〜26、文化祭催し物計画〜
「―――次は今年の文化祭についてだ。去年も経験してるから分かると思うが……」
ただ今LHR(ロングホームルーム)中……
はじめ達のクラスの担任である佐藤先生が、もうすぐ催される文化祭について話している。
この学校の文化祭は九月の末に行なわれるので、期間中となる月はその準備期間となり授業は大幅にカットされる。
それだけ文化祭と言うイベントに力を入れているのだ。
現に宣伝広告などは校内のみならず町全体にまで及んでいるほど。
そのイベントに我がクラスは何を出そう? と言うのが今日のLHRの内容だった。
「クラスの出し物について何か希望があればドンドン言ってくれ。黒板に書き込むからな。あ〜書記、黒板にて待機」
「わかりました」
「それじゃ、何かあれば言っていってくれよ」
生徒達が手を上げ希望を言っていく。
それを書記が次々に黒板へと書いていった。
流石にクラス全体で四十名いればいろいろな意見が出てくる。
定番でもある喫茶店やお化け屋敷、駄菓子屋やおもちゃ売り場などどいった意見も出てきた。
一部の男子生徒が冗談半分で言ったコスプレ喫茶と言うのも書かれている。
さてさて、はじめ達はというと……
「あれ、はじめは何か言わないの?」
手を上げずにただ黒板を見ているはじめにさやかが尋ねた。
「んにゃ、もう俺と同じ意見が出てる」
「何言おうとしたの?」
「喫茶店」
「あら、一番最初に出てる。それじゃ手をあげても意味はないわね」
苦笑するさやか。
ちなみに彼女が出した意見は『御茶屋』である。
さやからしいと言えばさやからしい意見か。
「まぁな」
「尚哉とひかりはどうするの?」
「俺か? 別に何でもいいや……特に意見はない」
「ねぇさやか、ここの文化祭ってどんな感じなの?」
今年来たばかりのひかりは、まだ内容を把握してないらしく頭に?マークをいくつも浮かべていた。
「周りの学校が一緒かは分からないけど、多分同じだと思うわよ。ひかりの通ってた学校は文化祭って何日間だった?」
「ニ日だよ」
「それはここと同じね。でも、準備をするために九月いっぱいを使うのはちょっと例外かもしれないわね」
「え、どういう事?」
「つまり、その間はほとんど授業がないってコト」
「そうなの!? 凄いね〜」
ひかりがビックリするのも無理はないだろう。
たかが文化祭と思うかもしれないが、この学校は校内のみならず地域とも交流を深める、と言うのがモットーであり伝統であった。
それでより本格的に開催しようと言う事で授業がカットされているのだ。
こんな学校は日本中探してもごろごろ出てくるものではない。
「それに期間中は放課後遅くまで残っていてもいいし。泊まって行くことは出来ないけど……まぁ、先生方が帰る時間帯くらいまではやらせてくれるわよ」
「へぇ〜」
「去年は凄かったよな〜。あれ何時くらいまで残ってたっけ?」
何か思い出したようにはじめが言った。
「う〜んと、確か九時くらいまでいたような……あれ、もっとだったかなぁ」
「そ、そんなに残ってたの?」
「あぁ。しかもクラス全員で、だ。もっとも途中で抜け出した奴もいたけどなぁ〜」
「そうね、いたわよね〜。誰だったかなぁ?」
はじめとさやかが、じろ〜っと見つめる先には尚哉の姿が。
しかし当の本人はしらばっくれ体制に入っている。
「だ、誰だったかな……。覚えてないな〜」
「確か、リバイバル運転がどうとか……って言ってたわよねぇ?」
「さ、さぁ?」
詰め寄るさやかに、冷や汗をかき始める尚哉。
「は、はは……は。あっほれ見ろ。出し物が何か決まったみたいだぞ」
「そんな事言ってまた誤魔化そうとしてるでしょ?」
「違うって。ちゃんと見てみろよ」
黒板を指差す尚哉に、しょうがないわね〜と言いながらさやかが前を向いた。
するとそこには、なるほどちゃんと一つの案に赤く丸が記されていた。
その出し物と言うのが―――
「喫茶店……みたいね」
ちょっと残念そうなのは、自分が提案した御茶屋が入らなかったからだろう。
「決まったね〜」
「ほぉ〜れ。俺の言ったとおりだったろ?」
「別に自慢できる事じゃないだろうが」
四者四様の意見を口にしている。
その間にも話は進行しており、教壇に立った委員長がいろいろと話していた。
今年のはじめ達のクラスがやるものは『喫茶店』となった。
簡単そうに見えて実は難しいと言うシロモノ。
定番だけあって何処にでもあるような物だとあっさりと客足が途絶えてしまうだろう。
はたしてどんな工夫が凝らされるのか?
