〜12、ひかりちゃんとで〜と♪〜


俺は今駅前の広場にいる。
なぜかと言うと、ひかりと待ち合わせをしているからだ。
今日はひかりと二人で出かける日。
この日の事をさやかも尚哉も知らない。
完全に二人だけで、だ。
一応、部屋が隣なんだからわざわざ駅前で待ち合わせることないんじゃ……と言ったけど、こういうのは“ムード”と言うものが大切らしくて、しかもひかりの強い希望なのでこうして駅前で待ち合わせているわけだ。

「そろそろかな?」

そう思ったとき、急に視界が暗くなり、同時に背中に何か柔らかいものが押し付けられる。

「だ〜れだ?」
「……ひかり」
「あらら、バレちゃった」

あっさりひかりだと見破る。
いや、何度も学校とかで同じ事やってればさすがに分かるって。

「ま、いいや。そ・れ・よ・り・この服どうかな。似合ってる?」
「あ、あぁ……いいんじゃないか」
「そお? よかったぁ」

クルリと回ってうれしそうに喜ぶひかり。
やっぱり女の子って着てくる洋服とかにも気を使うんだろうか。
俺はいつも着てるようなやつを選んできたけど。

「それじゃ行くか。で、何処に行きたいんだ?」
「えっとね。海岸の方に行きたいなって思ってるの。そこに新しい展望台が出来たんだよ」
「よし、ならそこに行くか」
「うん…」

返事をするが、少しだけ元気がないような気がする。

「どうした?」
「あ、あのね。手、繋いでも……いい?」
「へ? あ、あぁ……」

その後、お互い顔が真っ赤になりながら電車に乗った。

でも手はちゃんと繋がってる。
なんか……初々しく取られそうな感じ。
電車に揺られること二十分余り。 目的地の駅を降りると海が近いせいかとても暑く感じる。
これも雰囲気ってやつなんだろう。

「あっあれだよ。展望台」
「ほう、結構大きいな。これなら眺めがよさそうだ」

実際に上ってみると、本当に眺めが良かった。
海岸線が遠くまで見渡せる。

「わぁ〜」

ひかりはここから見える景色に見入っている。
その目は、子供が見せる輝きにそっくりだ。
昔と変わらないな……

「ん? 私の方を見てどうしたの。何かついてる?」
「いや、何でもない。ひかりが楽しそうだなって思ったからさ」
「うん! すっごく楽しいよ♪」

ゆっくりと景色を楽しんだあと、展望台から出てその辺を散歩していた。
歩きながら何気ない話をしたり昔の事などを話しているうちに、ふと時計を見てみると丁度お昼の時間をを差してる。

「もう昼なんだな。どこかで昼ご飯でも食べようか?」
「うん。それでね、私お弁当作ってきたんだ」
「そうか〜。ならすぐそこにある公園で食べるか」
「シートも持ってきてあるから、芝生のところで食べようよ」

公園の中に広々とした場所があったので、そのにシートを広げてお弁当を食べる事に。

「これ、全部ひかりが作ったのか?」
「そうだよ。朝早くおきて一生懸命作ったんだから〜」
「サンキュ、ひかり」
「どういたしまして♪ あんまり美味しくないかもしれないけど」
「そんな事はないって。いつもひかりが作ってくれるご飯でマズイと思った事なんてないからな」
「ありがとう。はじめ」
「それじゃ、食べるか」
「うん」

ひかりと談笑しながらご飯を食べる。
美味しいのとお腹がすいてるのとで、つい夢中になってガツガツと食べてしまう。
そんな俺を見てひかりもニコニコしながら箸を進めている。

「はぁ〜うまかった……ごちそうさまでした。ひかり」
「お粗末さまでした。こんなに綺麗に食べてもらえると、作った甲斐があるってものだよ〜」
「ふぁ〜…さて、午後はどうするか………?」
「あれ、はじめ何だか眠そうだけど大丈夫?」
「あぁ…お恥ずかしながら今日の事で緊張したらしくよく眠れなかったんだよ。ひかりとこうしてニ人で出かけるのは初めてだろ? それで、いろいろと考えてたら朝になってて……どうやら眠気が今になってきたみたい」
「そうだったの? ありがとうはじめ。ねぇ、私が……膝枕してあげようか?」
「えっ!? あ、いや…その、い、いいの……か?」

小さくコクンと肯く。
膝枕なんてやってもらった事ないからな……
尚哉に言わせれば、膝枕は男の特権らしいがそんなのはよく分からない。

「そ、それじゃあ、おじゃまします……」

ふわっ……

ひかりの太ももは言葉では言い表せないぐらい柔らかくて、そして気持ち良かった。
あぁ……なんか一気に眠気が………
俺の意識がなくなるまで、時間なんて掛からなかった。


「……はじめ、大丈夫?」
「すー…すー…」
「あ、もう寝ちゃった……」

私の太ももに頭をのせたはじめは『気持ちいい…』と呟いてすぐに眠りについちゃった。
気持ち良さそうに眠るはじめの頭を撫でながらふと思う。
いつもならこんな事恥かしがって断るはじめも、襲い掛かってくる睡魔には勝てずに素直に寝ている。
やっぱりはじめって可愛いな☆
昔……まだ小学校に入る前の私にとってお兄ちゃん的存在だったはじめ。
でも今は違う。
私の好きな人。
……あのお祭りに行った時からずっと好きだった……
急に離れて行ってしまってもう逢えないんじゃないかとも思ってたけど、今ここにいるのは夢でも幻でもない本物のはじめ。
あの頃の面影を残す『横浜 一』が私の目の前に――――

