い今日で学校終わったから浮かれてるんだろうな。
でないとこんな暑い所で寝転がりながら話なんかしないし。
明日から夏休みかぁ。どうすっかな。

「なぁ」
「ん?」
「明日からどうする?」
「う〜ん……、友達とどっか行くとか、家でのんびり過ごすとか、旅行に行くとか、かな」
「模範的な言い分だな」
「そんなもんでしょ。あんたはどうするの」
「俺は模範的じゃないぞ。ちゃんと決めてある!」
「へぇ〜、一体なにするわけ?」
「ダラダラ過ごす!!」
「………………」

はぁっ、とため息をつかれた。
見るからに呆れ顔。
模範的じゃないって言っただろ…?
内容が以前的な問題かもしれないけど。

「いつもと一緒じゃん」
「ヘタに変わるよりはいいだろ。どうせこの時期何処行ったって混んでるし。ダラダラ〜っとしてるのが一番一番」
「かぁーっ、ヘタレた夏休みを送ろうとしてるなぁ。溶けるぞ」
「どろどろ〜」

つー、と汗が額を通っていく。
差し入れの効果も薄れてきたか。
そろそろ帰るかな。

「じゃあ、さ」
「あん?」
「海でもいこっか」
「おまえと?」
「不満?」
「別にかまわないけど……いつ?」
「これから」
「こ、これからだと? そら幾らなんでも急すぎ」
「よく言うでしょ。思い立ったが吉日って。だ・か・ら、これからなの。OK?」
「マジすか…」
「うん。大マジ」
「金あるかなぁ」
「あんたのヘソクリが何処にあるか位なんてお見通しだから、無いってことはありえません」
「……な、何故お前が……」
「まっそういう訳だから、さっさと帰って行くよ」
「へ〜い。しょうがねぇなぁ。お前の水着姿で満足してやるよ」
「悩殺希望?」
「お前で悩殺されるほど俺は目がイカレてない」
「………………」

ガンッ!

「ってぇな」
「一言多いの! ったくもう……ほら、行くぞ!!」
「あーはいはい〜」

なんか、流れでこうなっちまったけど……
あいつも張り切ってるみたいだし、いっか。
俺だって嫌ってわけでもなし。
……うっし!

「さってと、それじゃあ今日はお前さんに付き合うとしよう。海に行くか〜」
「おぉ〜。……あ、ついでに言うと、“今日”じゃなくて“今日と明日”だから」
「は?」
「これから行くんだもん、遊べる時間なんて短いに決まってるでしょ?」
「いや、そら分かるが……海で野宿すんのか?」
「まさか。あたしん家の親戚が民宿やってるから、そこに泊めてもらおうと」
「泊まるんスか」
「せっかく遊ぶんだから、パァッとね!」
「元気いいな、お前」
「それが取り柄だもん」

ふふん、と胸張って偉そうにしてる。
無いくせに……と心の中で呟いてみる。

「ま、という訳だから、ね」
「うぃ〜」
「準備できたらあたしの家に来てね。バス停こっちの方が近いし」
「了解〜」
「なんか投げやりだなぁ。せっかく宿代がタダになるのに」
「あ〜も〜最高です〜」
「……まぁいいか。それじゃ時間ももったいないし、行こう」

俺より先に立ち上がってパンパンと制服のスカートについた草をはらってる。
一言言っとくけど、俺から丸見えだからな。スカートの中。
声に出してないのがせめてもの親切ってやつだ。
そしてなにより、俺の目の保養……でも少しだけ。

「ん、どしたの。起きないの」
「んや〜起きるさ。よいしょっと……ちょっとな」
「???」
「なんでもない。さ、レッツ海行くべ」

俺の夏休みは海から始まって〜最終的に何処に流れ着くのか。
それは今後次第ってかぁ。
俺のひと夏のアバンチュ〜ル〜

「なぁに声に出してんの? バーカ」
「……げ」



掲載日:2004/02/13
改装日:2006/10/24

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