お互いの想いは声に出せなくて…… 三
学校からの帰り道、珍しく尚哉と二人で帰る。
そこで尚哉に言われた事…
「24日遊ばないか横一?」
※すまん、今回はちょっとばかりハイジャックならぬストーリージャックさせてもらう。
どうしてもこの内容が必要なんでな。
という訳で、今回は不肖この穂刈尚哉が話しをつとめるぞ。
……ある日の放課後。
いろいろ用事が重なって帰るのが遅くなってしまった俺は、何も入ってない鞄片手に廊下を歩いていた。
階段を下りようとしたときに、上から誰かが降りてくるのを見かける。
あれは……さやか?
「よぉ、さやかじゃん」
「えっ……あ、尚哉……」
「上に用事でもあったのか?」
「………………」
「?」
「……ごめんっ」
「へっ? あ、おいさやか」
突然走り去ってしまった。
一体何だって言うんだ?
気にせず帰ろうかとも思ったけど、何か気になったから待つことに。
下駄箱でさやかの靴がまだあったから帰ってるって事はないだろう。
横一の靴があったのも見えたが、いないところを見ると何か用事でもあるんだろう。
壁にもたれながら待つ事数分。
さやかが歩いてきた。
心なしか肩が下がってるように見える。
「な、尚哉……」
「ぃよっ」
「な、何で……?」
「まぁまぁ、一緒に帰ろうじゃないかと思ってな」
「…いつも一緒に帰ってるじゃない」
「だからそう言わずに、な?」
最初のうちは渋っていたさやかだったが、しばらくしてコクンと頷いた。
なんか、元気ないな。
「それでよぉ、こん時俺が言ったのよ。『んなワケあるか!』って」
「……そう」
俺が話す。
それにさやかが相槌をうつ。
さっきからこれの繰り返し。
なんだかなぁ。
「なぁ、さやか〜」
「えっ? な、なに?」
「どうかしたのか? 全然元気ないし」
「あ…………」
「さっき上から降りてきたけどさ、それ関連?」
「っ!」
返事はなかったけど、さやかの肩が少しビクッとなった。
ビンゴ、かな。
「まぁ何があったのかは聞かないけどさ……元気、だせよ」
「…………はぁ」
ため息一つ。そしてこっちを見た。
「分かってるんでしょ?」
「さぁな」
「嘘つき……」
「何も聞いてないのに何があったか分かったらそれこそ神だろ?」
「まぁ……ね」
しばらくさやかが沈黙した後、ゆっくりと口を開いた。
「振られちゃった、あたし」
「あ?」
「…だから、振られちゃったの。はじめに」
「え、振られたって……横一?」
「そ」
いや、横一に振られたって……な、なに?
「まさか……さやか、お前告ったのか?」
「うん」
「いや、さっきからんなアッサリ言うなよ。それで……振られたと?」
「だからそうだって言ってるでしょ」
なんか、俺の方が慌ててる気がしてきた。
さっきまで暗い感じがしたさやかが、今はどこかスッキリしたようにも見える。
……よく分からん!
「はぁ〜。結構、初恋だったりするんだけどなぁ」
「マジ?」
「うん……まじ。でも負けちゃった。やっぱり昔一緒にいた人には敵わないよね」
「それって、ひかりって事か?」
「そういう事ね。たとえどんなに一緒にいた時間が長くても、想う人がいるなら敵わないのよ」
「さやか……」
「本当は悲しいんだけどね。心のどこかで、こうなるのかもって思ってた。だから、もう泣かない。泣いたってしょうがないでしょ?」
「その割にはまだ目元潤んでるけどな」
「ばっバカ! そういうことは言わなくていいの! これは……余韻よ」
「余韻、ね……」
こんな状態なのに軽口をたたいてる。
下手な同情よりもよっぽどいつもらしいから。
「振られた以上、はじめとひかりには幸せになって欲しい。これがあたしの今の思い。だから、これ以上引きずるって事はしない。明日から……元に戻ろうと思う」
「……そうか」
「ねぇ、尚哉……」
「なんだ?」
「元に、戻れるよね…?」
俺の目を見ていったさやかは、とても不安そうだった。
だから、俺も安心させるような、それでいていつもどおりに、
「当たり前だろ〜。横一はそんな心の狭いやつじゃないさ。俺が保障する!」
「尚哉……」
トサッ……
「えっ…?」
「………………」
一種、何があったか分からなかった。
さやかが少し笑ったかと思うと、次の瞬間には……
「さ、さやか…?」
「ごめん、ちょっとの間だけ……このままでいて……」
俺の両手が何もない宙をさまよう。
さやかは、半ば抱きつくような形でその顔を俺の制服に当てていた。
……やっぱり、辛かったんだろうなぁ。
「…………ごめん、少し楽になったよ」
