EX...... ある晴れた日



はじめに……
この物語は、一部を除き本編とは全く関係ありません。
それを承知の上でご覧ください。



「…………早すぎたかな」

ある日、千堂俊介は駅前にいた。
休みだけあって、たくさんの人で賑わう駅前の広場。
ちょうど目印になりやすい時計の下に俊介はいる。
すぐ上に時計があるのに腕時計を見ているあたりが、なんとも言えない。
さっきからチラチラと。そんなに時間が流れたわけじゃないのについ見てしまう。
待ち合わせなんてしてればそんなものだ。
今日の俊介の服装は、まぁお洒落をしてるって程でもない。
友達とどこかに出掛けるようなごくごくフツーの格好をしている。
特別オメカシでもしてれば『デートか?』なんて思うんだけど……。
まぁ、俊介のことだから例えデートでもそこまで畏まらないかもしれない。
だって俊介だし。……と、話がそれた。

「そろそろ来ると思うんだけどなー」

もはや数えるのすらめんどくさくなる位見つめた時計。
見始めてからようやく二、三分が経っていた。
彼にとっては、きっと五分以上に感じただろう。
時計から目を離して周りを見れば、友達同士で歩く者や恋人繋ぎをしながら寄り添うカップル、子供に急かされながら歩く家族連れなどなど。
みんな思い思いの休みを楽しんでいるようだ。
中には休日出勤なのだろうか、スーツを着たサラリーマンもいる。
お休みなのにご苦労様です!

「やっぱり三十分以上早く着くのはやりすぎか」

やりすぎだ。
ふぅと一息ついたとき、何気なく見回した景色の一角に目が止まる。

「……なんだ、あれ」

人の流れの中に、あきらかに取り残されたような雰囲気をかもし出す一軒のお店。
古ぼけた外装と、紫色の看板が不気味なくらいに強調してる。
なのに、誰もが気にせず通り過ぎていく。
単に興味がないだけなのか、それとも……

「なんか、気になるな」

そう呟くと、何となしに足を向けた。
待ち合わせの時間まで少しあるし、近場を散歩するくらいならいいか。

「(……黄泉屋?)」

すぐ近くまで来て、店の名前を見上げる。
面構えと名前が、ミスマッチというか逆にマッチしているというか。
なんだか入り込んだら本当に黄泉の世界へ迷い込んでしまいそうだ。
唯一ある大き目の窓ガラスも、曇りガラス風な上に厚めの白いカーテンが掛かってて中がほとんど見えない。
……っていうかこれ、営業してるのか?

「一応『OPEN』にはなってる……な」

興味が湧くと、どうにもならない。
いかにも入っていく人がいなそうな店内に、俊介は足を踏み入れた…。

ギギィ……

木が軋む様な音を立てて中へ入る。
と、外見とは打って変わって中には普通の光景が広がっていた。
アンティーク系の雑貨屋だろうか。
古そうな置物から小物まで、結構な種類が鎮座している。
何となく時代に取り残されてる感はあるけど、これはこれで懐かしさを感じるものもある。
あの外見の所為で、損をしているかのようだ。

「へぇ、結構いろんなのがあるんだな」

店内を見回すと、俊介のほかに客はいない。
と言うか、自分以外誰もいないではないか。
店主らしき人物もいない……本当に、営業中?

「ん、なんだろう。これ」

ふと、あるものを見つけた。
細長い筒のような形をしていて、黒で縁取られた底の真ん中には穴が開いている。
これは、万華鏡ではないか。
和紙のようなもので形取られ、真ん中にはラインのようなものが一本。
それら色違いのものが六個置いてある。
俊介はそれらが妙に気になった。

「ソォレハナァ…………」
「うわぁッ?!」

突然背後から声が掛かった。
ビックリして振り向くと、背の曲がった老人が杖を持って立っているではないか。
ついさっきまで誰もいなかったはず……歩いてきたような気配もない。
こいつ……できる?!

「そぉれは、幻想鏡というものじゃよ」
「げ、幻想鏡? 万華鏡じゃなくて?」

手に持っていたものを見つめながら言う。

「んにゃ、違う。幻想鏡は幻想鏡じゃ」
「……で、万華鏡とどう違うの?」

なんだか不気味な雰囲気を持つ店主らしき老人に尋ねる。
ふぉふぉっと笑うと、俊介をまじまじと見つめこう答えた。

「こぉれはな、見た者の心を映すモノじゃ」
「見た者の……心?」
「そう、言われておる。本当かどうかはわからんがのぉ。ふぉっふぉっふぉ」

それだけ言うと、ふらりと店の奥へと歩いていってしまった。
取り残された俊介。手には幻想鏡。
しばらく老店主の歩いていった先を見続けていた俊介は、幻想鏡へと視線を落とす。
あの人の言ってることが確かならば、これを覗き込めば自分の心を映すらしいが……。

「なーんか、胡散臭いな」

そうは言っても、気になるものは気になる。
万華鏡と同じ感じかなと思うと、片目を瞑って覗き込み、幻想鏡をくるくると回し始めた。

「……なんだ、何も見えないじゃん」

覗き込んでも、何かが見えるどころか真っ暗で何も見えない。
やっぱり思ったとおりの胡散臭いものだったのか。

「(……それとも、他のやつだったら見えるのかな)」

今持っていた幻想鏡は真ん中に黒いラインが入っていた。
まだカゴの中には赤・茶・オレンジ・ピンク、そしてオレンジとピンクの二本のラインの入った幻想鏡が置いてある。
俊介は…………










も ど る