『尚哉さんは…明日、帰っちゃうんですよね?』 書いたスケッチブックを見せる沙夜の淋しげな瞳が、俺の脳裏に焼きついて離れなかった…。 「Marine☆Dream」番外編 最終話 「ただいまー。」 公園から、行くとき通った道を探して、戻ってくるまでに1時間もかかってしまった。 部屋に電気はついていない。 「あれ…沙夜〜?」 玄関のドアと、キッチンと部屋を繋ぐドアを開ける。 暗くてよく分からないので、電気をつけようとする…が。 ―ぎゅっ 何かに抱きつかれる。 「さ、沙夜…?」 沙夜がどうしたいのかが、今ははっきりと分かる気がする。 「…。」 手を沙夜の後ろに回して、自分のほうに引き寄せるようにして抱きしめる。 沙夜が気の済むまで、そうしてあげる事にした。 それから、どのくらいの時間が過ぎただろうか。 沙夜が俺から離れて、部屋の電気をつけた。 『もう、会えないかと思った…。』 抱きついていたときずっとそうだったのか、沙夜の目には涙が溜まり、頬へと流れている。 「平気だよ…現に今、ここにいるじゃないか。」 『違うよ…私のところに来ないで、明日帰っちゃうのかと思って…。』 「そんなこと、出来るはずが無いだろ? 俺沙夜にすげえ世話になってる、の…に。」 ――うっ…。 さっき殴られたところが急に痛み出して、意識が飛ぶ。 ―バダンッ!! 床にそのまま倒れる。 沙夜は驚いて、俺をゆする。 「ちっと頑張りすぎたかなぁ、なんて…なに、死にゃしねえよ。疲れただけだから…。」 ただ、眠い。 そのまま泥のように眠りについた…。 ―ほんとに寝ちゃった…。 突然倒れるからどうなるかと思ったけど…平気みたい。 伝えようと思ったんだけどなぁ… ま、しょうがないか…。 あ、そうだ。 今のうちに書いておこうかな。 私は、自分の伝えたかった事をいろいろと書いて、尚哉さんの鞄に入れる。 ―気付いてくれればいいけど。 それにしても…ほんと可愛いなぁ。 どうせ、寝てるときにしか出来ないか…。 ごめんね、尚哉さんっ♪ すでに熟睡モードに入っている尚哉さんを見つめる。 そして……。 ――ちゅっ。 数秒間だけ、唇を重ねた―――― 「それで、空港まできてくれた沙夜と別れて、帰ってきたってわけよ。」 皆が来たのは9時か10時だった気がするが、すでにお昼を越えていた。 (ずっと喋りっぱなしで疲れた…) もちろん、大体の流れを話した後で茜やさやかに文句を言われ、詳しく話したからこんなに長くなったのだが。 「よーするに…沙夜さんは尚哉の彼女だってことでしょ?」 「どうしても、そういう結論になるよね〜♪」 「だから、俺はそういうつもりじゃないって言ってるだろ!!」 そして、まだ誤解されている…どころか、確信を持たれてしまっている俺。 説明しないほうがよかったか…? 「ねぇ、尚哉は沙夜さんのこと好きじゃなかったの?」 「絶対沙夜さん尚哉のこと好きだったんだよ〜!!」 「だから…。」 「うーん…やっぱり遠距離かぁ。」 (もういいや…。) 俺を除く6人で沙夜と俺の関係を話し合っているので、俺は居間を抜けて自分の部屋にやってきた。 「手紙、やっと読める…。」 ベッドに横たわって、手紙の封を開ける。 沙夜の綺麗な字は、いまだ健在だ。 この手紙が呼んだ穂刈家の混乱は、あやふやなまま幕を閉じる事となった。 この後、沙夜が穂刈家までやってくるのだが、それはまた、別のお話である―――― 終わりっ あとがき