天使のゆびきり 〜浜辺の舞〜




 まだ7月にもなってないって言うのに、空はこんなにも蒼く、そして高いものなのか!
 雲がほとんどない空は、太陽が一番輝いて見える。
 まぶしく光る太陽に、思わず手でかくして目を細める。
 いやもう、こりゃ初夏といわずに十分夏だな。
 海だって水着持ってくれば入れそうだ。

「それぇ!」
「ひゃっ、もー彩音ってば」

 双子の天使が波打ち際で踊ってる。
 履いてきたサンダルを脱ぎ捨てて、裸足で海に浸かってはしゃぐその姿は、誰が見たって楽しそう。
 かく言う俺は、それを浜辺で座りながら眺めてる。
 ……怠け者じゃあないぞ?

「無邪気って、言うのかねぇ」
「そーたさ〜ん、総太さんもこっちに来て遊びませんか〜?」

 御菜が笑顔で言う。

「いや〜俺はここで見てるだけで十分だ。彩音を構ってやってくれや」
「あたしゃ寂しんぼじゃないわよー!」
「細かいことは気にするなー」
「するわ〜!」

 ホントに、彩音さんは元気いいこと。
 御菜も普段と違って楽しそうにしてるなぁ。
 いや、別にいつもはつまらなそうにしてるって言ってるんじゃないぞ?
 なんていうか、こう童心に返ってはしゃいでるって言うか、こう……ねぇ?
 つまりあれだ、見て察せ! うん、こういう事だ。

「あ〜」

 ドサッと、寝転んでみた。
 太陽が目線の真上にある。
 とってもまぶしい。
 むしろまぶしすぎ。

「………………」

 無言で起き上がる。
 お帰りなさい海の景色ってやつ。
 う〜ん、寝転ぶには日よけ傘がいるな。

「にしても、いい所だなここは。ちょうど人も少ないし。意外と穴場だったりしてな」

 俺たち以外にほとんど人がいない。
 まるで貸しきり状態!
 ぞんぶんに楽しめると言える。
 やがて、一通り遊んできた御菜と彩音がやってきた。
 御菜が彩音の分のサンダルを持って、彩音は濡れたスカートの端を絞っていた。
 方や御菜も、全く濡れてないかと思えば髪の毛とか服の一部が少しだけ濡れて、太陽の光を浴びてキラキラと光ってる。
 そこまで水を掛け合っていたのか……。

「やっぱり、海はいいですね。思わずはしゃいじゃいました」
「右に同じく〜」
「お疲れさん。どうだ、こっちの海は?」
「ぜ〜んぜん違わないよ。やっぱり何処にいっても海は海なんだね、御菜」
「はい。もう私幸せです〜」
「御菜、海好きなのか?」
「小さい頃からよく遊んでましたからね」
「うむ、いい事だ」

 一人頷いて感心してる俺がいる。
 どんなキャラだよ……

「なんだか、遊んだからお腹が空いちゃいました」
「あぁ、そういやもうすぐお昼の時間だな。どうするか、食べに行くか? それとももう旅館に行ってそこで食べるか?」
「ん〜、なんかもう少しだけこの辺歩いてみたいなぁ。近くに何か食べるところあるかもしれないし」

 彩音が海岸通りを指さしながらいった。
 そうだな、すぐに旅館向かうのももったいないし、もう少し散策でもするか。

「んじゃ、それで決まりね〜ん」
「また読んでたのか……まぁ今回はいいけどな。じゃ、ちょっと探検気分で歩いてみるか御菜」
「はいっ」

 手や足についた砂を払って、砂浜を後にした。
 観光地でもあり、また港町でもあるここは、いろんな所で魚が売られてる。
 干物だったり、海藻類が売られていたり。
 御菜が開いて干してある魚を見て驚いてたっけなぁ。
 実際に干してるところを目の前で見るのは初めてだとか。

「いつもはお店で売ってるのしか見ませんからね」
「でた、主婦の一言! これは何ていいますかな総太さん、らぶらぶですか?」
「うるさい」
「おぉっと、こりゃまた失礼〜っと」
「ったく……」
「やっぱり、取れたてのお魚を売ってるだけあって、鮮度も抜群だなぁ」
「あ、あのぉ御菜さん?」

 御菜は御菜で、彩音の言ったとおりすっかり主婦モードに……

 結局、お昼は近くの売店で買ったおにぎりを持って、パンフレットに載ってた海を眺められる見晴らしの良い公園で食べることになった。
 ピクニック気分みたいで、いいだろ?

「たまには外で食べるご飯って言うのもいいな」
「そうですね〜。景色もいいですし、ご飯も美味しく感じます♪」
「これが旅行の醍醐味だよな」
「うんうん。これでおにぎりに入ってる具がお刺身とかだったら最高なんだけどね〜」
「いや、そりゃ無理があるだろ……」
「う〜ん。残念」

 そう言いつつも、実際は美味しそうにおにぎりをパクついてる。
 と言うかすでに2個目を食べ終わろうとしてる。
 そんなに腹減ってたのか…?

「うん。朝ごはん食べたけどねぇ。空く時は空くでしょ〜」
「……まぁな。そうだよな。空く時は空くし、読まれるときは読まれるんだよな。彩音クン」
「そそ、そういう事。だから細かいこと気にしちゃダメたぞー総太さん」
「へいへい。せいぜい太らないようにしてくださいな」

 そして俺も持ったままだったおにぎりを一口。
 ん〜、手作りじゃないとはいえ、気分的な問題なのかな? 美味しく感じられるわけで。
 しばし三人でおにぎり頬張りながら、キラキラ光る海を眺めてた。
 いやいや、まったくもって平和なひと時だ。
 ちょっとだけ暑く感じるけどピクニック気分にはもってこい。
 こうして普段知らない場所に来るって言うのもまたいいもんだねぇ。
 改めてこの旅行が当たった事を嬉しく思うねぇ。
 もう少ししたら、いよいよ宿のほうに行ってみるかな?

