ほんとうのきもち 三
……これがあたしの、ほんとうのきもち―――――――
はじめと最初に出会ったのは、小学校一年生の二学期から。
転校生としてやってきたんだっけなぁ。
あの頃はまだ尚哉とも親しくなかったし。
今が信じられないくらいに、あたし達三人は全然共通点はなかった。
でもあの時のキッカケを境に…。
はじめが転校してきてしばらく経った時、突然彼があたしのところにやってきてこう言ったんだもん。
『俺のこと、好きなの?』
……はぁ?
ホント、あの時は何言ってるのこの子って思ったっけなぁ。
思わずはりせんで叩き倒しちゃったっけ。
そしたら後ろで尚哉が笑ってるし。
思えば当時はかなりの浮いてる人だった。
そんなに親しい友人もいなかったみたいだから、同じ状態のはじめに興味を持ったのかな?
まぁあたしも、はじめにそんな事言われる原因はあるんだけど…。
いつまでたっても他の人と接しようとしないで一人でいるからつい気になっちゃって。
それでついチラチラ見てたのを尚哉に見られたのねきっと。
それで尚哉がはじめをふっかけて……。
これが最初の出会い。
普通なら、それで終わってまたただのクラスメートに戻るんだけど……何か縁があったのね。
先生がさっき一緒にいたのを見かけたのか、友達のできない二人と仲良くしてやってくれって言うんだもの。
最初はなんであたしが男の子と……って嫌がってたっけ。
当然向こうも同じコト言ってくるかと思ったら、全然違ってた。
はじめは、うつむき加減に小さな声で『よろしく……』って言って、尚哉は相変わらずな感じで『よろしくな〜』って。
そしてその後は……流石は男の子同士って感じね。
はじめと尚哉はすぐに仲良くなって、今までの暗かったイメージとは全然違った姿のはじめと、
クラスでも浮いてる存在の尚哉は相変わらず他の人とはなかなか馴染まないけど、はじめと一緒にあたしにだけはよく話しかけに来た。
二人して馬鹿やらかすのをあたしが止めに入ったり強引に止めさせたりして……今思えば火消し役ね。
まさかはじめまで……って思ったけど、よくよく見てみると尚哉に巻き込まれてるだけだったり。
気がついたらあたしがまとめ役にやっていた。
最初はもうイヤだって思ってたのに、気がつけばそれに飽きれながらも楽しんでる自分がいた。
あの頃って、ちょっと男の子と女の子が一緒にいただけでとやかく言いたがる年頃なのに、二人はそんなのをモノともしなかった。
何か言われても涼しい顔。強引な人たちには尚哉が筆頭になってケンカまでしてた。
ホント……まさに気がついたらって感じね。
中学に上がってからも特には変わらなかったかな。
この頃から、たまにはじめがテニスの試合とかでいなくなりがちに。
まぁ別に二人でいたって何か変わることはなかったけど。
でもあれね……これもこの頃からだったかな……。
試合に出れば絶対優勝。
毎回体育館で表彰されるものだから、学校の中ではじめを知らない人はいないくらい。
当然、人気も出てくるわけで……。
下駄箱の中にラブレター、なんてのもざらにあった。
そしてあたしも……何故かそうなった。
尚哉が『さやかは見た目清楚だから男子中から人気ありまくるぜ〜』って言ってけど、自分ではよく分からない。
思わず、見た目だけで悪かったわね…! ってはりせんで叩いちゃったけど。
そんな中で、あたしとはじめは来るもの来るもの全部断ってた。
あたしは特に興味なかったし、はじめも『知らない人から言われても、ねぇ?』って苦笑。
中には強引に迫ってくる人もいたけど……そこはそれ、はじめと尚哉がいたからね。
一回だけ屋上で襲われそうになったときも、二人が助けてくれた。
ちょっとやりすぎちゃって後がすっごく大変だったけど……。
普段は面白おかしく過ごしてても、いざって時はすっごく頼りになる人たち。
そう実感できた中学時代。
この頃までは、まだ恋とかそう言うのが気にならなかった。
もしかしたら気になってたのかもしれないけど、自覚がなかっただけかもしれない。
そして、それは高校生になってやってくる。
二年目にやってきた、はじめがここに来る前の幼馴染。ひかり。
彼女はとても直接的なアプローチをしていた。
抱きついたり、キスしたりして。
最初は大胆な事するなぁ……と思っていたあたしも、いつしかそれがイヤに思えてきた。
ひかりとはじめが一緒にいることが、自分にとってとても悲しい事に思えてきた。
そして、その事を考えると涙が止まらなくなって……。
夏休みになって、みんなで旅館に泊まりに行った日に、ひかりに言ったんだっけ。
あたしは、はじめの事が好きだ、って……。
小学校の頃からずっと一緒にいたはじめ。
楽しいことも、悲しいことも、怒るようなこともあったけど、一緒に過ごしてきた。
そんなはじめが他の女の子と一緒にいるなんて、イヤ。
ひかりにはじめを取られちゃうのは、イヤ。
あたしだけを見て欲しいって、そう……思って……。
……あれ……?
今ここで言った事って……。
あたし……あたしは……。
はじめのこと――――――
「………………」
意識が戻ってくる。
そっと身体を起こして、外に目を向ければ、相変わらずの曇り空。
でもどんよりするほどの暗さじゃなくて、所々に晴れ間の見える明るめの空だった。
雨雲は……通り過ぎたみたい。
それと同じように、あたしも心の中が洗われたような感じになっていた。
眠る前まであった、ぐちゃぐちゃになったいろんな想いがなくなっていた。
心が、軽くなった感じ。
今のあたしは、まるで全部を知ったように……
ううん。知ったんじゃないよね。
知ったんじゃない。気がついたんじゃない。
あたしの自分の願い、心からの思いに素直になっただけ。
他の誰かじゃなくて、自分の素直な想い。
あたしって、こういう事に不器用なのかもしれない。
だから、自分のことなのにこんなになっちゃうのかも。
同じ人を好きになった相手のこととか、考えちゃうのかも。
はじめ……あたしこんなんでゴメンね。
あの時あんな事言っちゃったけど、本当はあたしは……。
トン、トン、トン……
何日ぶりだろう。
あたしはあたしの意思で、ベットから降りて部屋を出て、居間へと続く階段を下りていった。
ガチャッ
「……あら、さやか」
「ただいま、お母さん――――――」
〜 3.ほんとうのきもち 〜
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