大きな真っ赤な色した太陽背に、僕らは家に帰ってゆくよ?
な〜んてね。
いろいろあったけど、これ見るとホントに一日終わったなぁと。
ご苦労さん俺・お疲れさん俺ってか。
さぁ、家に帰ってのんびりと過ごすかぁ!
「今夜の晩御飯は何にしましょうか?」
「ん、そうだなぁ」
などど御菜と世間話をしながらドアの前へと歩いてく。
今日は疲れたからそれが取れるようなものがいいな。うん。
「疲れが取れるものにしよう」
「えっ、疲れが取れるもの…ですか? う〜ん、何か具体的なものを言ってくだされば嬉しいんですけど……」
ちょっぴり困り顔の御菜を横目に見ながら鍵を開け、ドアを開ける。
中には誰も居ないから返事なんて――――
『あっ。やっと帰ってきた。遅いぞ〜二人とも』
――――あった。
目の前でいかにも“暇”をもてあそんでそうな顔してる女の子が。
それを見た御菜なんて目をまん丸にして立ちすくんじゃってるよ。
「な、なんでいるんだ…?」
「なんでって、この前言ったでしょ? 今度隣に引っ越してくるからって」
「その隣に居るはずのチミがなんで俺の家に居るのかと聞いてるんだ。しかも鍵閉まってるのに」
「あっそういう事ね」
手をポンと打った。
つーか、そんな事で済ますな。
こっちから見れば大問題だ。
…まさかこの前よろしく鍵閉め忘れてたとか?
「壁通り抜けてきちゃった♪」
あー、音符マーク付けられちゃったよ。
何かもう、全然違う次元の話してる気がしてきた。
思わず頭がくらくら……いやや、ここで屈したら負けだ。粘れ、俺!
「あっそうか〜壁通り抜けてきたのか〜」
「そうそう。便利でしょー?」
「あぁ、そうだなぁ便利だなぁ」
がしっ。
「……あ、あれ?」
向こうさん突然首根っこ掴まれたものだからジタバタ。
何が起こったか分かってないみたい。
「ではその便利さを教えてもらったお礼にお兄さんが褒美をくれてやろうかねぇ」
「うっな、なんかすご〜く嫌な予感がするんですけど? 私、それいらないかなぁ。あ、あはは……」
「遠慮はする事なんかないぞ〜? 好意として受け取ってくれたまえ彩音クン」
「く、クーリングオフは……」
「受け付けておりません」
「あはは…は……み、御菜もボーっと見てないで少しは救援を……」
「ご……」
「…ご?」
「ごめんっ」
「うそぉーッ!?」
直後、外廊下全体に彩音の声が木霊した。
天誅だ。天誅。
「うぅ、まだ頭のてっぺんがヒリヒリするし……いたた」
「だ、大丈夫…彩音?」
「これが大丈夫そうに見える?」
「う〜ん、ちょっと見えそうにない、かなぁ」
「で、彩音はなんでまたこんな事を。最初見たときはマジで驚いたぞ」
「だからぁ、引っ越してきたからって言ったでしょ〜」
「それと俺の家にいた事の関連性は?」
「ん〜、ない」
「おいっ」
「う〜そ、嘘だって。でも引っ越したのはホントよ。ただちょっといたずら半分で勝手に入っちゃっただけでその……ごめんなさい」
ぺこりっと頭を下げた彩音。
ふぅ、素直に謝ったのでまぁ許してやるかぁ。
にしてもまさか彩音がいるとは思いもしなかった。
いや、普通に考えても思わないか。
俺この間から目の当たりにしているものは常識外なんだ。
「な〜んか、それあんまり嬉しくない言われようなんだけどなぁ」
彩音が俺の心を見透かしてるように言った。
……またか。
「勝手に人の心を読むな〜っての。自分でこの間言ってたじゃないか」
「まぁまぁ、私が大事と判断したからやっただけで、別に普段から開放しっぱなしってわけじゃないから」
「すっごく怪しいんですけど?」
「大丈夫ですって。私を信用して、ね?」
まだかなり怪しい気もするけど、このまま長引かせるのも悪いから頷く。
はぁ、なんだかんだ言ってあれからずいぶん時間経っちゃったなぁ。
この後、どうするかな。
「さて、この件はこれくらいにするとして、この後どうするか」
「私はお夕飯の支度をします。総太さんはゆっくりくつろいでいて下さいね」
「りょ〜。いつもいつもありがとう御菜」
「いいえ、私は好きな事当たり前のことをやってるだけですから」
「うっうっう、今時こんな健気な事を言うお嬢さんなかなかいないよ」
裏のない澄んだ御菜の笑顔が……あぁ、なんか感動を覚えてしまった。
よっぽど料理が好きなんだな。
「お〜お〜、お暑いことですなぁ」
「…何が言いたいんだね彩音クン」
「べ〜つにぃ〜。ただ仲が良くていい事だって。御菜の幸せ者〜」
「もう、彩音ったら」
そういう御菜の頬はうっすらと赤くなっていた。
しばらくしてから夕飯の支度が始まって、何もする事がない俺と彩音は居間でボーっと。
ん〜、ゆっくり出来るのはいいがやる事がなくなったな。
「ねぇねぇ」
「ん?」
「実際のところ御菜とはどこまでいったの?」
彩音が何か聞きたそうに話しかけてきた。
「え、どこって?」
「もうキスとかは済んじゃってるわけ?」
「はぁ?」
「ま、まだなの?」
「まだもなにも……何を言ってるんだ」
「うわぁ御菜可愛そ。キスぐらいしてあげなさいよ〜夫でしょ」
「夫ってなぁ。それに……キスキスって簡単に言うけど、そんな簡単に出来るかっての」
「恥ずかしい?」
「そりゃ、なぁ」
「うぶ」
「るせ〜」
どうも彩音に言われると自分が負けてるような気がして嫌だ。
何とか反撃せねば…。
「だったら、そう言う彩音はどうなんだよ」
「私?」
「俺に言うくらいなら自分は当然した事あるんだろ?」
「あるわよ。当たり前じゃない」
はっきりキッパリ躊躇なく言われた。
な、何なんだこの自信は!?
