天使のゆびきり 〜驚きの連続、四〜








今日、俺のクラスに新入りが来た。
しかもそれは御菜だった。
それだけでも十分驚いてるのに、更にクラスメートの意外な真実も知った。
そして……俺以外にも真実を知って驚いた人物もいた―――




「おーい、そろそろ再起動してもいいんじゃないか?」

御菜と机を取りに行って来てから教室へ戻ってみると、俺の机の周辺だけ時が止まっているかのように動きを止めている三人の姿が。
……あいつらまだフリーズしてたのか?
それを何とも気にせず雑談をしている他のクラスメートを、俺は素直に凄いと思った。

とりあえず一番近くで凍ってる悠也を揺さぶってみる。
服は動くし、体も温かい。これは凍ってるわけじゃないな。ショックによる一時的な硬直だろうか?
ま、そんな事を観察してる場合じゃないな。
何度か揺さぶっていると、ようやく反応が返ってきた。

「……はっ!お、俺は一体……?」
「ようやく気が付いたか〜。お前ずっとフリーズ状態だったんだぞ」
「そうだったのか……」
「ほれ、ついでにお連れさんも一緒だ」

指差した先にいる人物二名。
ソレらも悠也と何とか復活させた。

「あ〜いかんいかん。何が起こったのか記憶がぶっ飛んじまった。なんで俺はあぁなってたんだろう?」
「俺もだ。でも、なんか嫌な予感がするんだよなぁ。罪悪感に包まれると言うか、嫌な思いでを思い出したと言うか」
「……なぁ、彰に秋伸」
「「なんだ?」」
「その、お前らの言ってた“イヤなの”って……」

そっと右にずれた。
それと同時に一人の女の子が姿をあらわす。
俺の背中に隠れていた人物……そう、御菜だ。

「あっ!――――」

「「「っ!――――」」」

お互いがお互いを指差し、声を失ってる。
そりゃそうだろうなぁ。
一方は寝起きを襲われてるし、もう一方は女の子を襲ってるんだから。

「あ、あなた達は……あのっあの時…の……」
「きっ君は総太の部屋にいた―――」

ササッ

「あ、あれれ?」

サッと御菜が背中に隠れたかと思うと、三人衆もまた二・三歩後ずさった。
それが双方同時に行なわれたものだから俺がビックリした。
でもこれじゃあなぁ。
慣れるのはまだ無理なんだろうか……。

「そっ総太さん……なんであの時の人がここにいるんですか!」
「いや、何故って言われても……ここ学校だし。なにより……」
「……なっなにより?」
「席が隣で、俺の友人」
「えぇーッ!?」

とんでもない!と言わんばかりに御菜が驚きの声をあげた。

「総太さんの……お友達なんですか!?」
「そうだけど……」
「いますぐ別れてください!!」
「え?」
「さぁ!」
「あ、あのちょっと、御菜?」

有無を言わさぬような勢いで、俺の腕を掴むと自分の方へと引っ張る御菜。

「あ、あのさぁ御菜」
「………………」
「別に、あいつらだって悪気があってやった訳じゃないんだよ。それにこんな事前にもあったし」
「………………」
「御菜の気持ちも分かるけど別れてってのはちょっと違うんじゃ―――」

だだっ

御菜が駆け出した。
そのまま教室のドアを開けると、廊下へと出て行く。
う〜ん、結論から言うと……

「のんびり解説してる場合じゃないっての!」
「えっお、おい総太ぁ!」

後を追うように俺も廊下へ。
しかし御菜らしき姿は何処にも無かった。
それに加えて珍しく誰もいない。
ここから他の階へ行くには突き当りまで行かないとないし、まだ校舎の中を知らない御菜が分かるはずも無い。
ましてや……

