彼女の想い 二
もし……
もし、あたしとはじめが付き合うようになっちゃったら……
ひかりは、どうなっちゃうんだろう――――
十二月の最初の週が終わった。
お休みの日はほとんどはじめの家に遊びに行ってるけど、最近みんな行かないなぁ。
そう言うあたしも今日は家にいる。
別に……雨が降ってる所為じゃないわよ。
ちょっと考え事がしたいだけ。
はあ……ここの所ある一つの思いが胸の中を支配してる。
――千堂 ひかりの存在――
彼女は今年の春に引っ越してきた子で、あたし達の親友そして……同じ人を好きになった相手。
明るいというか、子供っぽいというか。とにかく元気な子だ。
はじめが言うには、昔となんら変わってないそうで。
あたしは知らない。
はじめとひかりが昔住んでいた時の事、一緒に遊んでいただろう事。
夏のあの日、ひかりは言った。
はじめの事が好きと言うことを変えたくはない。私は、はじめが好き。
物凄く、真剣なまなざしをしてた。
あぁ、彼女はこんなにもはじめの事を想ってるんだなって。
あたしが負けちゃってるって思うくらい。
正直かなわないと思った。
あたしがはじめへの想いを悟ったのはつい最近。
ううん。本当は前からあったのかもしれないけど……
その何倍も、何十倍も前からはじめの事を好いていたひかり。
一途感、敵わないよ。
もしあたしがはじめと付き合っちゃったら、ひかりはどうなるの?
ずっと昔から、悪く言えば一人の幼馴染のためにそこまで想い続ける彼女は、どうなっちゃうの?
恋が……終わっちゃうの?
嫌だ。
あたしがそんな状況だったら、それは嫌だ。
だって、終わっちゃうって事はそれまで全てが終了を向かえちゃうって事……
ある意味人生を掛けて想ってきたのに、終わっちゃったらどうしよう。
今までが、否定されちゃうよ……。
あたしはライバルかもしれないけど、親友でもあるひかりにそんな思いはさせたくない。
だって彼女、ようやく逢えたのよ?
はじめが引っ越してきたのが小学校一年生の二学期から。
今が高校二年生の冬だから……十年ちょっと。
そんな永遠ともとれる時間の末にようやく逢う事が出来たのに……
ザアァァァァァァァ……
朝から降り続いてる雨が止むことなく、逆に勢いを増している。
この時期にこの大雨は珍しいかも。
何だか、あたしの心の中とそっくりね……
窓に手を当てながら考えてたあたしは、傍らにあるベットに腰掛けるとそのまま倒れこんだ。
うっすらと暗い天井に、役目を果たしてない室内灯。
ここから見えるのはたったそれだけ。
でも……その方が嬉しかった。
まわりにいろんな物があると、ごちゃごちゃして考えにくい。
特に、こう言う事は……
ひかりが失った十年間の間、あたしははじめと一緒にいた。
あたしにあって、ひかりにないもの。
ひかりにあって、あたしにないもの。
それは十年より前の時間と、十年の間の時間。
この差は、果てしなく大きい。
その全部をはじめに向けてきたひかりに、最近分かった自分が何食わぬ顔をしてライバルと決め付けてる。
ひかりの恋が終わってしまった場合、今までの時間が無に消える。
でも、あたしが何も言わずに、ひかりがはじめに想いを伝えたら…?
あたしははじめと幼馴染のままで、ひかりははじめの恋人へ。
幼馴染と恋人は、違うかもしれないけど誰も傷つかない。
あたしの恋が終わっちゃうかもしれないけど、はじめと一緒にいられるなら……それでもいいじゃないか。
もう家に行って遊んだり、話したり出来なくなっちゃう事もない。
今までどおり、やっていけるじゃないか。
悪くない。
うん。まったく悪くないよ。
ひかりが失った十年間の間、あたしははじめと一緒にいた。
なら、今度はひかりの番。
あたしは……十分だから。
幼馴染で、十分だから。
だから、ひかりにはその分幸せになって欲しい。
それが、ライバルであり親友の、あたしの想い。
だけど……
そう考えてるのに胸のどこかが痛むのはどうしてだろう……?
あたしは…あたしは……
はじめの事――――
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