「なぁ御菜」
「なんですか総太さん?」
「他にまだ行ってみたところとかあるか? なければ宿に向かってみようと思ってるんだが」
「行って見たいところ……う〜んそうですね。せっかく来たんですから、ここに大きく載ってる灯台を見てみませんか?  ここから歩いてそう時間もかかりませんし」
「あー。そういや遠くから見ただけで行ってないな。さっきだって下の洞窟っぽいところに降りたし。んじゃ食べたらそこに行ってみようか」
「はいっ」
「彩音もそれでOK?」
「む、むぐむぐ〜」
「……食ってからモノを言え。急いでないから」
「むー…………おっけーよん」
「うい。んじゃ次は巨大灯台に行ってみようの巻だな」
「まき?」
「あいや、気にするな。ちょっと冒険の章風に言ってみたかっただけだ」

 しばらくして、公園を後にし灯台の方へ向かって歩き始めた。
 迷うこと? んなコトはまずないね。
 何故って、そりゃもちろん灯台の大きさが通常の倍位あるんだぜ。
 そんだけ大きなのが建ってれば、イヤでも目立つし。
 だからそれに対抗するような大きな建物がないこの場所では、離れててもどっちにあるか位はすぐ分かるってワケ。
 一直線じゃないだろうけど、この先に見えるは目的の灯台。
 ここから見てこの大きさなんだから、相当でかいんだろうな。
 倍とかじゃすまなかったりして?
 中に入れるらしいけど、一体どうなってるのやら?
 うーむ、なんだか小さい頃に家族で東京タワーにいった時みたいに楽しみになってきたぞ。
 高いところ、嫌いじゃあないから。
 と言うか嫌いだったらここまで空飛んでこれないもんな。うん。

「ま、絶対に迷うわけないよな。これだけの大きさ。そして観光スポットだもの」
「他にもたくさん人は来ますからね」
「後についてけば、到着ってかぁ」
「だねぇ」

 と言うわけで、灯台に到着!
 俺たちは三人揃って空を、いや上を見上げていた。
 まず一言言いたい。 でけぇ……つか、たけぇ……
 ホントにこれ灯台か?
 実は灯台の姿した城ですって言われても俺信じられるぜ?
 これなら、夜で遠くからでも灯台の灯ってやつはきっと見えるんだろうな。

「御菜、大きいね」
「大きいねぇ……彩音」
『はぁ〜』

 双子が揃って声を上げる。
 彩音はいいとして、御菜まで口をポカンと開けて見るその姿はいろんな意味で新鮮だな。

「こら、私はいいってどういう意味なのさ」
「言ったままの意味だ。気にするな」
「総太さんは私をどういう風に見てるのかねぇ」
「こういう風に。……んなコトはどうでもいいとして。中に入れるから早速入ろうぜ」
「む〜、はぐらかされた」

 後ろで膨れてる彩音を流しつつ、御菜の背中を押してレッツ侵入。
 でもさすが観光地。入場料がタダとはね。
 こんな大きいんだから維持費とか……俺、こんなこと考えてていいのかな。
 あーもーいいや。俺だってタダで入れて嬉しいんだから喜ばなきゃ。いえ〜い。

「総太さん脳内で暴走中?」
「うるさい」

 階段じゃなくて、灯台の真ん中を貫いてるエレベーターで上へ上へと上がってく。
 当たり前だな。全行程階段だったら高すぎるて。
 30秒ほどで展望台に到達した。ドアが開いた瞬間に広がる太平洋〜。
 いやはや、これは凄いな。さすが巨大灯台ってか。
 展望台は灯台の外壁に張り出すような感じで一周してるから、海が見える反対側はもちろん陸だ。
 観光地だけあって、いたるところに旅館とかホテルなんかが見える。
 俺たちが行くところもばっちり見えてるし。確か全室海が見えるって書いてあったから、きっとここも見えるだろう。

「この上ってもう本物の灯台なんでしょ? なんかすぐ下にこうやっていると自分が灯台になったみたいだよね」
「よし彩音、光照らしてみろ。遠くまで届くように! そして発光信号のように!!」
「んな無茶言わないでよ」
「うふふっ……それにしても、本当にいい眺めですね。空を飛んでみるのとはまた違った美しさがあって」

 手すりに片手を乗せて、海風になびく長い髪を抑えようとする仕草をする御菜は、おもわず見とれてしまうくらい似合ってた。

「ほんとうに、良い所ですね……」
「………………」
「ん? どしたの総太さん。御菜の方をじっと見つめちゃって」
「えっ? あぁいや。なんでもない」
「う〜ん?」

 すっかり景色に見とれてる御菜と、すっかりその景色を見てる御菜に見とれてる俺と、なんだろうと考え込んでる彩音。
 それぞれここでの思い出を脳裏にしっかりと焼き付けて、灯台を後にした。
 次に向かうはいよいよ宿。
 時間もちょうど頃合だ。
 そうだな……夕飯前に温泉に浸かるって言うのもいいかもな。
 今回の旅行のメインイベントが、始まりってワケだ。
 さてさて、どうなることやら???

「どうなるって、なにが?」
「それはお楽しみだ。……って言うか、またか!」



つづくっ!



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