えらく得意そうな目でこっちを見るな。
そして、彩音の口から放たれた言葉は――――
「両親と、だけどね」
………………
すいません、コイツをもう一回ほど天誅してもいいですか?
いや、一回といわず二回三回とやりたいんだけど。むしろやらして。
「あれ、なんでそんな座った目してるの? 私何かヘンなこと言った?」
ど〜うやら彩音クンは自分の言動を理解されてないようだね。
これは今後のためとしても今のうちに直しておかねばならない。
いや、直さねば!
「て……」
「ん?」
「天誅〜ッ!!」
「う、うわぁ!? ちちょっと総太さ……いたたたたっ! 痛い、痛い〜!!」
片手で彩音のこめかみをガシッと掴んでギリギリと。
俗に言うヘッドロックだ。こりゃあ痛いぞ〜。
コヤツにはこれくらいやらないと効かない。うん。きっとそうだ。
たとえ違っても、俺が独自に効かないと判断でファイナルアンサー。
5秒位して力を抜いてやると、少し涙目になった彩音がこっちをじ〜っと上目遣いに見てきた。
「んもっそんな力いっぱいやらなくてもいいでしょ! ホントに痛いんだからぁ」
「天誅だ」
「しかもさっきとはやり方違うし。あぁ〜まだこめかみの辺り鈍痛が」
「これに懲りたら少しは反省しろよ〜。俺だってまだ会って2回目の、しかも女の子に手は上げたくないんだぞぅ」
「……最後の方、ぜっっっっっっっっったいに嘘ついてる」
「いえいえ、本当のことで」
「すっごく怪しい〜」
その後しばらくは本気じゃない遊び半分な睨み合い合戦。
目は睨んでるけど口元は笑ってる、みたいな感じで。
そしてそれは彩音の方から止めてしまい、ため息つきながら俺の隣へ座った。
「はぁ〜。まったく引っ越してきた日からとんだ災難でございますよ」
「偶然だな。俺もだ」
「これからもこういう事が続くのかぁ。なんか痛い思い増えそう」
「……え? ちょっと待て。今何て言った?」
「ん? だから、痛い想いが増えそうって」
「その前だよ」
「前……これからもこういうのが続くのかって」
「彩音、まさかまた来るのか」
「何よその言い方〜。来て欲しくないの? あ、さては私に見られては困る事があるんですなぁダンナ。例えば御菜とべ…」
「彩音クン、拳骨天誅とアイアン天誅どっちが好みだい?」
「……いえ、なんでもないっす」
「よろしい」
「総太さん、彩音とずいぶん仲良くなりましたね」
ここで夕飯が出来上がったのか、御菜がエプロンを外しながらやってきた。
台所からは何かを煮込んでいる音がする。
今日の夕飯はなんだろう。
「あ〜、まぁな」
「彩音って意外と人見知りする方なんですよ。でも、総太さんは大丈夫みたいですね」
「へ? 彩音が人見知り? 嘘だぁあり得ない」
「なによ、そのあり得ないって言うのは」
「こんな性格してるのに人見知りって、一体どうすればできるんだっての。俺は認めない」
「認めないって……私これでも人前で話すの苦手なんだからね」
「じゃあなんで俺は平気なんだよ。確か最初に会ったときから普通に話してただろ」
「ん〜、確かにそう言われてみればそうだったかも……やっぱ御菜の旦那さんだからかな。あはははは」
い〜み分からん。
やっぱりどうも彩音が人見知りって言うのは信じられないなぁ。
これが実際他の人のところ行ったらどうなるのか……。
「じゃあ、もうすぐお夕飯出来上がりますのでもうちょっとだけ待っていてくださいね。彩音はお夕飯どうするの?」
「もちろん頂いていきます〜」
「じゃあ御菜、うるさいの一匹追加で」
「うるさいって何よ、一匹ってなによー!」
…本日の夕飯は、にぎやかに過ぎていきましたとさ。
やっぱり彩音が人見知りってのは……信じられない。
「しつこいの!」
「だ〜から、人の心を読むな〜!」
「声に出てたわよ。声に」
「…え?」
つづくッ!
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