天使のゆびきり 〜当たっちゃった……〜
「それじゃあ、頂きます」
「おぅ、ど〜んといってくれ!」
「すいません。でも、やっぱり私もお金を払った方が……」
「いやいや、御菜はなんにも気にすることなっしんぐ! こういう時こそ男の出番だし、なにより誘ったのはこの俺。だから、全然お構いなしっ」
ニッと笑いかけると、御菜も笑い返してくれて、もう一回頂きますって言うとゆっくりと食べ始めた。
そうそう、俺たちが来てるのは商店街にあるドーナツ屋兼喫茶店。
結構うまいと評判だったから、こうしてきたわけだ。
流石にこういうお店だけあって、店の中にいるほかのお客は女の人がほとんど。
数少ない男勢は……きっと彼女と来たってやつだな。
俺だってまぁ、そんな所だ。
「うまいだろ?」
「はいっ美味しいです」
「なんかクラスの中で話に上がってたことがあってさ、一度来てみたいと思ってたんだよ」
「そうなんですか〜。でも、そんなお話は私は聞いたことありませんねぇ」
「そりゃあなぁ。御菜が来る前だったからね」
「あっ…なるほど」
ペロッと小さく舌を出す。
なんだかこう言う何気ないようなしぐさでも、俺は御菜がすっげー可愛らしく見えてくる。
歳相応って言うか、ちょっと幼さを残したような顔立ちがまた、ね。
……あー、一応言っておくけど。 彰と一緒にはするなよ?
俺にそんな趣味はない。御菜さえいればそれでいいんだから!
他に目はない!
「総太さん?」
「ん、あ?」
「どうしたんですか? 何か呟いてたみたいですけど……ドーナツ、美味しくなかったんですか?」
「いやいや、そうじゃなくてさ。ただちょっと、ね……」
「???」
うんっ? と首をかしげた。
このしぐさもまた……落ち着け、落ち着けって俺。
「美味しぃ〜♪」
零れんばかりの笑顔って言うべきか。
それとも幸せ一杯の微笑というべきか。
どっちにも取れるくらい、御菜は幸せそうにドーナツを食べてる。
さっきまで落ち込んでたけど、それを忘れさせるくらい輝いてるな。
俺も、見てて嬉しくなりそうだ。
自分のドーナツを手にとって一口かじる。
うん、確かにうまいな。
それからしばらくは、御菜と談笑しながら初めてのデートみたいなのを楽しんだ。
「総太さん」
「ん、どした?」
「あれ、なんでしょう?」
御菜が指さす先。商店街の一角に立てられた特設テント。
並んでる一番前の人が、なにやらガラガラまわしてる……ん、福引きか。
あぁ、そういえば……
「これ、だよな」
「それは……?」
「さっきドーナツ買っただろ? その時にレシートと一緒にこれ渡されてさ。一枚で一回。それが二枚あるから……みな、やってみる?」
「えっ……あれを、ですか?」
「そそ。福引きって言うやつ。ただあれをガラガラまわすだけ。それで、中から球が出てくるから、その出てきた色でもらえる賞品が変わる。金の玉が出たら大当たり〜」
「はぁ〜」
「一等は……ほぉ、温泉旅行か。商店街の賞品にしてはいいやつだなぁ。まぁ当たらないか」
「総太さん、私やってみたいです」
「よしっじゃあやってみるか」
「はいっ」
こうして、御菜にとって“初ガラガラ”が始まった。
…ネーミングについては気にしないでくれ。
まずは、手本とばかりに俺が“ガラガラ”をまわす。
回ると同時に中で球が動いてる音が響き渡る。
この時に『ガラガラ〜』って鳴るから俺はそう呼んでるけど……名前なんてんだろうな。
二、三回まわしたところで、出口からコロンと球が現れた。
ん、この色は……!?
「はい、残念賞〜」
ポケットティッシュを渡された。
むぅ……半分予想できたとはいえ、なんか悔しい。
後は御菜に託すか。
「頑張れ、御菜」
「はいっ。ではいきます!」
勢いよくまわす。
いつもより大きな音が鳴り響いて、コロンと球が飛び出した。
「あ〜、惜しかったね。残念賞だ」
はい、と手渡されるポケットティッシュ。
こうして、二人の挑戦は惜しくも終了―――
「あぁ、ちょっと待って!」
歩いていこうとするのを呼び止められた。
なんでしょう?
「おじょうちゃん、もう一回もう一回」
「え?」
「福引き券二枚持ってきたのに一回しかやってないでしょう」
「えっ……二枚、ですか?」
「ほれ」
そう言って見せたのはさっき御菜が手渡した福引き券。
もとは俺がもらったやつだけど……どうやら一枚多くくっ付いてきたようだ。
「ラッキーだな御菜。もう一回だ」
「は、はい。頑張りますっ」
両手で小さくガッツポーズを作ると、再び“ガラガラ”の前に立つ。
一瞬取っ手を掴むのをためらったけど、うんと頷くと取っ手を掴み、今度はゆっくりと回した。
…なかなか玉が出てこない。
見てる俺も、回してる御菜も、その視線は現れる球に注目していた。
そして、ついに…………。
カタン…。
受け皿に球が落ちた。
外に出てきたそれは、夕日を浴びて鈍く輝く。
そしてその色は、夕日に負けないくらい黄金に輝いていて……て?
おう、ごん……だって?
「あ…………」
「ぁ…………」
一同、落ちた球をじっと見つめる。
そして、係りの人がすぅ〜っと息を吸い込んだかと思うと、
「おぉ〜〜〜〜〜〜〜あたぁりぃ〜〜〜〜〜!!」
と、高々に叫んで置いてあった鐘をブンブン振り回した。
商店街に響く鐘の音。
なにかと集まる人の群れ。
俺たちは、一瞬何があったのか分からないままその中心にいたのだった……。
……これ、当たっちゃったの?
つづくっ!