〜11、テスト休みは……?〜


教室がシ〜ンと静まり返ってる。
聞こえてくるのは、何かを書き込んでいる音のみ。
そして、時計の針が丁度一番上に来たとき……
キーンコーンカーンコーン

「それまでっ鉛筆を置け。後ろの奴は前に集めて来い」

とたんに教室中が騒がしくなる。
ついに三日間に渡ったテスト期間が終了!
もう夏休みは目の前だ。

「こらこら、騒ぐな。HRを三十秒で終わらせるからそれまでは黙ってろよ」

先生が事務的な話を始めた。
だが俺たちはそれを聞かずに既にお喋りモードに。
先生もそれを知ってかあまり重要な事を言ってない。

「あ〜……やっと終わったな。もちろんこれからどっか行くだろ?」
「そうだな。無事にテストも終わった事だし、パァ〜っといきますか」
「それで、何処に行くの?」

その後、みんなで相談の結果カラオケに行く事になった。
テスト期間中のストレスを発散させるには丁度いいだろう。
目的地について、みんな思い思いの歌を歌い始める。
それは別に構わないんだ。
……でも、一つだけ納得出来ない事がある。

『何で俺がまた奢らなきゃいけないんだ?』

マイクを通して俺の声がスピーカーから出てくる。
自分の声を何か通して聞くと違って聞こえるよな…?

「はじめだけじゃないわよ。尚哉も一緒よ」
「それはわかってるけど、何故にさやかとひかりは払わないんだ? こう言う時はワリカンだろ」

これに対する返答。

『女の子を誘ったんだから、当然男の子が払うんでしょう?』

……だそうです。
尚哉とニ人で反論しても覆らず、お会計は俺と尚哉が支払う事に。
本当に今月ヤバイぞ……どうしよう。

「あ〜思いっきり歌ったな〜満足満足♪」
「私も久しぶりに歌ったよ〜」
「はぁ、そりゃ満足だろうよ。自分達は払ってないんだからさ。仕送り日まで後五日……これを漱石さん三名の戦力でどう乗り切るか」

……余談だけど、もうすぐお札が変わるそうなんだよな。
何でも漱石さんと稲造さんが、英世さんと一葉さんに変わるとか。諭吉さんは変わらないんだね。まぁこれは関係ないか。
う〜ん、にしてもなぁ……ここはやっぱり食費を削るしか無そうだな……はぁ。

ガチャ…バタン
家に着いて、コップを手にとってうがいをする。

「あ〜久々に歌った。喉が少し痛いな、一体何曲くらい歌ったかな?」

ぐううううううぅ〜
腹が盛大に食べ物を欲しがっている。
そりゃあれだけ歌えばな、お腹だって空くって。

「夕飯にするか……って言っても、なにかおかずになるような物あったかなぁ?」

冷蔵庫を開けると、ほとんど中は空っぽだった。
さて、どうするかな?
ピンポーン
その時だ。呼び鈴が鳴ったのは。
こんな時間に誰だろう?

「は〜い」

ガチャ
「こんばんは、はじめ♪」

ひかりがいた。
その手には何かを持っている。

「ひかり、どうしたんだ?」
「もうお夕飯済ませちゃった?」
「いや、まだだけど。…それに食べたくても食料がほとんど無い……」

漱石さんを下手に出撃させると、後がツライし。
と、ひかりがニッコリ笑って手に持っていた鞄から何かを取り出す。

「ふふっ、そんな事もあろうかと私がお夕飯を持ってきました〜♪」

そう言ってひかりが取り出したのは大き目の重箱!!
なんと……これは補給部隊からの支援物資か!

「なにっ!? それは本当かねひかりさん。早速食べようすぐ食べよう! やれ食べようそれ食べよう!」
「ちょっと、そんなに慌てなくても……おじゃましま〜す」

がつがつがつがつ………
次々と食べ物を口の中に放り込む俺を見て、ひかりはとても嬉しそうな顔をしている。
あまりじーっと見られると、食べにくいんだが……

「そんなに急いで食べるとお腹によくないよ」
「大丈夫だ、早食いは慣れてる………………はいっご馳走様でした!」
「ふふっお粗末さま。どうだったかな、おいしかった?」
「それはもう。ひかりってホントに料理が上手いんだな」
「ありがとうはじめ。そう言ってくれると作った甲斐があるよ♪」

満面の笑みを浮かべるひかり。
いつも作ってもらってばかりだから、なんだかお礼をしたくなった。

「よし! 夕飯を作ってくれたお礼にひかりの願いを一つだけかなえてしんぜよう。もちろん俺がかなえられる範囲内で、だけどな」

俺がひかりの返答を待っていると、ひかりが何だか急に顔を真っ赤にしたり、笑ったりするのでつい笑ってしまった。

「ちょっとはじめ、何で笑うの〜」
「いや、ゴメンゴメン。ひかりの顔表情がころころ変わるものだから、おかしくなってつい。それで、決まったか?」
「う、うん。えっとね……………がいいな」
「え? 最初のところもう一回お願い」
「あっえっとと……じゃっじゃあ、テスト休みにどこかに遊びに行こうよ」
「あぁいいな。それならさやかと尚哉も誘って……」
「いや、その。ふ、ニ人で行こう…よ」
「えっ? ニ人って、俺とひかりで……か?」
「うん……」

こ、これは一般的に言うデートってやつなんだろうか?
ははは、まさか……な。

「そ、それなら日曜日はどうだ? 土曜までは金欠状態が続くからその日以降なら大丈夫だ」
「うん。いいよ……」

かくして、ひかりとのデート(?)が決まった。

「それじゃあ、私もう帰るね」
「お、おぅ。それじゃ日曜日な」
「うん」


ガチャ……パタン
「はぁ〜……デートの約束……しちゃった」

部屋に戻った私は、緊張がほぐれたのか床に座り込んでしまった。
心臓が物凄い速さで動いてる。
うぅ。私って、勇気無いなぁ。
あの時私が言いたかった言葉はデートの事じゃないのに……
言いたかった言葉は、本当は――――




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