09...... 賑やかに。そして騒がしく?
「んじゃ、行ってきま〜す」
今日も元気よく学校への道のりを歩いてく。
最初は慣れない通学路も、二十日も通れば慣れてくる。
ついこの間まで咲き誇っていた桜はどこへやら。
今ではすっかり青々とした新緑を太陽に反射させていた。
そして……
「あ、俊介。おはよっ」
「おはようございます」
「やっほ〜」
いつもの所でいつものメンバーと合流。
もうこれも当たり前の事となった。
四人並んで学校までの道を歩いてく。
……と、思ったら。
「しゅ〜ん〜ちゃんっ」
がばっよじよじ
「………………はぁ」
ため息が出た。
すぐ上では梢が満足そうにしてる。
バランスを崩さないように梢の膝元を押さえてるけど、彼女は気にせず何も言わない。
まぁ、当たり前となった体勢だからだろうか。
それでも、頬もとに感じる梢の太股の感覚は……
「はぁ…………」
「あんた朝からため息多いわねぇ。そんなんじゃ幸せ逃げてくぞ」
「いや……だって、なぁ?」
「ん?」
「こんな光景に慣れた俺は、果たして嬉むべきか悲しむべきか?」
「あー、これか」
「おう」
「慣れよ。な・れ。どうせ逃げられないんだから受け入れなさいって!」
バンバンと叩かれる背中が少し痛い。
再びため息が出るその横で、あはは……とあすかが苦笑していた。
「千堂さん」
「ん?」
「頑張ってくださいね」
「あ、あすかぁ〜……」
「俊ちゃ〜ん、元気よくいこぉ〜!!」
上では梢が元気よくはしゃいでで、下では俊介が涙を流しつつ……
「んでさ、話は変わるけど、昨日梢がねー」
そしてまた、何気ない話に盛り上がったり、上のいる梢が俊介をおもちゃにしたり。
わいわい騒ぎながらの登校。
まさに、青春真っ盛りに相応しいようなそうでないような。そんな風景だ。
「ねぇねぇ、数学の課題やった?」
「んにゃ、やってねぇ。て言うか分かんなかった」
「でしょ〜? 私も梢も分からなくてねぇ。かと言って、そこで尚哉に聞くのはプライドが許さないからナシとして、ここはもうあすかに頼るしかないのよ〜」
「あ、茜ちゃん……」
あすかが苦笑してる。
このメンバーの中で一番頭がいいのはこのあすかだ。
学年一位をとり続ける尚哉という兄がいるのに、下の姉妹の方はパッとしないらしい。
ともあれ、こんな風景もよく見かけるものとなってきたのだ。
「あすかはやった?」
「うん。一応やったけど……あってるかは分からないよ?」
「ん〜なコトないない。あすかなら絶対に合ってる」
手を左右に振って、茜がキッパリという。
本人でもないのに、その自信はどこから来るんだろう?
