ほんとうのきもち 一

そして、歯車は最後の悲鳴を上げようとしていた――――――


あたしにとって、友情ってなんだろう。
あたしにとって、恋愛ってなんだろう。
友情……とても大切なもの。
はじめ、尚哉、そしてひかり。
誰一人として失いたくはない。

恋愛……叶えばとても嬉しいもの。
好きだけど……好きだけど、そうなってはいけない人、はじめ。
そして同じく、あたしと同じ人を好きになった人、ひかり。
あの時、あたしは自分から身を引いた。
それに異存はなかった。
後悔しないって思ってた。
だけど……蓋を開けてみたらあたしは壊れていた。
ひかりとはじめが仲良くなった事に、酷く悲しみを覚えた。
胸が苦しい。
もう何も、考えたくない……。

「あら、さやか起きてたの?」
「……お母さん」

ドアの方を見ると、お母さんがいた。

「少しは良くなった?」
「……わからない」
「分からない、か……。ねぇ、さやかは何をしたいの?」
「え?」
「さやかが何を考えているかは分からない。けれどね、詰め込みすぎて考えると堂々巡り起こしちゃって考えがまとまらなくなっちゃう事ってあるのよ」

そういうとお母さんがあたしの肩に手を添えてそっとベットに寝かせた。

「深く考え込んじゃだめ。騙されたと思って、今は何も考えずに頭の中を真っ白にして少し眠りなさい。そうして、起きた時真っ先に自分が思ったこと、それがあなたの答えよ」
「…ほんとうに?」
「うん、本当。お母さんだってさやか位の時に似たような事あったもの。そして、今言った事をやって乗り越えた。だから大丈夫よ」
「うん……」
「大丈夫……きっと上手くいくわ。なんて言ったって、あなたは私の娘だから」
「なんか、説得力があるようなないようなって感じ…」
「とにかく、30分でも1時間でも、ゆっくり休みなさい。何かするのは後で十分。それじゃ、おやすみ」
「……おやすみなさい……ありがと」

お母さんは何も言わずに、ただニッコリと微笑んで部屋を後にした。
本当に、上手くいくんだろうか…?
それに、あたしが真っ先に思うことって一体…。
――あ、何も考えちゃだめだ。
言われたとおり、頭の中を空っぽにして、心を落ち着かせて……ゆっくりと。
深呼吸して、今度こそ本当に……


「………………」

誰もいない机。
今日もそのまま流れていった。
もうすぐ、二週間が経とうとしてる。
でもそれでも……さやかは来なかった。

「はじめっ帰ろう」
「………………」
「? はじめっ帰ろうよぅ」
「……えぁっと、そっそうだな。帰るか」
「変な声が出たよ」
「いやちょっと、考え事してたところに声が掛かったもんだからね。驚いただけ」
「そうなの? まぁいいや。雨降ってるから酷くならないうちに帰ろうね」
「そうだな〜」

教室を去り際に、もう一度さやかの机を見てしまう。
……いったい、どうなってるんだろう。

「はじめ〜行こう」
「おおぅ」

……さやか……。

十二月も中頃になると、雨が降るだけで寒さが倍くらいに感じるな。
雪でも降るんじゃないかって位に。
傘持つ手が冷たくてしょうがない。

「最近雨多いね〜」
「だな。こう寒いのにイヤになっちまう」
「何処かに寄って行くのもイヤになっちゃうよね」
「どうせまた寒くなるから、だな」
「うん」

どっかで暖まったところで、外に出ればすぐに冷える。
これなら家にてのんびりした方がよっぽどいい。

「じゃあ今日ははじめの家に行こうっと」
「ん、そうか。そういや最近は誰も来なくなったから久しぶりだ」
「そうだね。お隣だけど久しぶりだよ〜」
「最近買ったお…………こ、ココアでもご馳走するかね」
「やった♪」

お茶、と言いかけて慌ててココアといってしまった。
その瞬間、さやかの事が頭に浮かんだから…。
ひかりは気づかなかったみたいで、今はココアの事で頭がいっぱいみたいだ。
そして俺の家へ。
ひかりの部屋は隣だから一旦帰る必要も何もない。
そのままだ。

「おじゃましま〜すっ」
「おじゃまします〜」
「じ、自分の家なのに…」
「気にしない気にしない」

早速牛乳を入れたポットに火を掛けて、ココアの準備。
寒いのに冷たいココアは飲まないしな。
棚から自分のカップとひかり愛用のカップを取り出して、粉を入れたら後は熱い牛乳を注ぐだけ〜。
あっと言う間に完成だ。

「はい、ひかりの分」
「ありがとぉ〜♪」

珍しくベットの淵に腰掛けてたひかりに渡して、自分も隣に座る。
冷えた体に広がってく暖かいココア。
寒い日にはこういうのが一番だ。
ひと時の幸せを感じるのは……歳か?

「は〜……暖まる」
「うん。美味しいね」

部屋の中に、ココアをすする音が響いていた。

「ねぇ、はじめ〜」

丁度ココアを飲み終えた頃、ひかりが少し小さめな声音で話しかけてきた。

「うん?」
「キスしてって言ったら……してくれる?」
「……えぇっ?」
「してくれないの…?」
「いっいや! そうじゃなくて……そんな、急に言われると……」
「じゃあ……して?」

空になったカップをすぐ前にある低い方のテーブルに載せ、ぐっとひかりが寄ってきた。
すぐ目の前に、ひかりが……

「ひ、ひかり……」
「……はじめがしてくれないんだったら、私から……しちゃうもん」

どさ…
ひかりに押し倒されるようにベットに倒れこんだ。
そのまま唇が重ね合わさる…。

「ん……ちゅ……」

ふいに、俺の右手にひかりの左手が触れた。
きゅっと握られた右手は、ひかりに操られるまま移動し何処かへと触れた。
ひかりは俺の右手ごと強めに押さえつけている。
これはなんだ……と、なる前に、答えは手から伝わってきた。
そう、ひかりが触れさせていた所は―――――




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