――□ 早朝磯原家ベット内 御菜 Side □――
「ん……」
ぱちっと目が覚めた。
カーテン越しにうっすらと光が差し込んでる……もう朝なんだなぁ。
ふと隣を見てみると、総太さんがいません。
あれれ、と辺りを見回せば……いました。
どういう訳か、総太さんはベットで寝ないで机に突っ伏して寝ています。
何故そんな場所で寝ていたかは後で聞くことにして、今は布団をかけてあげないと……あっ、それよりもベットに運んであげましょう。
風邪を引いたら大変だもの。
「よいしょ」
『力』で総太さんをベットの中に。
気のせいかもしれないけど、なんだか総太さんの顔がより安らかになったような……やっぱり、お布団の中は気持ちが良いですものね♪
その後、カーテンを半分開けて窓を開けてベランダへ。
朝靄の残る街並みが見えます。
この建物は小高い丘にあるようなので、階が低くても街が見渡せます。
人も車もまばらな道路、誰もいない公園、遠くに見える山から覗く朝日……
そういえば、ここの事私全然知らないんだっけ。
今度総太さんに案内してもらおうかな?
ひとしきり見た後、う〜んと伸びをして、
「今日も一日、頑張ろうっ!」
と気合を入れて、さぁ!朝ご飯を作りましょうか。
あ、でもその前にやらないといけない事が―――
「身だしなみ身だしなみ……」
髪の毛をくしで梳かしてから、着替える為に荷物の入ったバックから洋服……あ、そうだ。
「今日はこの服着ちゃいけないんだった……」
そのまま戻して、別の服を取り出した。
今日から毎日着ないといけないこの服。
初めてきるからちょっぴり緊張。
パジャマを脱いで、新しい下着を付けてから真新しいその服に袖を通す……
鏡の前で、くるっと一回転してみた。
遠心力でふわっとスカートが持ち上がる。
―――うん。問題はないっと。
総太さん、この姿見たら何て言うかな?
似合ってるって、言ってくれるかな……?
ちょっとした期待感を胸に、私は寝ている総太さんの元へと足を向けた―――。
――□ 総太 Side □――
……何だ、体が揺れてるような感覚があるぞ。
それに、どっかで俺を呼んでるような声が。
一体誰だ?せっかく寝てるって言うのに。
体が揺れるのと、声がだんだん大きくなってくる。
まだ起きたくない……
「……〜ん………すよ〜」
もうあと5分……いや、10分だけ……寝かせてくれ……
「……ですよ〜……きてくださ〜い」
勘弁……夜中考え事して寝るのが遅かったんだよ……だからもう少しだけ寝かせてくれ〜。
「……太さん……総太さ〜ん」
嗚呼、女の子の声がするよ……しかも俺のこと呼んでるし……誰だろう…?
でも、どこかで聞いた事があるような……。
「んん……あともう少しだけ……」
「ダメですよ〜」
バサッと音がした途端、体に寒気が走った。
マ、マジ勘弁してくれ……昨日遅くまで起きててホント寝たりないんだよ。
手探りで布団を戻そうとしたけど、どこにも当たらない。 それどころか、温かみのある柔らかな“何か”に包まれた。
なんだろう、ものす〜んごく心が安らぐんだけど。
一体何が……?
「ん〜……あ?」
重い瞼を開いて、視界がぼやけているなか見えたもの。
白っぽい肌色。
それが目の前にある。
なんだ……これは。
寝返りを打つかのように体を動かすと、顔の輪郭のようなのが見えた。
え〜っと、これは……御菜?
「み…………な?」
「そうですよ〜。もう朝ですから、起きてくださ〜い」
目の前にいるようなので、流石に大きな声は出さずに、ささやくように言った。
あ〜、ダメだ。ただでさえ眠いのに、優しく言われてあまつさえ暖かなものに包まれてると再び睡魔が……
……………………
――って、ちょっと待てよ?
