心に降る雨…… 一

「あなたの事、好きです。ずっとずっと昔から……」

耳に入るこの言葉。
あの子は、ひかりはついに自分の想いを伝えることが出来た。
その後はドアを閉めちゃったから何も聞こえなかったけど、閉める瞬間にひかりがはじめに抱きついたところを見ると、きっと上手くいったんだ。
これで……あたしの役目は終わったなぁ。
もう、家に帰ろう。
今日は何もしないでただベットに倒れこみたい。


ガチャ

「ただいま……」

家に帰ってきて、お母さんとあすかに声を掛けてから二階の自分の部屋へ。
いつもはきちんと畳んでおく制服も、今日は着替えることなくあたしと一緒にベットに倒れこんだ。
しわになっちゃうかも……。まぁ、いいか。
そう言えば、一人で帰ってきたのって本当に久しぶりかも。
今までずっと、四人で帰ってたものね。
………………
はぁ、四人かぁ。
これからはもうムリかな。
だって、はじめとひかりが……
これで、良かったんだよね。
はじめもひかりも、一度引き離されてしまった者同士。
その間に仲良くなったあたしが割り込むのは……ちょっとずるい。
ひかりだって、もし離れていなかったらはじめにもっと早く伝えていたんだろう。
もし、二人が一緒に引っ越してきてたら、きっと……
もし、ひかりがもっと早くきていたら、きっと……
もし……もし……

止めよう。
仮定で話してても何も変わらない。
いや、もう変わってしまったんだ。
何にせよ、はじめとひかりは再び一緒になれた。
あたしが望んだ事がちゃんと形になった。
いいじゃないか。それでいいじゃないか。
何も文句を言う事はない。
おめでとう、ひかり…。
おめでとう、はじめ…。


……ゆらり

「……えっ?」

急に目の前が揺らいだ。
目をこすって、それがとれたと思ったんだけど……

「あ、あれれ……おかしいなぁ」

こすってもこすっても、すぐに視界が揺らいでしまう。
それと同時に、胸がギュッて締め付けられるような痛みが。
こすった手に残る水気。
これって、涙?
どうしてあたし、泣いてるの…?
嬉しいはずなのに。
喜んであげなきゃいけないのに。
涙が後から後から留まることなくあふれ出てくる。必死に涙をこらえようとしてるのに止まらない。

「どうして……」

気がつけば自分の思っている事が言葉に出ていた。
もう、押さえ込めない……!

「どうして……こんなに胸が切ないんだろう……ぐすっ……どうして…どうしてこんなに苦しいの…? 嫌だよ………すん………そんなの嫌だよぉ。……苦しいよ……せつないよぉ………はじめ…………ぅ……」

無意識のうちにあたしははじめという名を口にしていた。
自分から身を引いたはずなのに。
引いたはずなのに、本当は引ききれてないじゃないか。
わかっていたはずなんだけど、後悔しないって決めたはずなんだけど……
どうして…今になって涙が溢れてくるの…?
あいたい……
はじめに、会いたい。
会って、自分が本当に言いたかった事、伝えたい……
でも……もう遅い。
もう、遅いんだよ……何もかも。


こんこん
『お姉ちゃん、お夕飯だよ…?』

あれからどれくらい時間が経ったんだろう。
ドアをノックする音に気がついて時計を見ると、一時間くらい経っていた。
お夕飯、もうそんな時間なんだ。
でも、今は食べる気にならない。

「……き、今日は、いい」
『いいって、ご飯食べないの?』
「ちょっと気分悪くて……」
『え、お姉ちゃん……? 声、何か変じゃない?』
「ううん。なんでもないわ。ちょっと今まで寝てたから」
『そうなの? でも、具合悪いならお母さん呼んでこようか?』
「いいから、大丈夫。あすかは心配しないでいいから……ね」
『う、うん……じゃあ、わたし行くよ?』
「うん……」

階段を下りる音がして、やがて聞こえなくなった。
今は本当に食欲がない。
誰とも会いたくない。
一人で……いたい。




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