「あ、あぁ」
「……さっ! これで本当におしまいっ。明日から元に戻るわよー!」
そこにあったさやかの笑顔は、まだまだ目元に涙こそ残っていたものの、思わずドキッとしてしまうほど綺麗なものだった。
これも夕日が後押ししてるからかな…。
まぁ、いい。
さやかが元気になったならな。
「それじゃ尚哉、今日はどうもありがとう。それじゃね!」
「あっ……」
そのまま手を振ってさやかが走っていった。
一人ポツンと残される俺。
「やれやれ〜」
……ま、いいか。
「あっおはよう。はじめ」
翌日の学校。
横一がやってきたのを見るとさやかがいつも通りに挨拶をした。
その顔に不安とか悲しみなど後を引くものは何処にもない。
まさしくいつも通りなさやかだった。
逆に驚いていたのは横一の方らしい。
きっと何て返そうか戸惑ってたんだろうな。
まったく、あいつは本当に鈍いやつだよ。
だからこそ目が離せない。
最後までな。
「なぁ、さやか」
「ん、どうしたの」
その日の休み時間。俺はさやかにあることを話そうかと思った。
少し、覚悟がいる事を。
「ちょっと、手伝って欲しい事があるんだが…」
「なぁに、変な事とかはお断りだからね」
「そんなんじゃねって。……横一と、ひかりの事だ」
それを聴いた瞬間、わずかにさやかの肩が震えた気がした。
でもそのまま話を続ける。
「俺が思うに、あのままだと絶対にラチがあかない。だからな、ここは俺たちが……」
計画自体は簡単なものだ。
俺とさやかがそれぞれ別々に二人と集まる約束をする。
もちろん相手に気づかれないように。
そして、同じ待ち合わせ場所を指定して、そこで横一とひかりをバッタリ合わせる。
ここに見計らったかのように行けなくなった、と連絡を入れれば……って感じだ。
日時はそうだな……クリスマスイブ。
この上ないほど都合がいい。
シチュ的にも文句なしだ。
だが、これにはさやかの協力が無くして完成しない。
だからこそ、覚悟がいるんだ。
「どうだ、手伝ってくれるか?」
「………………」
さやかは黙ったまま何も言わない。
やっぱ、失敗か。
「お…」
「お?」
「面白そうじゃない。その話、乗ったわ」
「さやか…!」
思わず叫んで喜びたくなるところを必死にこらえる。
ここで計画が本人たちに露出したら水の泡だ。
「あの二人見てるとホントイライラするのよね。いっそこちらから仕掛けましょうか」
「でも……本当にいいのか? 昨日あんな事――――」
あったばかり、と続こうとしてさやかに指で口元を止められた。
もうその事は言わないで。と言いたそうな顔をしている。
……わかった。
「誘ったあんたが不安でどうするのよ」
「……すまん」
「しょうがないわねぇ。いっちょやりますか!」
ここに、横一・ひかりの恋の実らせ大作戦(仮称)が発動された。
発動の日は12月24日、クリスマスイブ。
聖なる日のなんとやらだ。
まずは計画の初めの段階から……。
「横一、今日一緒に帰らんかね」
「え、あぁいいけど」
早速学校の帰り道。
兼ねてからの計画通り、さやかもひかりと二人で帰ることに成功した。
バッタリ合うことがないようにしっかり別々の道を選んで…。
「あれ、今日はさやかとひかりいないんだな」
「えっあぁ……二人とも用事でもあるんじゃねぇの?」
「そうだな〜」
横一が気づいてる事はなさそうだ。
ま、横一だしな。
その方がこちらとしてはこの上なく好都合。
「なぁなぁ横一」
「ん?」
「もうすぐ世間的にはあれだよな。アレ。クリスマスって訳だ」
「あぁ」
「俺は宗教関係に成りきるつもりはないが……ここは、相方のいない男二人で寂しいクリスマスを迎えようじゃないかと」
「うわ、すっごく悲しくなるような展開……って、ひかりとか…さやかはどうするんだ?」
「あの二人は二人で用事があるんだろう。なければとっくに話してるハズだ」
「あ〜……まぁ、な」
「だからこそ、どうかね? どっかでパァっとやらんか?」
「まー俺はいいけど……」
フィーッシュっ! 引っかかった。
「よっしゃ、それじゃ早速日時だがな、俺的には――――」
第一段階、横一を誘うのは成功した。
夜になって、ひかりもOKが取れたとさやかから連絡があった。
これで何事もなければ、24日……最高のイベントをお膳だてだ。
運命の日、24日まであと4日……。
計画は、遂に表立って動き出した。
〜 2.お互いの想いは声に出せなくて…… 〜
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