〜8、さてさてお昼は?〜
キーンコーンカーンコーン
「ふぁ〜……やっと午前の授業が終わった。昼飯だ〜!」
チャイムが鳴って、睡眠から覚めた俺は、あくびと伸びをしながら言った。
古文の時間は眠くなるよホントに。
あれは絶対にお経をとなえてるとしか思えない。
「じゃあ、今日は上で食べる?」
「そうだな。久しぶりに天気もいいし、気持ちよさそうだ」
ひかりが弁当の入ったバックを持ちながら言う。
俺たちは雨が降ってるとき以外は屋上で昼ご飯を食べてる。
地面にシートを引いて、まるで運動会などの昼ご飯時みたいな感じだ。
最近は梅雨も終わりに近づいているのか、晴れの日が多くなってきた。って事はもうすぐ夏ってことだ。
「さやか、行こうぜ」
「えっ、あ……うん」
「尚哉も起きろよ。もう授業は終わったぞ」
俺と同じように授業中眠っていて、未だに起きていない尚哉を揺さぶりながら起こす。
「…ん、なんだ、もう昼か…?」
「そうだよ。上行くから早く起きろって」
「あぁ…わかった………あ〜飯だ〜」
「尚哉もはじめと同じこと言わないでよ」
「ん〜、横一も言ったのか?」
「俺も寝てたからね」
四人でぞろぞろと教室を後にして、階段を上っていく。
ウチの学校は基本的に屋上は解放されてる。
だから昼休みや放課後にはそれなりだが生徒はいるのだ。
「今日は、こんな物を作ってみました〜♪」
そう言って、ひかりは重箱の蓋を開ける。
いつも昼ご飯を作ってきてくれるのはひかりなんだ。
「ちょっと、あたしだって作ってるわよ」
「なんで心の声を読めるんだ?」
「口に出てたわよ。まったく…」
腰に手を当てて不満をあらわにするさやか。
この間はずいぶん暗めだったけど、今はもう元のさやかに戻っていた。
やっぱり、さやかはいつものさやかでないと。
―――とにかく、今日の昼ご飯はひかりが作ってきたわけだ。
「それでは、いただきまーす☆」
「「「いただきます」」」
みんなで雑談しながら昼ご飯に舌鼓をうつ。
この時間が一番幸せだなぁ。
「もうすぐ夏だね〜。夏休みに入ったら、みんなでどこかに出かけようか?」
「あ、それいいな」
「去年ははじめが一人暮らしを始めたりとかしていろいろと忙しかったから、今年は海とかに行きたいわね」
「え、はじめって去年から一人暮らししてたの?」
そう言えば、ひかりにはいつから始めたかは言ってなかったな。
「あぁ。あの時は急に言われてビックリしたよ。でも今は慣れたから一人でいるほうが楽だけどね」
「ふ〜ん。それで、お父さんとお母さんは元気にしてるの?」
「あ〜それはもうピンピンしてる。たまには顔見せろよーみたいなこと言ってるけど、最近電話くらいしかしてない」
元気してるかな? 夏休みになったら顔でも出してこようか。
「かく言うひかりは何で一人暮らしを始めたんだ?」
「私? う〜ん……何となく、かな?」
「…なんとなく?」
おいおい、そんな理由で一人暮らしするなよ……
何かあったらどうするんだ?
「でも、今は一人暮らしじゃないかもね。私も、はじめも」
「何でだ?」
「ほとんど一緒にご飯食べてるし、週末はみんなでいることが多いでしょ?」
あー……まぁそうだな。いつも夕飯はひかりと食べてるし、休みの日にはさやかと尚哉が遊びに来るし。
でも、こんな生活って何か幸せな気がする……充実してるって言うかなんと言うか、笑いがあって和やかな空間は俺は好きだ。
「そうだな」
「二人とも、話に没頭してると食うものが無くなるぞ」
「あっ尚哉! お前一人でたくさん食うな。俺まだ全然食べてないぞ」
「早い者勝ちだ。弱肉強食の世界では情けはないぞ!」
「何訳のわからないことを言ってるんだ!……って言ってる側からペース上げてがっつくな!」
「もうっ、はじめも尚哉も落ち着いて食べられないの? まったくこう言う所は中学時代と全然変わらないんだから」
ぎゃーぎゃー騒ぎ、わいわい楽しむ。
これが俺たちの昼の風景。
たくさんあった弁当も、四人で食べればあっという間だ。
「はぁ〜、食った食った」
「はい、お茶ね」
「おぉ、ありがたい」
食後のお茶をくいっと飲む。
お茶といっても、自販機で買ったペットボトルのやつだけどな。
「なんだかな〜。午後は授業受ける気なくなってきたぞ。サボろうかな」
出た、尚哉のサボリ癖が。
って言うか最近やたらサボってないか?
昨日も午後からいなくなったし……
「まったく、こんなのが学年一位だって聞いたらみんななんて言うか」
「ふっはっはっはっは! という訳で横一、一緒にサボろうぞ」
「何で俺まで一緒なんだよ」
「深い意味はない」
「はぁ………ったくしょうがないなぁ。まあ、俺も気がのらないしそこの上に登って昼寝ってのもいいかも」
ちょっと日差しがきついけど、サボれるんならいいか。
という訳で、俺と尚哉は午後のサボりが決定とな?
「さやか達もサボるか?」
「イ・ヤ・よ。一応いつもの事だから黙っておくけど、本当に見つかっても知らないからね?」
「今までも見つかった事ないから大丈夫だ。それにその時はその時で対処するさ」
「うーん、私もサボっちゃおうかな?」
「ダーメよひかり。バカがうつるわ」
「うぅ……じゃぁ、はじめ〜また放課後ね」
「おう」
弁当箱を片付けた二人が屋上を後にする。
俺と尚哉は入り口の上に登ってゴロンと寝そべった。
チャイムが鳴って、学校全体が急に静かになっていく……
午後の風が俺たちを撫でていった。
「平和だな……」
「ああ、まったくだ」
結局、この日も見つかることなく授業はサボれた。
午後の日差しは高い。う〜ん。夏か……高校生活ニ度目の夏がもうすぐやって来る。
今年は、一体何が起こるのだろうな。
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