6月もだいぶ深まってきた。
まぁこの時期は梅雨真っ只中なワケでねぇ。
先週は中休み、と言った具合に晴れが続いた。
御菜がやってきたのもそんなときだった。
そして週が明けてみれば……
ザアァァァァァァァァー。
「………………」
空は真っ暗〜の、バケツをひっくり返したような〜の大雨。
オマケに視界も不良、と。
モヤでもかかったみたいに遠くがボヤけて見える。
そんでもって、今日は本来なら学校がある日なのだが……
「なんか、あれだな」
「どうかしましたか」
「んいや、やる事ないなーってさ」
窓の外を見ながら何するとでもなくボーっとしてる。
御菜も外に干せない洗濯物をどうしようかと悩んでた。
さっきも言ったとおり、本来なら学校がある。
そりゃつまるところ平日なワケだ。
時間も短い針が“10”を指そうかという所。
なのに俺達は家にいるんだ。
サボってるわけじゃない事を最初に言っておくぞ。
じゃあなんで家にいるかって?
んー、つまりはなぁ……
「大雨でも学校って休みになるんだな」
「そう、みたいですね」
「まぁ今回は特別だろうな。事情が事情だし……」
つけっぱなしのテレビからはその理由がずっと流れてる。
一面に広がる土砂、折れた木々。
崩れかけ、だらんと垂れ下がってる線路。
その隣を併走してるはずの、今は埋まった幹線道路。
二日経ち、なおつづく雨は思わぬ副産物をよこした訳だ。
お陰で学校は臨時休校。
俺みたいに近くから通ってれば問題はないだろうけどな。
人によってはそこそこ遠くからも来てるわけで。
先生とか他の生徒とかさ。
その唯一の交通機関が塞がったらそら来れないわな。
……にしても、地方局でもないのによくもまぁ全国に流してるよ全く。
ここ知らない人にはサッパリだろうに。
はぁ。
「この雨じゃ外にも出られないしなぁ。ホント、やる事がない」
「どうしましょうか……」
「御菜は洗濯とかまだあるんだろ?」
「はい。でも、この雨じゃ干せませんからどうしようかなって。一応乾燥機にはかけたんですけどね」
「だったら部屋干だな。ちょっと湿っぽくなるけどしょうがないだろ」
「そうですね。じゃあお部屋の中に干します」
「手伝おうか?」
「大丈夫ですよ。総太さんはゆっくりしててください」
「むー、ゆっくりしててもなぁ。やる事がいっこうにできない……」
普段は学校行くのがメンドイとか言ってるけど、いざ急に休みになればこの有様。
寝てるってのも芸がないからなぁ……ホント、どうしたものかね。
「彩音でも呼ぶか?」
「彩音、ですか」
「ヒマだし。退屈だし。こういう時のって感じが今した」
「彩音なら今日は居ませんよ」
「え、そうなの?」
「家に帰ってます」
「むー、そうか……おもちゃは不在か」
「そ、総太さん……」
「あ〜、ヒマだ!」
ベットにごろんと寝転んで、ただ天井を見つめる。
そのうち御菜も部屋干しが終わって、次は何をしようかと考えはじめた。
外は相変わらずの大雨。
こうして家に居ても案は浮かんでこない。
「………………」
「………………」
テレビも消して、いつしか静かな空間が部屋を支配していた。
外の雨の音と、カッチコッチと時計の進む音だけが聞こえてくる。
あれから10分と進んでない。
「総太さん」
「んー」
「お隣に行ってもいいですか」
「おぉ〜」
寝たまま横にズレて、その隣に御菜が腰掛けた。
「御菜も座ってるのもアレだし、寝転べば」
「そうですか?」
「昼間、こうしてゴロゴロするのもたまにはオツでいいだろうて」
「ん〜、ではお言葉に甘えてっと」
これでいつも寝てる時と同じ状態。
ベットの上にそのまま寝転んでるわけだから、掛け布団も体の下にある。
んな事はどうでもいいか。
問題は今何をするかだな。
「ん、どした?」
御菜が俺を見ながら微笑んでる。
「うふふ、総太さんが近くにいるなぁって」
「そりゃ一緒に寝転んでればなぁ」
…そう言われるとちょっと恥ずかしい。
「そういえば……」
「うん?」
「もう一週間が過ぎたんですね。私が来てから」
「……あー、そういえば」
「なんだかあっという間でした。総太さんはどうでしたか?」
「俺もそんな感じかなぁ。最初の三日はいろんな事がありすぎて振り回されてるって感じだったけど、今は平常かも」
「学校にも慣れましたよ」
「友達出来たか?」
「はい、クラスの人たちとは仲良くなれました」
「変わり者揃いのクラスだけど、面白いだろ?」
「そうですね。担任の先生も面白い方ですから、毎日が楽しいです」
他は知らないけど、ウチのクラスは先生含め変わったやつが多い。
細かい事は気にしないと言うか、おおらかと言うか。
妙な団結力って言うのかなぁ。
言葉に例え辛いのが歯がゆいな。
ウチのクラスに、俺と御菜含め4名が同棲と言うのをしてる。
しかしクラス外にそれを知るものはいない。
ほぼカンペキな緘口令が効いてるから、かね。
さっきも言った、細かいことは気にしない体質がそうさせてるのか、先生の妙な信頼がそうさせてるのか……。
まぁ他にもいろいろあるけどそれはまたの機会に。
…とにかく、御菜はそんなクラスの中でもすんなり受け入れられたわけだ。
恐らく、最初の出来事からして御菜(高麗)は俺(磯原)の彼女と認識されたはずだ。
……いや、それが変ってワケじゃないんだけどさ。
余計なイザコザ起こらなくて俺は嬉しいよ? うん。
「みんな、どうしてますかね〜」
「んー、俺達と同じく暇してるんじゃん。もしかしたら喜んでるかもな。特に担任」
常々、サボりてぇとかめんどくせぇ、とか言ってるからなあのティーチャー。
やる気あるんだろうかね?