「え……女子の衣装?」
黒板に書かれた文字を見て、唖然とする四人。
確かにちゃんとそう書かれていた。
「え〜圧倒的な男子からの意見により、これから女子の衣装に関する意見を話し合いたいと思います」
委員長のこの一言に、教室中がどっと騒がしくなる。
男子達は万歳三唱するくらい喜んでいて、矛先となった女子達はうそでしょ〜!?などと言っている。
「ちょっと待ってよ。男子には衣装が無いなんてズルイんじゃない? ちゃんと男子の衣装も作るべきだと思いま〜す」
一人の女子生徒からの意見により、そうだそうだ!と彼女に他の女子が援護射撃を始める。
それを聞いて、先生や委員長がどうします?と話し合っていた。
「……なんか、盛り上がってるなぁ」
話題から取り残されているような気がしたはじめがポツリと呟いた。
「まったく、何なのよあの意見は。下心丸見えじゃない」
「別に制服のままでもいいんじゃないか? そこまでこだわらなくても」
腕を組むさやかと、提案された意見に否定的なはじめ。
ひかりの方は、はぇ〜っとした感じで黒板を見つめていた。
そこに、ふふふふ…と尚哉が小さく笑い始めた。
「みんな甘いな。もはや学園祭や文化祭で定番化しつつある喫茶店が何の工夫もなしに人がくると思うか?」
まるでどこかのゲームのキャラクターを彷彿させるかのようなセリフを吐く尚哉。
はじめとさやかとひかりが今度は何?とばかりに彼のほうを向いた。
「お客を向かえる際に大事なのはまず第一印象! そして雰囲気。これがなってないと客足が引いてしまう。そしてなにより“制服”だ。
男子の場合は多少シンプルでも問題はないが、女子の方はそうはいかない。やはり華だからな。それなりに衣装を整えないといけない」
随分と長く話した尚哉。
そのあまりにも熱心な口調に思うわずキャラが違うよ……と引いてしまう三人。
「―――かと言ってあまりに派手すぎるのもかえって逆効果なんだけどな。その辺はちゃんとあいつらも理解してるだろ」
「お前何だかんだいってちゃんと考えてるんだな。少し見直した」
「すご〜いっ。なんだか納得しちゃったよ」
「尚哉にしては珍しくまともな意見ね」
「珍しくまともは余計だ!」
「だったら尚哉、その意見を言ったらどうだ?」
「もとよりそのつもりだ」
そう言って手を上げ、意見を言い始める。
珍しく尚哉が積極的に動いていた。
いつもなら“流されるがまま〜”の姿勢をとっていたのだが、今年は違うみたいだ。
そんな彼の意見に皆納得したみたいで、その後は穏やかに決まっていった。
「それじゃ、今年の我がニ年ニ組のやる出し物は『喫茶店』で決まった。決まったからには気を抜かずにしっかりとやって欲しい。
しかも今年は穂刈の意見などで制服とかにもこだわる予定だから結構本格的だぞ? 予算のほうは俺が何とか立ち会ってみる。
まぁたぶん大丈夫だろう。よしっそれじゃあ次は実行委員を決めたいんだが……」
かくしてニ学期最大のイベント『文化祭』が動き始めた。
本番まであと一ヶ月ほど……
その間に一体何が起こるのだろうか?
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