夏休みの半分が過ぎ去ろうとしているときに、それは前触れも無く穂刈家に届いたのだった。

「た、た、大変だぁぁぁぁ!!!!!」

なにやら、下の階が騒がしい。
あの声は…真か。

「姉ちゃん! 姉ちゃんってば! これを見てくれーっ!!!」

「何よ朝っぱらから…え!? ちょっとどういうこと!?」

俺は居間に入ると、何かを見て騒いでいる3人の視線が一気にこちらに向く。

「どうかしたのか?」

「…この人は尚哉の彼女?」

そういって茜が渡してきたのは、一通の手紙。

「手紙…か。 誰からだ?」

俺は、封筒の裏に書いてある名前を見た。

「おおっ! 沙夜からじゃないか。久しぶりだなー。」

「すでに名前で呼び合う仲らしいわ…。」

「何処までいってるのかしら…。」

「あの兄ちゃんに彼女が…。」

―ひそひそひそ…

なにやら隅のほうに3人で固まって話している。

―ちらっ…ひそひそひそ…

「だぁぁ!! お前ら何か勘違いしてるだろ!!」

俺のほうをちらりと見ては話す、ということを繰り返す3人に、おもわず叫ぶ。

「勘違いも何も、そうなんでしょ?」

「鉄道マニアのくせに、いつの間にそんな…。」

「手紙って事は遠距離じゃないかな?」

すでにこの手紙の人物を彼女だと決め付けてしまっている。

(そういえば誰にも話さなかったからな…このことは。)

「マニアは関係ないだろっ! ていうか違うし!」

―ぴんぽーん♪

「くそっ、こんなときに!!」

手紙の中を確かめられぬまま、玄関のドアをあける。

「新聞なら間に合って…ま…。」

目の前にいるのは、いつものメンバー。
どうしてこう、タイミング良く訪問してくれるんだろうか。

「尚哉にしては珍しく慌ててるな。何かあったのか。」

横一が不思議そうに聞いてくる。

(とりあえずこの状況をなんとか回避しないと…誤解はこれ以上増やしたくない。)

「ぁ、いや、なんでもないんだ。」

俺の心とは裏腹に、冷静な声など出るはずも無く。

「…なにやらいつにも増して騒がしかったけど、どうしたの?」

「だから、なんでもないって。はははっ…。」

「笑いが乾いてるよ?」

ひかりに、止めを刺すような突っ込みをいれられる。

(まずい…ここで手紙の事を知られたら厄介な事になる…!)

「ねえ尚哉…このあなた宛の手紙は誰から?」

(うわあああ!!! しまった! 手に持ってたんだ! しかも見られてるし!)

「中山沙夜…女の人!?」

(手の中にあったはずの手紙を取られてる…秋津さやかおそるべし…。って、そんな事思ってる暇はないんだ!!)

「尚哉に女の人からってことは…彼女!?」

時既に遅し。
なんでみんなそうやって誤解をするのだろうか。

(大声で叫びやがって…近隣の方々にも誤解されたらどうするつもりだ!)

「分かった! 分かったからとりあえず家に上がれ! な!」

何の前触れも無く送られてきたこの手紙による誤解を解くために、
俺は居間にいる妹たちも含めて、あのときのことを話す事にした。

…誤解を解くには、それしか方法が無いのだから。













居間には、俺も合わせて7人が座っている。
俺の妹弟らと、いつもの3人。

「で、中山さんって誰なの〜?」

落ち着くまもなく、茜が聞いてくる。

「だからそれを説明するから居間に集まってもらったんだろうが!!」

「早く早く〜♪」

(ちきしょう、他人事だと思って…他人事だけどさ。)

内心苛立つも、表に出すのを抑える。
もう1年前のことなのに、いまだ鮮明に思い出せるあの出来事を俺は話し始めた。











序章   完




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