・秋は紅葉の色

あっという間に夏休みが明けて、
ついこの間まで着てた半袖も着なくなり、いつしか葉っぱまでもが色を変える季節にまでなってた。
なんか、すげぇ一瞬だった気がする。
俺…何して生きてきたっけ?

「なぁなぁ」
「えっ?」
「夏休み明けてから今日まで俺何して生きてきたっけ?」

俺の隣を歩く人物に問いかけてみる。
赤の他人じゃないぞ?
ちゃんとした知り合いだ。

「…はぁ?」

何言ってんの?と言いたそうな目で返された。
無理もないか。いきなりンな事聞かれたら。

「ついにのーみそまでペースト状になっちゃったの?」
「そりゃひでぇな。少なくともまだ形を維持してるよ」
「ホントかなぁ」

信じろっつの。

「まぁ、いつもグータラ過ごしてれば何も覚えてないでしょうよ」
「俺はそんなにグータラ過ごしてた覚えはないぞ」
「……いつも遅刻寸前まで寝てる奴の言うセリフ?」
「秋だからな」
「秋とどういう関係があるの」
「睡眠の秋」

ため息を吐かれた。
別にいいだろ〜。

「人によって秋はそれぞれ違うんだから。よく言うだろ? 食欲とか読書とかって」
「勉強とか運動とか?」
「そうそう。その中にある一つが今俺が言った睡眠の秋なんだよ」
「寝ることなんていつだって出来るでしょうが」
「だったら食ったり運動したりってのもいつだってやれるじゃん」
「た、確かにそうだけど……」

どうやらうまく言い返せないみたいでこちらを見ながら唸ってる。
ふっふっふ。してやったり。

「でも、今が暑さも一段落して寝やすい季節になったからってのが一番の理由かな。秋はそれほど重要じゃない」
「あんたは寝ること意外に楽しみはないわけ?」
「さぁな……体を動かすのは好きだけど」
「こうやって色付いていく木を見て何とも思わない?」
「秋だなって」
「はぁ……もういい」

俺たちはいつもと変わらないような話をしながら歩いていく。
左右を見渡せば、確かに赤や黄色で衣装換えした木々が今が旬とばかりにその存在を主張してる。
ほんとに、もうすっかり秋なわけで……

「ふぁあ〜……ねむ」
「睡眠魔人」
「魔人で結構。あぁ〜、学校行く気がドンドン失せてきた。帰ろっかな」
「ちょっと、一体何を言い出すかと思えば。ここまで来て帰るって……」
「実はさ〜俺寝たのが三時ぐらいなんだよな。だから今日は一段と眠い」
「だからって、何も帰らなくてもいいでしょ。眠いなら学校で寝ればいいのに」
「むっ。お前からそんな言葉が出てくるとは。しかし学校で寝るのはいつもの事。たまには違う事もだなぁ……あ」
「ん? どしたの」

俺の視線の先にあるのは公園の原っぱ。
そうか、なるほど……

「わり、俺やっぱ学校行かない」
「え?」
「今日は寝て過ごす!」
「ちょ、ちょっと」

何がなんだか分からないと慌ててるのは放っておいて、俺は一人原っぱへと歩いてく。
適当に人があんまり来なそうな場所を選んでから、持ってた鞄を枕代わりに寝転んだ。
綺麗に草が刈ってあるもんだから刺さらなくて気持ちいいや…。

「まったく何をするかと思えば……こんな所で寝始めるとはね」

呆れ顔して話しかけてきた。
鞄でしっかりスカートをガードしてるから寝ててもその中を見ることは出来ない。残念。

「俺は秋を満喫しながら睡眠を楽しもうとしてるんだ」
「あらあら、そうですか」

そういうと自分も俺の隣に腰掛けた。
おい、なんでお前まで座ってるんだよ。
俺一人だけって事じゃないけど、学校は……

「ん〜、秋の公園ってポカポカして気持ちがいいなぁ」
「学校はどうするんだよ」
「あたしもサボっちゃおうかな」
「この悪め」
「いいじゃない〜。あたしだって秋を満喫したい時だってあるんだから」
「そんなもんかね」
「そうよ。それに……」

―――あんたがいないんじゃ、つまんないじゃない―――

さらりと風がふいていって、紅葉した葉のいくつかを飛ばしていく。
学校サボって昼寝して、たまにはこう言うのも悪くないんじゃない。
そんな事を思った日だった。

「あたしも寝転んじゃおうっと」
「風邪引くなよ」
「大丈夫。そん時は看病してもらうから」
「へいへい……」



掲載日:2003/12/13
改装日:2006/10/24

もどる