「俺もなんだかんだ言って楽しんでるのかもな〜」
「えっ…?」
「いや、なんでもない。そうだ御菜、お茶でも飲むか?」
「えっあ、はい」
「なら入れてきてやるよ」
「あぁ、それなら私が……」
『あっ…………』
同時に動こうとしたのもだから、体を起こしたとたんに目の前急接近状態になった。
うっ…すぐ目の前に御菜がいる……。
もう慣れてきたとはいえ、不意打ちでこうなると心臓ドキドキ言うわな。
「み、御菜……」
「総太さん……」
自然に、二人の距離が短くなって、俺の左手が御菜の頬に――――
ガチャッ
「たっらいま〜!!」
『〜〜〜ッ!??!』
いきなり声が掛かって、あわてて距離を離してその方向を見る。
そこには彩音が……。
「いやーすっごい雨だね。さっき帰ってきたらこれだもん。ビックリしちゃった〜……って、どうしたのお二人さん。そんなかしこまった座りかたして?」
「いいいいや、なっなななんでもないぞ? なっ御菜?」
「えっあ、はい! そうです。なんでもないんです!」
「えぇ? どうしちゃったのそんな……ん?」
彩音がこっちを見ながら何か考える…………や、嫌な予感が。
「…はっは〜ん。そういうことかぁ。もしかして今わたしが来たのって、とぉーんでもなくお邪魔だったとか?」
「えぇ!?」
「お楽しみ中のところ申し訳なかったっす!」
「いやだから、違うっての」
「そうよねぇ。御菜と総太さんは夫婦なんだし、そんな営みも自然な事で……そんな場所に土足で踏み入るのはまさにヤーボってものよね」
「だからそんなんじゃないっての! つか、ヤーボって戦闘爆撃機だっての。それを言うなら、野暮だ、野暮!」
「あ、そだった。あっはっは〜」
あっけらかんと言い放つ彩音。
くっ……わざとか!?
「あ、でもさぁ」
「なっなんだよ」
「ヤーボってドイツ語だよねぇ?」
「カンケーないっつの!!」
彩音に振り回されてる……
あぁもう、一旦何の用なんだよ。
「……で」
「え?」
「一体我が家には何のようかね彩音クン?」
「ん〜? 帰りにちょっと寄ってみただけ〜」
「……はぁ〜」
んな事だろうと思った。
でもまぁ、ちょうど暇してたところだしタイミングがイイといえばそうかもしれない。
「あ、あれ。今日は天誅〜とかってないの?」
「ん、どうした。やってほしいのか?」
「いや、それは激しく遠慮したいけど……珍しいかなって」
「たまにはそんな時もあるんだよ。こう雨が降ってるとな」
「ふぅ〜ん。そういうものなの?」
「おぅ。ま、そういうわけだ。ちょっとそこいらでくるくる回ってくれや」
「あたしゃ犬かい」
…やれやれ、結局彩音がきたらいつもどおりってか。
御菜の方を見て肩をすくめたらクスリと笑ってた。
これが一番なのかね。
「おーい、彩音さんよ」
「今度はなによ」
「昼、なにがいい」
「……え?」
「だから、昼だよ。昼ごはん。いらないか?」
「いやっいるいる頂いちゃう。もう何でも頂きます!」
「よし、そうこなくちゃな。雨だからってしんみりしててもどうしようもないからパァッといこうというわけだ。な、御菜」
「ふふっそうですね。だた……」
「ん、ただ?」
「さっきのはちょっと残念だった…かな?」
「えぇっ!?」
いや、御菜さんそれは所によるつまり……?
「ん、なになにどったの? やっぱりさっきのってらぶらぶモード突入って所だったの?」
「だっ! もう彩音は!!」
「えっえぇっ!?」
そのすぐ後に彩音の悲鳴が部屋中に響いたのは言うまでもない。
ちなみにお昼が彩音希望のカレーだったと言う事も言うまでもない。
「……いや、それはちゃんと言ってよ。 ぁいたたたた……」
「余計な一言言うからだ。まさに天誅だな」
「カレーが美味しいのに……なんで頭がこんなに痛ぃんだろぅ……くすん」
つづくッ!
| N e x t | T o p |