「走っただけじゃ、一瞬で階段なんて行けないだろ……」

俺が御菜の後を追って廊下に出たのはホントにすぐ後だ。
5秒も経ってないだろう。
その間に廊下の突き当たりの階段に辿り着くなんてそれこそ五輪ものだ。
まさか、御菜……
答えが浮かぶよりも先に走っていた。
今は御菜を探さないと!
どこ行ったかな。
たぶん家には行ってないだろう。
初日から無断早退なんて事はしないだろうし。
きっと学校の中の何処か。
でも御菜はまだ学校の中は知らない。
とすれば校内を知らなくてもただ階段を上がっていくだけで誰もが知ってる場所、と言えば――――


ガチャ……


重いドアを開けた瞬間にふき付ける少し生温い風。
もうじきやってくる夏を思わせるような高く蒼い空。そして白い入道雲。
そんな景色が見れるこの場所に、彼女はいた。
落ちないように張られたフェンスにしがみつきながら。

「御菜……」

ゆっくりと彼女のもとに歩いてゆく。

「こんな所にいたのか。探したぞ〜」
「………………」

御菜は何も言わない。
でも、それでもいい。
別に俺は、怒ってるわけじゃないんだから。

「こっから見る景色、イイだろ。 よく晴れた日には富士山見えるんだぞ」
「………………」
「俺も何回か来たことあるけど、昼寝するには絶好の場所でさ」
「…………そう、ですね」
「ふぅ、なぁ御菜。御菜の言いたい事も分からなくはない。確かに、寝てるところを知らない人間に襲われりゃ誰だって嫌さ。 俺だって最初やられた時はキレそうになったぐらいだし」

鼻下にわさびだもんなぁ、あれは効いた。

「でも、本当に悪気があってやったんじゃないんだ。御菜に事前に説明しなかった俺も悪いかもしれないけど……」
「違います。総太さんは悪くありません! ……悪くなんか、ありません」
「御菜……」

首付近でリボンでまとめられている御菜の髪が小さく揺れる。

「分かってるんです」
「え?」
「分かってるんです。頭の中では。あれは偶然から来た事故だって……でも、頭で分かってても納得がいかないというか、素直になれないというか……」
「一回、お互い向かい合ってちゃんと話をしたらいいと思う。ただ避けてただけじゃ、いつまで経っても解決しやしないからな」
「……はい」
「あ、別に俺怒ってるわけじゃないからな? ただ、御菜に元気になって欲しいと言うか笑って欲しいと言うか……と、とにかく! 御菜はいつもの御菜でいてくれって事だ。うん」
「総太さん……」

しばらくじっと俺の方を見ていた御菜が、こくんと頷くといつも見てるあの笑顔で『はいっ』と言った。
ん〜、これで何とか一件落着かな?

キーンコーンカーンコーン

「あ……チャイム鳴っちまった」
「鳴っちゃいましたね……」
「御菜、今すぐ教室帰りたいか?」
「う〜ん、本当は戻らないといけないんですけど……」
「ひょっとして、俺と同じ考えか?」
「はい、たぶんそうだと思います」
「よし、じゃあ当ててやる。今御菜が言いたい事は――――」

一瞬、頭の中によぎった罪悪感みたいなもの。
転入初日の御菜をいきなりサボらせてもいいのか。
勿論本当はいけない。
って言うか俺自体もダメ。
なんだけど……


「もうちょっとだけ、話でもするか!」


めんどい授業は寝て過ごす俺だけど、完璧にサボるのはこれが初めてだ。
たぶん御菜も……って言うか御菜がサボるなんてあり得ないっぽそうだけどな。
もしバレたら俺が無理やり引き止めたって事にしよう。
当然御菜が何か言うかもしれないけど。
まぁそれはそれだな。
そのときに考えよう。


「はい♪」


俺たちは先生に見つからないように入り口の裏手に回ってそこに座り、青空を望みながらトーキングタイムと洒落込んだ。
たまには、こういうのもい悪くないしいいかな。

この日の二時間目の授業。
俺と御菜は何故か欠席にはなってない。
どうやらあいつらが上手い事何かやってくれたらしい。
ちょっぴり、感謝、かな。


つづくッ!


N e x t T o p