〜5、ほのぼの!?学校生活〜


ジリリリリリリッ!!

「うぅ………ん」

ジリリリリリ………

「……ん?」

朝の目覚めを促す目覚し時計が突然沈黙。
止めようと伸ばした手が目的を失う。
変だな……電池切れか?
そんな事を思いつつ、半ば寝惚け気味でも起き上がろうとした時だった。
シャッ!と音がして、急に目の前が真っ白になった。

「うっ!……ん?」

明るさに慣れて目を開けると、今度はカーテンが勝手に開いてた。
なんだなんだと周りを見ればそこにはひとりの女の子の姿が。
あれは……。

「ひか……り?」
「うん。おはよっはじめ♪」

俺の部屋に来ていたのは隣に住んでいるひかりだった。
制服の上からエプロンをかけていて、俺が起きるのを見ると台所へと歩いていく。
その背中に向かって、とりあえず状況が把握できないまま挨拶を返した。

「あ、あぁ……おはよう。所で、何で俺の部屋にいるんだ?」
「うんっとねー。ひ・み・つ・♪」

にっこりスマイル。
いや、秘密って言われてもなぁ。
――あ、ひょっとして、ドアの鍵開けっ放しだったとか?
よく掛け忘れてさやかに怒られたな。
だとしたら、今度から気をつけないと泥棒に入られ放題じゃないか!

「――め、はじめ」
「……おっどうした、ひかり」
「さっきから何を喋ってるの?」
「いや、何でもない。ふぁ〜……さて、俺も着替えるかな」
「今朝ご飯作ってるから、着替え終わったら食べようね♪」
「お、おぉ。サンキュな」
「うんっ」

嬉しそうに返すと、ひかりは朝ごはんを作るのを再開。
あんまり邪魔しちゃいけないな。
俺も遅れないように準備するか。

………………

そんな訳で、通学途中。
学校への道をひかりと歩いている。
同じ制服を着た人はほとんど見かけない。
時間が時間だし……あと二十分もすれば制服だらけになるかもしれない。

「それにしても、俺の寝てる間に部屋に入ってくるなよ。びっくりしたじゃないか」
「あははは、ゴメンネ。はじめ起きてるかな〜と思って行ってみたら、鍵が開いてたからつい入っちゃった♪」
「入っちゃったって…」
「でも、女の子に起されて嫌って事はないハズだよ」
「うっ……まっまぁ、それはそうだけどなぁ」

それとこれとはあんまり関係ない気がするんだけどなぁ〜。

「何がそうなの?」
「そうだぞ、何がそうなんだ…………ってわぁ!? さやか、いつから隣に?」

おはよう、と言って隣を歩くさやか。
見れば尚哉までいる。
全っっっ然気づかなかったぞ!

「今来たばかりよ。で、ひかりと何の話?」
「秘密だ」

取りあえず、黙っておく事にする。
理由はまだない。この先もきっと。
当然ながらさやかは異をとなえてきた。

「ちょっと、何よそれ。気になるじゃない。いいから教えなさいよ」
「断る。ではさらば!」
「…あ、こら待ちなさい! はじめ」

脱兎の如く逃げ出す。
別にそこまでして教えたくないわけじゃないけど、まぁ遊び心?

「待てと言われて律儀に待つ奴はいないぞ〜。もし追いついたら教えてやるよ。追いついたらだけどな!」

俺はさやかが運動が苦手なのを逆手にとって、こうやって逃げるときがある。
……のだが、何故か未だに成功した事が無い。
何度となくやってるけど、勝率0割キープ中。
どういう訳かその時に限ってよくない事が起きる。
何でもないところで転ぶとか、靴紐が解けるとか、人にぶつかるなどして……。
今回こそは!と思ったんだけど………ね。
現実は何処までも現実だった。

ズルッ!

「うおっ!? わああぁぁ!」
……グキッ

なんか鈍い音とともに地面に倒れこむ。
な、なんで……なんでだ!

