聖なる日・聖なる瞬間 三

刻一刻とその時間は近づく。
運命の瞬間……。
俺は―――――――


「さて、何を食べるか」
「う〜ん、どうしようかなぁ」

映画館から出て、何を食べようかと歩いて探す。
せっかくイブなんだからと張り切ってもいいのだが……アイニク俺にはそこまで予算があるとはいえない。
かと言ってそこらのファーストフードで済ませるのはちょっと味気ない。
だからこうしてどうしようかと悩んでるわけだ。

「和洋中でだったら何がいい?」
「う〜ん、どうしよう」
「ひかり、さっきからそればっかりだな」
「だってぇ、本当にどうしようか迷ってるんだもん。そう言うはじめは何がいいの?」
「俺? 俺は……ひかりと一緒でならなんでもって」
「うわぁ。それはちょっと無責任だよぉ〜! はじめも考えてよ」
「了解了解。とは言っても、ホントどうするかねぇ」
「ねぇ、やっぱり私もお金出すからさっきの所は……」
「いやいや、そうはいかないよ。デートの時に女の子にお金使わせるのは気が引けて…」
「む〜、こだわり?」
「……そうかも。とっとにかく、ここは俺に任せて欲しい」
「ん〜……あっ。じゃあそこのお料理屋さん!」
「……値段的に問題外だっつの」
「だよね〜。私もかしこまった所はイヤ」

そして散々迷った挙句は――――

「まぁここが無難な線だよな」
「うん、そうだね。和洋中全部あるもんね」
『いらっしゃいませ〜。2名様ですか?』

ファミレス……普段利用しないけど、こういう時だけ深〜く感謝。
みんなの意見を纏めてくれる素晴らしい場所だなっ。
二人がけの席に案内されて、それぞれ食べたいものを注文。

『それでは、少々待ちくださいませ〜』

店内は昼だけあって賑やか。
家族とかカップルとか、そんなのばかりが目に入る。

「すぐに座れてよかったね」
「あぁ。俺達の後から急に混みだしたもんな。映画館といいラッキーだ」
「うんっ」
「午後は何するか今のうち決めとくか。その方が後々楽だし」
「はじめは何かあるの?」
「いや、特にはないかな。ひかりは」
「私は……お店屋さんとか、見て回りたいな」
「よし、じゃあ見て回ろう」
「ごめんね、付き合わせてるみたいで」
「のんのん。そんな事はないぞり。俺はそうしたいから言ってるんだし、付き合ってあげてるとかそんな事は思ってもいない。俺は、俺のままだから気にするな」
「うん……ありがと、はじめ」
「のんぷろぶれむってやつだ。あ、ほれっ料理来たみたいだぞ。さ、メシだ〜」

外を歩く前の腹ごしらえ。
これなくして動く事は出来ない。なんてね。

「ひかり、スパゲッティだけで足りるのか?」
「うん。足りるよ」
「なんなら、俺の唐揚げ一ついるか?」
「そんな、いいよ〜」
「まぁまぁそう言わずに。ね。今なら増量サービスで一つオマケだ」
「あ〜……うん。ありがとう」
「俺が好物の唐揚げをあげるなんて滅多にないことだぞ〜?」
「あははっそうだね。はじめ大好きだもんね」
「自分じゃ作れないけど、これより美味い揚げ物はないっ!」
「今度また私が作ってあげるね」
「すっごく期待して待ってる」

こんな感じにファミレスでのお昼は過ぎていった。
お腹も満足したところで、さっき決めたとおり今度はお店を歩いてみて回る。
ウィンドウショッピングってやつだな。
俺から見ればあんまり良く分からないことだけど、ひかりが楽しんでるならそれでいい。

「ねぇねぇ。こっちとこっち、はじめだったらどっちがいいと思う?」
「んあ? 俺には同じに見えるけど」
「色は一緒なんだけど、模様が違うんだよ。ほら、こっちが縦線で、こっちが横線。ね?」
「……線が縦か横かの違いなんてあんまり問題ないように感じるんだけどなぁ」

………………

「うわ……ここの洋服屋さん、もう春物の洋服扱ってる」
「いっくらなんでも早すぎじゃないか?」
「そ、そうだね……」
「季節を先取りって書いてある」
「あ、あはは……」

これはどうも、なぁ?
季節を先取りって言うよりは、ぶっ飛びすぎ。
まだまだ寒いのに薄めの長袖なんて着たら風邪引くっつの。
この店、そう長くはないな。

「次、行くか」
「…うん」

それは、何件かの店を見た後だった。
自動ドアを抜けて外へ出ると、何か冷たいものが額に触れた。
同時にひかりも、あっと小さく声をあげる。
空からはらはら落ちてくるもの。
それは……

「雪、だね」
「あぁ」

そう、朝の天気予報で雪が降るかもといっていたが、ついに降りだした。
まだまだ粉雪みたいに小さいけど、このまま降れば明日には積もってるかもしれない。
ホワイトクリスマス、かな。

「空も暗いね。もう、夜なんだよ」
「そうだな。ある意味、本番ってやつじゃない」
「ふふっそうだね」

二人で空を見ながら話してると、ひかりが俺の手をキュッと握った。
こっちを見てないけど、横目で見るひかりの顔は少しだけ赤かった。

「……行こうか」
「……うん」

俺達は歩き出す。
これからが本番と言わんばかりに賑やかな場所を後にして。
他の人たちが同じように、俺もまた本番を迎えようとしてる。
いや、そう決めたんだ。
だからひかりの事を……誘ったんだから。

賑やかな繁華街を抜けて、静かな住宅街へと入ってきた。
もうここは自分の家の近所。
どこの家々もカラフルな電光装飾が綺麗だ。
一年に一度だけの大切な日。
そんな日だからこそ、一緒にいたい人と過ごしたい。
そんな想いがきっと込められてるんだろう。
さっきから何も話してない。
お互い無言のまま歩いてる。
それなのに、行こうとする場所が分かっているかのようにまっすぐ進んでいく。
誰かが決めたわけでもない。
そう話したわけでもない。
それでも、自然と足が向いた。
たどり着いたここは――――

「……到着」

俺達が朝出会った公園だった。


 

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