天使のゆびきり 〜旅行だ準備だ〜




「………………」
「………………」

 話す会話もなく、俺と御菜は家へと帰ってる。
 御菜の手には大事そうに掴む大き目の封筒。
 いや、封筒ってよりもこりゃ賞金袋だな。
 タイトルの如く、でかでかと“一等 温泉旅行券”なんて書かれてら。
 そうだよな……当たっちまったんだよな。

「ふっ……」
「総太さん?」

 思わず漏れた含み笑い。
 御菜が不思議そうにこっちを見てる。

「いやな。まさか一等当てるなんて思いもしなかったもんだから。運ってのは恐ろしいなって」
「一等ってそんなに当たらないんですか?」
「そ、そりゃあもう。ポンポン出てきたら一等の意味ないし、なにより商店街が破産する」
「そう言われると……そうですね。あははは…」
「だから、これを当てた御菜は英雄モンだ」
「えっへんです」
「うむっ……って事は、旅行に行く準備とかした方がいいのかな。なぁ御菜」
「はい?」
「期限とかってあるのか? その旅行のさ」
「ん〜、ちょっと待ってください。えっと……」

 中からなにやらいろんな紙を取り出して目を走らせる。
 ふむふむ……と頷いてると、どうやら見つかったらしく目で追いながら言った。

「日曜までですね」
「え? 日曜だって」
「はい……これだと明日行くしかないみたいです」
「うっわーめっさ期限短〜。さすが商店街福引き……即効果てき面かよ……」
「どうします?」
「どうするもなにも、行くっきゃないだろ。せっかく当てたんだから楽しまないとな。……あー、じゃあ帰って早速準備とな。忙しいなぁ」
「お金とか、掛かりますよね……」
「まぁ肝心の宿代はタダだし問題はないけど……交通費その他、だな」
「どうしましょう……」

 当然だが、一人暮らし……いや、実質二人暮しか。
 学生身分な俺らには余分な金なんてない。
 しかも、日程に余裕があるならまだアレでも、期限が明後日までってなると……なぁ?
 そんなすぐにポンとお金は現れないのだよ。
 う〜ん、なんか良い案がないものか。



「それじゃさ、飛んでいきゃいいじゃん。ね、御菜」

 家について、今日もまた部屋に潜伏してた彩音を一度とっちめてから、話を戻してみた。
 ……一応彩音にも言ってみたら、即同行決定とな。
 そこで彩音が言ったのが今の案だ。

「私たち二人で総太さん連れて行けば、交通費ってのも掛からないし、なにより一番早く着くと思うけど」
「う、うん……それはそうなんだけど」
「問題あるかな?」
「誰かに見つからない…かな?」
「見つかる? チッチッチ。甘いなぁ御菜は。砂糖みたいに甘い。コンデンスミルクみたいに甘い。練乳みたいn」

 ごんっ☆

「……痛い」
「真面目に話せ」
「分かったわよぅ……おー痛た。 だからね、結界張ればいいのよ。他の人に見つからないように」

 あっ、と呟いて、ぽんっと手を打つ御菜。
 ……もしかして、今気がついた?
 ちなみに俺には全く理解できない会話だけどな。
 結界とな? まるで魔法だな……。

「魔法じゃないの。わたしたちゃ魔女かい」
「…毎度ながら人の心を read すな彩音」
「あ、英語…」
「んなこたぁどうでもいいんじゃい!」

 あぁ、彩音が絡むとどうしても話が逸れていく……。

「と、とにかく! 話を戻して、彩音の案で行けば問題はないんだな?」
「え、えぇ……それならば問題はありません」
「よし。じゃあ移動手段はなんとかなった。次は荷物の準備だな。着替えとかは各自準備だからいい。後は……」

 ぐうぅぅぅぅ〜……

「ぁ………………」
「まぁ……………」

 俺の腹の虫が盛大に食べ物を要求した。
 うわ、なまじ真剣な話してただけに恥ずかし……

「……後は、本日の夕飯をしっかりと食べる。だな…」
「あ、あはは……」
「お腹は素直って事よね。総太さん」
「…う、うるさぃ」
「そ、それじゃあ私お夕飯の準備をしますね」
「おっおぅ……よろしく…」

 己の欲に忠実な腹がなんとも恨めしい瞬間…。
 あぁーそれにしても、お金どうするかな。

「ん〜……」
「なになに? 総太さん今度は何の考え事? ひょっとして夕飯の献立????」
「っさい。少し黙れ彩音。またとっちめるぞ」
「ぶぅ〜」
「あ、彩音……ちょっと手伝ってもらえる?」
「はいさ〜っ」

 彩音が台所へ向かう時に、声をかけた御菜が小さく頭を下げてた。
 いやまぁ…うん。俺だって怒ってるわけじゃないからな。
 さっきの恥ずかしさとかが尾を引いてるって言うか……な?
 察してくれってやつだ。
 で、俺はまたさっきの考え事を再開。
 いくら交通費とかが浮いたからって、流石に全然お金を持っていかないのは困りもの。
 お土産とか、買うだろうからなぁ。
 やっぱここは親にも送った方が……あ。
 親、かぁ。

「……電話、してみるかな」

 ある事を思いついた俺は、コードレスの受話器へと手を伸ばした。



「それでは、頂きます」
「頂きま〜す」
「っす」

 そして夕飯の時間。
 いつもの事だけど、やっぱり御菜が作るご飯は美味しいわけで。
 さっきまで盛大に要求してた腹の虫も、満足げな様子で音無しの構えを見せてる。
 まったく、自分で言うのもアレだが調子のいい腹だ。

「あぁ、そうそう。お金のことについてだけど」
「はい」
「目処は立った」
「え?」
「明日銀行に行けば全て解決だ」
「ぎんこう……ですか?」
「おぅ!」

 まぁ簡単な話だ。
 珍しく家に電話。
 福引きで旅行券が当たったから友達と行きたい。
 だけど急な話でお金がない……
 たくさんお土産買うからイロよろしく、ってな感じで……。
 それで即座に了解するウチの親も親だけど。
 そういう訳で、旅費をゲットしたわけなのだ。

「なるほど……私たちは友達なんだってさ御菜」
「えっ…………そ、総太さん…」

 そ、そんな…! と言いたそうな顔の御菜。
 持っていたお箸がポロリとテーブルの上に落ちた。

「なっ!? あ、彩音。キサマまたやりやがったな!! 御菜も、決して本心って訳じゃないからな? な?」
「うぅぅ……」

 あわわ……なぜこんなことに。
 それもコレもみんな彩音のせいだな。
 後できっちり落とし前付けておかねば……

「みな〜スマン。俺が悪かったって。アレは何ていうかさ、親へのごまかしと言うかカモフラージュって言うか……なぁ。そういうのなんだよ」
「……くすん」
「ああぁぁ…………彩音、マジで覚えてろよ」
「総太さん総太さん」
「なんだよ」
「御菜、よぉ〜く見てみて」
「あ? よぉーく……………ぁ」

 泣いてる、かと思ってた御菜。
 だけど、よく見てみると……口元が泣いてない。
 って言うか、笑ってる?!

「み、御菜……?」
「…えへへ、です。演技しちゃいました♪」

 顔を上げた御菜はニッコリ笑って控えめに舌を出す。
 …不覚にもその表情に一瞬ドキッとしてしまったわけで……。
 まーあれだ。高麗姉妹にまんまと遊ばれた俺はこう叫ぶしかないワケで……。


「Oh!! ジーザスッ!!!」



つづくっ!



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