〜7、恋の始まりは雨の中で…〜


「きりーつ。れい!」

クラス委員長の号令で、本日のミッションはようやく終了。
皆が待ちに待った放課後がやってきた。
さぁこれからどうするとか、部活行こうぜとかとか。
―――っていつもは活気あふれるんだけどなぁ。

ザアァァァァー…
雨、雨、雨、とにかく雨のまた雨!
ったく、これだから梅雨時ってのは嫌なんだよ。
朝晴れてたと思ったら、放課後には雨が……天気予報は今日も見事に的中!

「はぁ……さて、帰るかね」

この雨では部活も出来ないので今日は帰ることにした。
もっともまだ部活禁止を言い渡されているので出ても何の意味もないが。
そろそろ治ると思うんだがなぁ。
だから今日もいつものメンバーで帰ろうと思ったら、尚哉は途中で学校抜け出すし、ひかりは職員室に用事だとかで。
気が付いたらさやかもいなかった。
そんな訳だから今日は一人。
ま、たまにはいいかな。

「あっはじめ」

昇降口に降りていくとさやかがいた。
靴を履いて、昇降口のところに立ってる。

「おぉ、さやか。誰か待ってるのか? ひょっとしてひかりとか?」
「……ううん。それが傘忘れちゃって…この雨だから帰れそうにないのよ。それで、どうしようかなと思って」
「今日の天気予報で雨って言ってただろ」
「朝晴れてたからね、大丈夫だと思ったの。それに天気予報じゃ雨が降り始めるのは夕方って言ってたじゃない? 間に合うかと思ったけど、結果はこの通り」

ご覧あれと手で指す。
空は暗く、止む気のしない雨が降り続いていた。
……なるほど、それで傘を持ってきていないってとこか。
やれやれ、しょうがないな。

「ほれ、俺の傘に入っていけよ」
「えっ……い、いいの?」
「当たり前だろ。俺傘持ってる・さやか持ってない・だから入れていく。OK?」
「う、うん……ごめん。じゃあ、おじゃまします……」

……ん?
今日のさやかは歯切れが悪いなあ?
いつもならもっとハキハキしてるのに。
どうかしたんだろうか?
それとも、単に遠慮してるだけか。
まあとにかく二人で帰る事にした。
しとしとと降り続く雨の中、俺とさやかは一つの傘で帰っている――ようは相々傘だ。
相変わらずと言うか、周りから様々な視線で見られるが、もう前から経験あることだし慣れてる。
だから特に気にしない。
それにしても、さっきからお互い黙ったままだな……聞こえるのが傘を叩く雨の音ばかりだ。

「ねぇ」

そう思った矢先、さやかが話し掛けてきた。

「ん?」

「あ………いや、何でもない…」

と言った後、さやかは先ほどと同じく下を向いてしまう。
やっぱり、なんか変だな。

「なぁ、今日のさやか何か変だぞ。なにかあったのか?」
「え?……な、なんで」
「いつものさやかならもっと明るいはずだけど、今日のさやかは暗い感じがする」
「そ、そんなことない、わよ…うん」

そんな事言いつつも、目がそっぽに逸れていく。
やっぱり、ど〜にも歯切れが悪い。
いつもがいつもなだけに、こんなだと変に心配をしてしまう。
気になって仕方がないけど、本人がそういうのならどうしようもない。

「ならいいけど、もし相談事とかあったら言ってくれよ。隠し事するような仲じゃないだろ?」
「うん……あ、ありがと。はじめ」

なんとなくぎこちない感じがしたが、さやかに笑みが少しだけ戻った。
そして俺の事を見てる。じっと……ずっと?

「ん? どうした、俺の方をじっと見て。何かついてる?」
「えっあ、いや……なんでもない……あはははは……。あ、もうはじめの家の前なんだ。早いな〜……そそれじゃあっ傘入れてくれてどうもありがと。後は走って帰るから―――」
「ちょっと待った!」
「…えっ?」

雨の中を走り出しそうになったさやかを呼び止め、持っていた傘をさやかに手渡した。

「さやかの家はまだ少し先だろ。このまま濡れて帰って風邪ひいたらどうするんだよ。俺の家はもうそこだから傘無しでも大丈夫」
「で、でも……」
「その傘は貸すから、今度家に持ってきてくれよ。それじゃあな!」
「あっ! ちょっと、はじめ………」


――鞄を頭に載せて走っていくはじめ――
――傘を持ったまま、呆然とその後姿を見つめるさやかだけが残った――
――雨はなお降り続く……――


〜さやかの部屋〜

ばふっ
「はぁ…」

さっきから何回も吐いているため息。
……今日のあたしは何か変。
ううん。今日と言うより、最近のあたし。
はじめの隣にいたら何だか胸が苦しくなる。
頭の中も真っ白になって―――あの時は一体何を考えていたのか全然覚えてない。
そっと、胸に手を当てると心臓が早く鼓動を打っているのがわかる。

「どうしちゃったんだろう……」

家に着いてから、着替えもせず電気もつけないままベットに寝転がってボーっと窓の外を見ていた。
一向に止まない雨……
といから溢れた雨水が雨と混じって落ちていく。
何だか、あたしの心と似てるなぁ……

「はじめ……どうしてるかな。あの後、服…濡れちゃったんだろうな………」

ギュッ…
また胸が苦しくなった。
痛いとかそう言うのじゃなくて、これは…………切なさ?
はじめの事を考えると、胸が苦しくなる……?
そして―――

「――あれ……?」

つーっと一粒の雫が頬を伝っていった。
あたし、泣いてるの?
どうして……?

「はじめ………」

布団に顔を押し付けて、涙をこらえようとする。
でも、涙は止まることなく流れていた。
会いたい…
はじめに…
会ってどうかしたい訳じゃない。
ただ…会いたい……
そして、顔が見たい……
ただ、それだけ……?
本当にそれだけ……なの?
あたしは…あたしは………

「はじめ……」

…雨は止むことなく降りつづけていた。




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