天使のゆびきり 〜仲直りっ〜








キーンコーンカーンコーン……

午後の授業から開放される音が響いた。
そう、この瞬間に俺たちは解放されるんだ!
学校生活という名の鎖から…!
長い一日だったよホント。
と言うかいろいろありすぎだ。
イベントてんこ盛りで疲れたっつーに。
これが毎日続いたらお兄さんマジで寝込んじゃいますよ?
さて、そんな事を考えてはいるが……

「………………」
「あ、あの〜。御菜?」

現実はあまりに非常だった。



「御菜。お〜い、御菜〜」

学校帰りの道。
先を歩く御菜を追いかける形で俺がいる。
どうしてこうなったか。
原因はあっさりするほど簡単だ。
さっきの昼休みの事なんだから…。
俺の得意技(例の三バカが命名)らしい教室間違えによって女子が着替えている教室を覗いてしまったがために、今こうなっている。
ここで一つハッキリさせておく事がある。
いや、ハッキリもなにも実際はないんだが。
俺はワザと間違えたわけじゃない。
本当に不可抗力なんだ。
それに、見たかったら御菜と一緒じゃなくて一人で……あ、いやなんでもない。 忘れてくれ。
とっとにかく! あれは事故だったんだ。
でも、信じてくれるとかそういう前に御菜が機嫌を損ねてしまった。
だから今困ってるんだ。
ズンズンズンズン進んでいくもんだから……。
あ、ここ曲がらなきゃいけないのに真っ直ぐ行っちゃったよ。
これじゃ道が違うって。
このまま行くと商店街の方に……。
今日の帰りは遅くなりそうだな。

「御菜〜。一つだけ言わせてくれ」

ピタリと足が止まった。
こちらを向いてはくれないが、まぁ止まってくれただけ嬉しい。

「なんですか?」
「根本的な事を一つだけ、な」
「………………」
「道、間違えてるから」
「……えっ?」

一転。
それまで黙っていた御菜が一気に普段のような感じに戻った。

「道、間違えちゃったんですか?」
「いや、御菜が先歩いて行っちまったから…」
「そ、そんな……じゃあ家は」
「あっち」

左側の方を指差す。
御菜が指の方向を見て、目を丸くしている。
もうさっきまでの状態ではなくなっていた。

「まぁ今から戻れば大丈夫だし、もど」
「すいません!」

御菜ががばっと頭を下げた。

「え?」
「私がくだらない事で意地を張っていたばかりに……」
「あ〜いやいや。御菜は悪くないって」
「ですがっ」
「まぁ……あれだ。そもそもの原因は俺にあるんだしさ。もしあんな事がなければこうならなかった。だから俺が悪い。OK?」
「……はあ」

頷いてはいるけど、どうも納得がいってないみたいだ。
私も悪いのに……と言いたそうな目でこちらを見てる。

「御菜は本当に悪くない。もし俺が昼休み逆の立場だったら怒ってたかもしれないし。そりゃあ……なぁ?」
「………………」
「今回のところは、それで納まってはくれないだろうか」
「……わかりました」
「ん、ありがとう。御菜」

そう言って、自分でも驚くくらい自然に御菜を抱きしめて頭を撫でていた。
突然のことだったもんだから御菜も最初は体を硬くしてたけど、すぐに安心したのか腕を俺のほうに回していた。
……傍から見たら、俺たち道の真ん中で何やってるんだかって感じだな。
でもいい。気にするもんか。人がいないんだから尚更だ。

「でも……総太さん」
「ん?」

その格好のまま御菜が顔を上げて言った。

「男の人って、みんなそうなんですか?」
「え、なにが?」
「その……女の人の下着とか、見たがるものなんですか?」
「えぇ!?」

ちょ、これは……
よもやこんなストレートな質問が来るとは。
ま、参ったな。どう言うべきか…。

「そ、そりゃあ……全部が全部じゃないだろうけど、見たくないって事はないんじゃないか? ……たぶん」
「総太さんも?」
「あぁいや。俺は……絶対に見たくないって……事は、ない…と思う。うん」
「そう、ですか……」
「………………」

……いくらでも嘘はつけた。
俺は好きじゃないとか関係ないとか。
でもな、この状況で嘘はなんの得にも意味にもならないんだ。
嘘は良くないとかってものあるけど…。
思考、全部御菜に届いてるから…。

「見れて、嬉しかったですか?」
「……まぁ」
「……でも、もう見ないで下さいね」
「も、もちろん」
「覗きとかそう言うのは、ダメですよ」
「やりませんしません絶対に」
「私が、いるんですから……見たかったら私に言ってくれれば……」
「……え?」

今なんか最後のあたり聞いちゃいけないこと聞こえたような?
俺の耳の錯覚…?

「……こ、断ったりはしませんから」

ぎゅっと俺の制服のシャツを握り締めてる。
当然ながら、恥ずかしいんだろう。
そりゃそうだ。聞いてる俺だって恥ずかしい。

「………………」
「………………」

お互いがお互いを見たまま……しばらく何も言わずに時が流れた。

「そ、それじゃあ。帰りましょうか」
「お、おぅっ……」

名残を惜しむかのようにゆっくりと離れた俺と御菜は、今歩いて来た道へと足を進めていった。
さっきの曲がり角が見えてくるまで。
もちろん、それまでのあいだもその先も、二人の手はしっかりと繋がれたまま……


つづくッ!


N e x t T o p