寝ぼけ状態での俺の脳みそが何かを演算し始めた。
ついさっき、俺は布団を剥がされたようだった。
手で見つけられなかったんだからきっとそうだったんだろう。
でも、その後に感じた布団とは違う温かみのある柔らかいものがあった。
そして、目の前にいたのは御菜。
と、言う事はですよ。
つまり、俺が暖かいなぁとぬくぬくしてる“それ”は――――――
チーン 演算終了。
直後、部屋中に俺の叫び声がこだました。
――□ 御菜 Side □――
ベットで安らかな寝息を立てている総太さん。
こんなに気持ちよさそうに寝ているのを妨げるのは嫌なんだけど、そろそろ起きて貰わないと時間がありません。
ベットに歩み寄って、そっと肩を揺らします。
「総太さ〜ん。朝ですよ〜」
ゆさゆさと揺らしても、全く反応がありません。
もう少し強く揺らして声をかけてみますが、小さな反応が返ってくるだけ。
掛け布団を取ったら起きるかな?って思ったけどあんまり効果がないんです。
総太さんって、とても朝が苦手なんですね。
う〜ん……しょうがないなぁ。
ちょっと服が皺になっちゃうかもしれないけど、ここはこうやって―――
ギュッと、包み込むように総太さんを抱きしめた。
これは効果があったみたい。
すぐに総太さんはゆっくりとですが目を開けてくれました。
でも………
そのすぐ後、私は目の前で発せられた大声に驚いて耳を塞ぐハメに。
総太さん……酷いですよぉ〜。
――□ 総太 Side □――
な〜んか、視点がころころ変わって移入しずらいなぁ。
こちらとしてはもう少し数を減らしてほしいのだがねぇ。と愚痴ってみたり。
起床方法が少し…いや、かなり凄かったけどおかげで目が覚めた。
頬を膨らませて抗議する御菜に謝りながら歯を磨いて着替えを済ませる。
そして、一緒に朝ご飯。
一昨日から食べる朝飯は格段に美味しくて、朝いつも食べられなかったのが嘘のように食べている。
今まで、朝見ると嫌だった湯気ののぼるほかほかご飯と言うものが、もうすっかりお気に入り状態!
ちょっと自分で言うのも恥かしいけど、流石愛情ってスパイス使ってるだけはある。
おかげで元気よく学校へといけそうで……。
「そういえば御菜、少し気になったんだけどさ」
「なんでしょうか?」
「その服装、どっかで見たことあるんだよなぁ。しかも頻繁に。どこだっけかなぁ」
「あっ、いけない忘れてました」
そう言うと、御菜がすっくと立ち上がった。
……なんだ一体?
「どうですか総太さん?この服、似合ってますか?」
クルッと回転。
スカートが持ち上がってちらりと太ももが顔を覗かせた。
―――いかんいかん!それに目がいってしまった。
振り払うように咳払いをひとつして、改めて御菜の服装をば。
「うん、似合ってる。でも、やっぱり何処かで……」
「……本当に分からないんですか?」
「う〜ん、何だかもの凄く身近に感じてるんだけどなぁ」
御菜が、ハァと息を吐いた。
すまない御菜!喉ぐらいまで出かかってるんだけど後少しが……
「これ見ても分かりませんか?」
そう言って取り出したものは、顔写真のついた何かの証明書みたいなカード。
ん?これって……えぇ!?
こ、これってまさか。
「うちの学校の生徒証明書……?」
「はい」
「な、何で御菜が持ってるんだ?」
「ですから、こういうことですよ」
再び演算開始。
御菜は俺がどこかで見たことのある服を着ている。
そしてうちの学校の生徒証明書も。
そこに写っている御菜も同じ服を着ている。
生徒証明書を撮るときは当たり前だけど学校の制服を着て撮る。
制服+学校=生徒証明書。
……………つまり、これらが共通する事は―――。
チーン 演算終了。
そして、俺が声を発する前に御菜が満面の笑みを浮かべながら答えた。
「今日から私も総太さんと一緒に登校です♪」
父さん、母さん……まだまだ一波乱ありそうです。
つづくッ!
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