聖なる日・聖なる瞬間 一

12月24日 クリスマスイブ。
始まりは尚哉に誘われた一言から。
俺は……
この日、この時あった全ての出来事を忘れない。
長い長い一日を―――――


毎年、クリスマスといえば尚哉やさやかと言った面々とバカ騒ぎをしていた。
小学校の頃は親も交えて。
中学校の頃は親がいたときもあれば三人だけの時もあった。
高校に入って俺が一人暮らし始めてから初のクリスマスは2日かけて遊び通した。
そして、今年は……

「……ん」

目が覚めた。
寒さから来る震えが一気に眠気覚ます。
カーテンの隙間から見える外の景色。
今日の天気は曇りみたいだ。
朝のニュースでも同じ事を言っている。
山の方では雪がちらつくとか。
ホワイト何たらってやつ。
そんな本日は尚哉と遊び約束をしてる。
寂しい一人身同士、パァっとはじめるか!ってのが目的らしいが。
…一人身、か。
もし俺がもっとしっかりしてれば……
いや、止めておこう。
とにかく今は、さっさと準備を済ませて待ち合わせの場所へ行くことだ。
ホントに俺、何やってるんだかな〜。

「いってきます」

鍵かけて、肌寒い冬空の元を一人歩いていく。
待ち合わせは近くの公園の時計のした。
まぁ待ち合わせといえば定番な場所だが気にするまでもない。
あそこはあんまり人も来ないから。
これが駅前とかだったらきっとすごい事になってるんだろうなぁ。
そんな事を考えてる間にあっという間に着いてしまった。
さすが家から歩いて5分とかからない場所だ。
今日も誰もいないか、尚哉がいるくらいで他は……

「あ……」

俺の気配に気がついたのか、前にいる人がこちらを見た。
そこにいたのはなんと…。

「ひかり…?」
「あ、はじめ…」

何でだ?
どうしてひかりがこんな所にいるんだ?
俺は確かに、尚哉と約束したよな?
場所も時間も間違えてないはず。
だとするとこれは…?

「はじめは」
「…え?」
「はじめは、何でここに来たの?」
「お、俺は尚哉と遊ぶ約束してたから……そういう、ひかりは?」
「私は、さやかと約束してたの」
「そ、そうか……」
「うん……偶然だね」
「あ、あぁ…そうだな。なんだかまるで尚哉に――――」

♪〜♪♪〜〜♪〜♪♪〜〜

突然、俺の携帯が鳴り出した。
本当に突然だったもんだからビックリして慌ててしまう。
そして、もう一人慌ててる人物もいた。

「えっ!? あ、うわわっとと」

ひかりだ。
ポケットから取り出した携帯電話が手から落ちそうになりあたふたしている。
ひかりも電話か。なんだか重なってるなぁ。
着信表示を見ると、尚哉の文字が。

「はい、もしもし」
『おぉ、よこいちか? 俺だ俺』
「そりゃわかってるよ。で、どうしたんだ? もう待ち合わせの時間だぞ」
『それがなぁ。急に行けなくなっちまったんだよ。茜の奴が熱出しちまってさ〜。こんな日に限って他出歩いてるもんだから俺しかいないんだ。だから……悪い』
「茜が…? 珍しいな、熱出すなんて。でもそうか〜……なら仕方ないな。お大事にって伝えといてくれ」
『OKOK、すまないな』
「いいって。それじゃ」
『あっ横一』
「ん?」
『……ひかり、泣かすんじゃないぞ』

プツッ

「……えっ!?」

尚哉に返事を求めても、すでに電話は切られていた。
ひかり泣かすんじゃないぞって……ちらりとひかりの方を見た瞬間、ひかりもまた電話をしたまま顔色が変わった。
向こうも切られたみたいで、もしもしって言葉を連続してる。

「………………」

ひかりが恐る恐るといった感じにこちらを見上げた。


公園でさやかを待っていたらはじめがやってきた。
その次の瞬間、予想もしなかった電話が鳴った。
今が今だっただけに大慌てで電話に出ると、相手はさやか。

『もしもし、ひかり?』
「あ、うん。どうしたの」
『ごめ〜ん、急用入って行けなくなっちゃった……』
「えぇっ」
『なんでも、お爺ちゃんの息子のお嫁さんの娘さんがリウマチとかで……』
「はぁ……ずいぶん遠いね」

それにリウマチって……

『なんだかあたしもよく分からないんだけど、これから急いでいかなくちゃならないの。それで……ゴメンね』
「ううん。そういうことなら仕方がないよ」
『うん、ありがとう……それじゃ、ひかり』
「うん」
『はじめの事、よろしく頼んだわよ!』
「…えっ?」

次の瞬間、プツンと言う音と共に電話が切れた。

「………………」

混乱してもおかしくないはずなのに、自分でも恐ろしいくらい頭が働いた。
そっとはじめの方を見てみると、驚いてるような感じで私の方を見ていた。
……そっか、そういう事、か。
私はどうやらさやかに背中を押されちゃったみたい。
もうなかった事、後に戻る事は出来ない一押しを。
うん……確かにその通りだよさやか。
思えば、自分からも逃げてたのかも。
でも、もう逃げる事はしないよ。
今日が何の日かを考えれば。
もうこの上ないほどの日、私は……伝えなければいけないことを……


「ひ、ひかり……」
「はじめ……私、急に時間が空いちゃったよ」
「え?」
「さやか、来れなくなっちゃったんだって……」
「そう、か。実はさ、俺も尚哉が」
「………………」
「………………」

しばらくの無言、そして―――――

「なぁ、ひかり」
「?」
「もし良かったら、俺と……その、二人でいろいろ見て回らないか。せっかく時間もあい……いや、せっかくのクリスマスだし!」

ひかりの目がはっと大きく開いた。
そして、すぐにその目は微笑みに変わり、うんと頷いた。
歩き出すと同時に、自然と二人の手は重なった。
あの頃、まだ幼かった頃当然のごとく繋いでいたように。

12月24日 クリスマスイブ。
今年のクリスマスイブは、こうして今その幕を開けた…。


 

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