事始まりは、
「と、言うわけでせっかくのチャンスだからしっかりと話し合いをするべきだと思うわけだ」
と、俺の一言から始まった。
知ってのとおり、御菜がとても避けている人物が三名ほどいる。
言う間でもなく例の三人なんだが……
同じクラス、しかも席が近いんだからこのままにしておくわけにはいかない。
間にいる俺が気まずくなるだけだ。
だから話し合いをしようと言い出したんだ。
「幸い、今はまた自習時間だしな」
そう。自習なのである。
結局二時間目は御菜と屋上でサボった。
三時間目から授業を受けよう、と思いきや先生不在で自習に。
今のところ全部潰れてるんですけど? 偶然?
ま、俺としては嬉しいけど。
「まずは……御菜。何か言いたい事とかってある?」
「あ……はい。えぇっと……」
三人の方をちらちら見ながら御菜が黙ってしまった。
ん、なんだ。何か言いにくい事でもあるのかな?
それとも、やっぱまだわだかまりと言うか、そういうの……残ってるよなぁ。
「す、すいません。あの、名前が分からないんですけど……」
「あ」
そうだ。よく考えたら自己紹介もなんも無かったから知るわけないんだ。
一瞬他の事が浮かんだけど、そっちじゃなかったので一安心。
「そ、そういえば俺たちも名前知らないよなぁ?」
「あぁ……」
「ふむ……」
三人組も揃って頷く。
じゃあ、まずはお互いの自己紹介から……か。
御菜が始めに名前を言うと、順に彰・秋伸・悠也と続けていった。
最後にお互い「よろしく」と言って元に戻る。
「えぇっと、鴨居さんたちはいつもあのような事やってるんですか?」
御菜は最初に名前を聞いた彰の苗字を言った。
ちょっとビックリした感じで彰が答える。
……そう言えば、あの時上にいたのって彰だったような?
「あ、あぁ……いつもって訳じゃないけど、たまに総太の家に奇襲をかけることがあったり・・・…なかったり。な?」
残りの二人に同意を求めると、コクリと頷いた。
「そうなんですか……」
「あ、あのっ今更で悪いんだけど……ごめんな。まさか女の子がいるなんて思いもしなくて。本当にごめん」
「あ……いえ、そんなかしこまらないでください。私も悪いんですし……」
「でも……」
「確かに……ちょっとビックリして、ちょっと怖かったけど……私がいるって事知らなかったんですから」
「そ、そう言えばキミはいつから総太の家に?」
「金曜日の夕方からです」
そら絶対に知らないよ、と悠也。
まぁそうだよなぁ。俺だって家に帰るまでは分からなかったんだし。
でもそんな事言えるはずもないから黙っておく。
「……総太のやつが黙ってたのが一番の誤算だよな」
「あぁ、知ってたらやるはずないもんな」
「俺たちゃそこまで人間ダメじゃない」
……あの、こそこそ話してるつもりなんだろうけどさぁ。
聞こえてるっての。
ったくよぉ。俺にまで責任を負わすな。
こっちだっていろいろあるんだ。
「まぁ、とにかく! これでなんとかなったろ? お互い事故だって納得したんだし、丸く収まるって事で」
「はぁ……」
「まぁ、な」
「なんだよ。まだ納得いかないと?」
「んにゃ。そう言うわけじゃないけど、今よ〜く考えてみるとだな。あの時確か総太を起こそうと布団に飛び込んだんだよなぁ俺」
「え? あ、あぁそうだけど。それで御菜が驚いたんだろ?」
俺の問いに御菜がこくりと頷く。
「だよなぁ? するってぇと……総太の家って一人で住んでるんだからベットは当然一つだけ……で」
ぎくり。
いかん。すんごく嫌な予感がする。
今までは御菜が怒った事に焦点向いてたからよかったけど、アレって良く考えてみれば……
「どした? 彰?」
「いやだからさ、考えてもみろよ。俺たちってあの時いつもの要領で総太起こしに行ったじゃんか」
「あぁ」
「総太は一人暮らしだろ? ならベットだって一つだ。でもあの時飛び込んだら……いただろ? 彼女が」
「そういえば。だからこんな事になったわけで」
「だろ? おれたちゃ一つしかないベットに突撃かけたんだ。そこにいたのは総太じゃなくて……と言うことはだぞ? 実はあの時もしかすると……」
「「あぁっ!!」」
ヤ、ヤバ……
「総太、お前まさかヤtt」
ガスン!!
「ダイレクトに聞くな、馬鹿!!」
悠也の国語辞典で頭をドつかれてぐったりする彰。
うわ、攻守逆転してる……
「総太」
「な、なんだよ」
「俺たちゃあえて何も聞かない。だって人それぞれだもんなぁ。お前だって男だ。こんな可愛い彼女出来りゃそりゃあ……なぁ?」
肩をポンと叩き、一人納得してる悠也。
隣では秋伸までもがうんうんと頷いてる。
いや、お前止めろって。絶対勘違いしてるから!
俺はそんなんじゃないっての!
「大切にしろよ、総太……」
「いや、だからぁ!!」
「総太さん、何を話してるんですか?」
「あぁ〜もう御菜まで言うなー!」
いろんな意味で、疲れるわ。この時間……
明らかに勘違いしてる二人と屍一人。
そして知ってか知らずかの御菜。
俺、一人で週明けから消耗してる気がするんですけど。
いいや、まだ自習時間残ってるし。寝よ……
「あ、総太つっぷしちまった」
「よせって悠也。総太も疲れてんだろ。な?」
「あっな〜る……彼女は元気なのにねぇ?」
……もうあえて何も突っ込みません。
って言うか、好きにして。もう。
たぶん何を言ってもムダだろう。
「御菜ちゃん、総太あんな奴だけど末永く付き合ってやってくれよ」
「え? はい……そのつもりですけれど……」
最後に聞こえてきたのは、いつの間に復活して、しかも御菜の事を早くもちゃん付けで呼んでいた彰の声と、さりげなくしっかりと肯定してる御菜の声。
停戦と和解がやけにあっさりしてた気もするが、まぁ平和ならそれでも言いかと思いつつ、自習の時間は過ぎていったのだった。
つづくッ!
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