それは、ちょっと前の言葉。
『あっ、言い忘れてたけど、今度から私お隣に住む事になったから〜』
帰り際にさらりと言うな。
そんな大事な事言い忘れるな。
と言うか……
ウチの隣ですか……
彩音――本人に“ちゃん”付けはやめてと言われたので。だから俺も名前で呼んでと言った――が帰り際に言った事。
まったくとんでもない事を言い忘れてくれたものだよ。
確かにお隣さんは片方は空家だけど、まさか其処に住もうとは。
壁を隔てて隣だぞ?
大きな声とか出してると聞こえるかもしれないんだぞ?
……いや、だからどうしたと言われると困るんだけどさ。
別に何も考えてないぞぅ。
「や〜れやれ。何だかんだ言って連休が終わってしまった。また明日から学校だ〜」
「学校ですか?」
「あぁ。まぁね」
ホカホカと湯気上る場所での御菜との会話。
あっという間の連休だった。
昨日はあれから彩音が泊まって行くだの言い出して、結局その通りになってるんだし。
今日は今日でいろいろと……疲れて思い出す気にもならない。
この現状も……。
簡単に言えばここは風呂場というわけで。今日も一緒に入ってると言うわけで。
もう何も言わないさ……。
「ぶくぶくぶく……」
「そ、総太さん……」
鼻元まで浸かって、口から息を吐いてブクブクやってる俺を見て御菜が苦笑してる。
あ、そう言えば……。
「なぁ御菜、これからどうするんだ?」
「これから、と言いますと?総太さんと一緒に住みますよ」
「いや、そうじゃなくって。明日から俺学校始まるけど、その間は家にいないんだぞ。その間の事だよ」
「あっ、その事ですか」
と、口元に手を当ててクスッと笑った。
なぜ笑ったのか聞いても、答えてはくれない。
どうやら、何か隠してる事があるようだ。
「それは、みてからのお楽しみです♪」
だそうで。
「御菜、お楽しみって何の事だよ〜」
「お楽しみは、お楽しみですよ」
「あ〜気になる。何を隠してんだろう!」
「う〜ん、しょうがないなぁ」
おっどうやら御菜は教えてくれるみたい―――
「では、私にキスをしてくれたら教えましょう」
……………。
「―――え?」
「ですから、キス、です」
きす? きすって言うと……。
「あのキスですか?」
「はい♪」
今日の御菜はやたら『♪』マークがでてくる。
彩音が来たのがよっぽど嬉しいのか?
まるで、どこかの人に似ているような?って何のことだっての。
「いや、でもそれは……」
「〜♪」
「あっその、え〜っと……ごめんなさい。教えてもらえるまで待ちます」
「えっそうなんですか?ひょっとして、私とキスするの……嫌ですか?」
「いやっ!そうじゃなくて。まだ恥かしいと言うか心の整理が出来てないと言うか」
いきなりはそういう事無理です…。ハイ。
結局、この話はここで終わって2人風呂場を出るのであった。
「あれとこれとこれと……うん、大丈夫だ。さぁて、もう寝るとするかな〜」
学校へ持ってく物をさっと用意する。
朝が苦手な俺なものだから、前日に用意しないとまず無理。
忘れて何度学校にてうなだれた事か……
同時に、ドライヤーの音も止んだ。
御菜も髪を乾かし終わったみたいだ。
「総太さん」
「ん?」
「少しだけ、ヒントをあげちゃいます」
「……ヒント?」
一瞬だけ何のことか分からなかったけど、すぐにさっきの事だと思い出した。
ヒントまで出てくると、まるでクイズだなこりゃ。
「ずっと一緒♪」
「……へっ?」
一緒って、何がですか?
「それが、ヒント?」
「はい」
「さっぱり分からない……。むしろ余計に悪化」
「さて、私はもう寝ようかな〜」
「こら、余計に混乱させたまま一人だけ寝ようとするなっての」
「えへへ〜。それじゃ、お先に失礼しますね♪」
御菜は先に寝てしまった。
何だか遊んでいるように感じるのは俺だけだろうか?
嫌とは思わない。むしろ歓迎。
御菜も慣れてきたって事かな?
「さて、と……」
ふぅ〜む……俺も寝たいんだがさっきのヒントが気になって眠れない!
一緒ってなんだ?ずっと一緒ってどういう事なんだ???
あーわからねぇ!!
結局、それを追求しようとした俺は普段起きてない深夜まで考えつづけ、何も浮かんでこなかった。
それどころか、そのままテーブルに突っ伏したまま寝てしまうと言う事態にまで……
もし今が冬だったら確実に風邪引いてますなこれは。
はぁ、この連休はいろんなことがあったなぁ。 人生でこれほどまでいろんな事が目まぐるしく、かつ2日で起きるなんてもうないだろうね。
それに順応しつつある俺も凄い事。
今日だけは自分を褒めて寝る事にしよう……
あれ?なにか忘れてるような気がする。
何だっけなぁ……ま、いいか。
おやすみ……御菜……
つづくッ!
…to be next chapter 〜
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