「はじめ……」

そっとはじめの唇と私の唇を重ねる。
そう言えばここに来た時もキスしちゃったっけ。
でも、それだけ私ははじめのコト……………好きなんだよ……………
ずっとずっと胸の中で暖めてきたこの想い。
絶対に諦めるなんて出来ない。
だから早くこの気持ちに気づいてね。はじめ――――



「う……ん」
「あっ、おはよう。はじめ♪」
「…おぅ……ひかり、俺どのくらい寝てた?」
「結構寝てたよ。私も少し寝ちゃったみたいだけどね」
「悪いな。痛くないか、足」
「ううん、大丈夫」

起き上がって周りを見てみると、もう空は赤く染まっていた。
どうやら俺は午後いっぱい寝てたらしい。
結局、来たはいいけど展望台しか見て回れなかったな…。

「もう夕方か……どうする? 他のところに行く?」
「うんっとね、はじめ。浜辺に行ってみようよ。もっと綺麗に夕日が見れるよ」
「そうだな……よし、行ってみるか」
「うん」

公園から浜辺に出てみると、海の彼方に太陽が沈むのが本当に鮮やかに見えた。
人気のない浜辺にひかりと二人、海を眺めてる。

「今日は楽しかったよ、はじめ♪」
「ごめんな。後半は寝てるだけで」
「ううん。いいんだよ。私はとっても楽しかった」
「そっか。なら良かった」
「……ねぇ、はじめ」
「ん〜?」

ひかりが遠慮がちに何かを言おうとしている。
一体なんだろう?

「はじめは、私のこと……好き?」
「えっ!? ひ、ひひひひかり!?」

なっ何だ急に……これってまさか、えぇっ!?

「それとも……キライ?」
「へっ? あ、いや……それは好きだけどさ。でも何でそんな事急に……」
「はじめが、無理して私に付き合ってくれてるんじゃないかなって思って……それで」

な、なんだ……そんな事か。
俺はてっきりもっと大事な事かと思ったぞ。

「俺がそんなコト思うわけないだろ」
「…そうだよね。ご、ごめんね変なこと言って」
「気にするな」
「はじめ…」
「ほら、これでしんみりした話は終わり! せっかく遊びに来たんだから、残り少なくても楽しまないと損だろ?」
「……うん!」

ようやく、いつものひかりの笑顔が戻った。
やっぱりひかりは笑っていた方がいいよな。
暗い顔なんて似合わない。
そうだろ? ひかり。

「夕日、綺麗だね」
「そうだな」
「また……来ようね」
「あぁ」

その後俺たちは夕日が見えなくなるまで浜辺にいて、近くのレストランで夕食を済ませてから帰路についた。


「すー……すー……」

いま、ひかりは俺の肩に寄りかかって眠っている。
さっきは寝かせてもらったから、今度は俺が枕代わりになろう。
せめて駅に着くまでの間は。
でも、ひかりは駅についても目を覚まさなかった。
このままでは帰れないので俺がおぶって帰る。

「なんか視線が痛いな」

夜とは言え周りの好奇に満ちた視線を感じる……恥かしい。

「うぅ、ん……」

時々寝言みたいなのを言うひかりが何とも可愛らしく見える。
普段は聞く事の出来ない幼さを残した声が……
こうして見てみると、やっぱり高校生には見えないんだよな〜。
まだ幼い頃の面影とか残ってるし。
でも……
そうは言っても、背中に感じる柔らかい感触を考えるとやっぱり子供じゃないんだよな――――って、俺は何を言っているんだ。
バカじゃないんだから………ハァ。

「はじめ……ペンダント……ありがとう……むにゃ…」

「……ペンダント、ねぇ」

随分小さな頃の夢を見ているんだな。
まだなお大切に持っていて、今日も首に下げていたあのペンダント。

「……ずっと持っていてくれて、ありがとうな。ひかり」

結局、ひかりは家についても起きなかった。
無理に起こすのはかわいそうなので、俺の部屋のベットに寝かせて俺は床で寝る事に。
ひかりの部屋は隣だから連れてく事も出来たけど、勝手に鍵を使うのは気が引けたのだ。
パチンと電気を消して部屋が真っ暗になる。
ふぁ〜、俺ももう寝るか。
おやすみ……ひかり。



チュンチュン……

「ん……あれ?」

目を覚ますと、そこは私の部屋じゃなかった。
ここは……はじめの、お部屋だ。
それを証明するかのように、ベットの脇を見てみるとはじめが寝ていた。
……そっか、昨日私電車の中で寝ちゃったんだっけ。
はじめが運んでくれたのかなぁ。

「……ぅ……ん」

しばらくして、はじめも目を覚ました。
それだけで、なんだかとても嬉しくなる。自然と顔が笑顔になる。

「……あ、おはようひかり。よく眠れたか?」

昨日の事のお礼と、朝一番の挨拶を込めて私は笑顔で挨拶をした。
他の人には絶対に見せたくない、はじめの前だけ見せる笑顔で。

「おはよう♪ はじめ!」




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