「っし、これでなんとか課題の件は片付いた。ひとまず安心〜」
「スマンなぁあすか。こんなバカばっかりで」
「い、いぇ……気にしないでください。困った時はお互い様、です」
「それは非常にありがたいことだけどな。はたしてあすかが困った時に俺たちは力になれるのかがまた……なぁ」
「うふふっ。頼りにしてますよ。千堂さん」
「うぃ〜」
そんな話をしながら学校についた。
人で賑わう廊下を抜けて教室へと入ってく。
時間も頃合で、すでに来てるクラスメートで賑わう教室。
席が離れてる茜や梢に声をかけると、俊介はあすかと一緒に自分の席に向かう。
俊介・あすか、茜・梢の二組に分かれて席が近いのだ。
それでも、隣同士ってワケでもないのだが。
「んじゃ、あすか。また」
「はい。今日も頑張りましょうね」
「おっ俊介来たか」
席についた瞬間やってくる二人の男子生徒。
入学式以来仲がいい翔真と、先の野球以来仲が良くなった(?)晴男が話しかけてきた。
「おぅ、おはよ」
「あいかわらず両手に花してんなぁ千堂。野球部にくればもっとモテるぞ」
「またその話かよ……」
「毎度毎度だけどさ、絶対千堂は才能をほったらかしにしてるって。何せ俺からホームラン打ったんだからな」
「お前はお前で少し自意識を控えめにしろって言いたいな」
「それは気にするな戸崎」
「へいへぃ〜」
やれやれ、と言わんばかりに翔真は両手をすくめる。
晴男はいい奴だとは思うのだが、少しだけ自意識が過剰なのが玉にキズ、と言ったところだろうか。
野球の腕前は良いんだけれど。
「で、どうだ千堂? 今度こそいい返事を聞かせてくれよ〜」
「だから〜たまたまだって。たまたま。もう一回勝負したら絶対に打てないって」
「……そう言って、二度俺から打ってるだろ。本塁打」
「あ……あはは」
それは少し前の日の事。
諦めきれない晴男がもう一度勝負だと言って来た時の事。
授業が終わった放課後に行われた。
晴男と俊介の一対一の勝負……でも結果は、晴男が言ったとおり俊介の完勝。
偶然でも、全部をカンペキに打ち返すなんてありえない、と言うわけで、それ以来俊介の野球才能アリと見込んだ晴男がこうして何度も勧誘しに来るわけだ。
結果は見て明らかだが。
「お前だったら、絶対に主砲になれる! 間違いない」
「いや〜だからいいってば。また俺の気分が変わったら言うさ」
「頼んだぜ!」
そう言った所で、丁度よくクラスメートから呼ばれた晴男が席を離れた。
疲れた、と言ってふぅ〜っと大きく息を吐く。
「お前さんも災難だな。あいつ絶対に諦めてないと思うぞ」
「俺も同感。別に野球に興味があるってワケじゃないんだけどなぁ」
「でもよ、俺もセンスあると思うぜ? 素人目から見ても言える」
「センスがあろうと無かろうとな〜。あんまり部活とか興味が」
「この帰宅部主将め」
「翔真だって同じだろ」
「そうだがな」
ニッと笑う。
と、その時チャイムが鳴ってタイミングよく先生が入ってきた。
もうホームルームの時間か。
みんな一斉に席に着き始めた。
「なんだよ。何も鳴ったと同時に来なくてもいいじゃんか」
「ほれほれ、お前も戻った戻った〜」
「あぁ、そうだな〜……って、俺席ここだっつの。思わず立ちそうになっただろ」
「くくく」
「ったく……」
「んじゃあ、ホームルームを始めるぞー」
こうして、今日も一日が始まった。
――――――――
梨乃が両親に自分の思いを打ち明けてから、更に時が流れた。
あれから準備は着々と進んでいって、ついに新しく住む家も決まった。
偶然といえば偶然だったが、父親の友人が霞ヶ丘でマンションを経営していて、そこにまだ空いてる部屋があるから是非どうぞという事になったのだ。
両親曰く、セキュリティーとかがしっかりしてるから安心して送り出せる、とのこと。
駅にも近めで、梨乃が言っていた高校も歩いてそんなに遠くない。
この上ない物件だったというわけだ。
お値段的に結構な所を、親が知り合いだけあってずいぶん安くしてもらえたとか。
そんな事はさておき、梨乃の旅立ちはもうすぐそこまでに迫っていた…………
- 4月26日 -
今日も準備に大忙し。
持っていく荷物とか、新しくそろえる物を買ったりと。
目まぐるしいって、こういう事を言うんだろうなぁ。
たった10日くらいの出来事が、こんなにも早く感じるなんて。
もうすぐ始まる、私にとって何もかもが初めての生活。
私が、今までの私から離れていくために。
私は変われるかな…
向こうにいっても、元気でいられるかな…
つ ぎ へ
も ど る