「なんでこんな道の真ん中にビー玉が転がってるんだ!」

ありえないだろ普通!?
……って、よく見ると、前方でランドセルを背負った子供が必死にビー玉を拾い集めてる。
つまりあれですか。ばら撒いちゃった所に俺遭遇?
不運にも程がある。
その小学生が俺の所まで回収に来た。
手や足回りにあるのを集めて、はいと手渡す。
ペコッとお辞儀をすると走っていってしまった。
やれやれ。子供は元気がいいな。
そんなこといってる間にさやかがノロノロ追いついた。

「はぁ…はぁ…お、追いついたわよ。はじめ……ふぅ」
「さやか〜大丈夫? 息が切れてるよ?」
「はぁ…う、うん……だいじょう…ぶ」

大丈夫とか言ってるけど、全然そう見えない。
隣ではひかりが同じく走ってきたのに息も切れてないのに。
なんとも対照的な姿だ。

「ならいいんだけど……。はじめはいつまで転んだままなの?」

今度は俺に尋ねてきた。
いや、俺だっていつまでもここで倒れたままになりたくはないさ。
でもなぁ〜と足を見る。
制服越しに見る分には変化はない。
だけど足がしびれる様に痛い。
オマケに動こうと思っても言うことを聞いてやくれない。
これは……やっぱり足を挫いたかもな。
捻った部分が更に痛くなってきた。

「……ふぅ。やっと落ち着いた……さて、追いついたわよはじめ。約束通りちゃんと教えてね」
「あぁ。でもその前にな、誰か手を貸してくれないか。立てそうもないんだ」
「えっ?」
「立てないってどういう事?」
「どうやら足を変な風に捻ったみたい。尚哉、悪いけどちょっと手伝ってくれ」
「え? おっおう」

隣にいた尚哉に肩を貸してもらって、やっと立ち上がる事が出来た。
もう右足に力が入らない。
自力では歩けそうにないのでそのまま尚哉に肩を借りながら歩いている。
何とか学校まで連れて行ってもらうと、その足で保健室まで連れて行ってもらった。
診てもらうと、やはり患部が腫れ上がってる。
保険医の先生の診断も間違いなく、

「捻挫ね」

だった。

「一週間くらいはテニスや運動をやっちゃダメよ。絶対安静。いいわね?」
ドクターストップを言われた以上は部活などの運動は出来ない。
まぁ、仕方がないか…。

「はじめ、大丈夫?」
「なぁに大丈夫だって。まぁ、言われたとおり少しの間は安静にしてないとな」
「荷物持ってあげようか?」

さやかもひかりも心配しているようだ。

「今日の体育は見学だろう。先生には言っておくぞ」
「サンキューな。尚哉」
「早く治せよ」
「あぁ、わかってるって」

その後も、何かと三人は俺の補助をやってくれた。
こうして考えてみると、足がつかえないと大変なんだなぁと思う。
階段上がるのだって辛いんだから。
教室移動だって一苦労だ。
だから補助は非常にありがたい。
でも、でもなぁ……

「なぁさやか。それくらいは自分でできるって」
「ダーメ。いいから怪我人は大人しくしてなさい」

さやかは学校にいる間中ずっと俺の世話を焼いていた。
足を使わなくてもできる事さえやらせてはもらえなかった。
流石にノートは取らせてもらえたけど……

「さやかさ、何か嬉しそうだな」
「えっ。そう見えるかな?」
「いや、何かそんな風に思えただけだ」
「――案外……そうかもしれないわね」

さやかが嬉しそうな顔でやっていたので、水を差しちゃ悪いと思って嫌とは言わなかったが……
その光景を見ていたクラスの皆の視線は痛かった。
特に極まったのが―――

「はい、あたしが食べさせてあげる。あ〜ん」
「いやいいって。それはいくらなんでも自分でできるから。それにガキ扱いされてるみたいでヤダ」
「あ〜ん(怒)」
「…………(パク)」




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