天使のゆびきり 〜御菜の妹その名は彩音!〜






買い物からの帰り道、食料がたっぷりと入った袋を手に下げながら歩いている。
俺と御菜で一つずつ荷物を持って、もう片方の手で手を繋ぐ。
その時の御菜の表情は終始笑顔だった。

「到着〜♪」
   
嬉しそうに言うと、鍵を鍵穴に入れる。
この鍵は、これから必要になると思って御菜に買ってあげたものだ。
アクセサリーとして、黄色い輪っかに白い羽のついたキーホルダーもつけている。
いかにも天使っぽく、そして御菜に似合うと思って俺がプレゼントしたんだ。
   
ガチャリ
   
「それじゃあ、急いでお昼御飯作りますね」

そう言ってドアを開けようとしたが――


ガタッ

「……あれ?」

開かなかった。
と言うより、この光景は前にもあったような〜。
あ、俺だ。
しかも昨日……今度はなんだ?
本当に泥棒だったら勘弁勘弁だぞっ

「総太さん……」
「鍵ならちゃんと閉めていったぞ」
「ですよねぇ。じゃあなんでドアが開かないんでしょう?」
「また御菜でもいるんじゃないか?」
「私ここにいますよ〜」

ぶぅ〜っと頬を膨らます御菜。
でも、本当にどうなってるんだ?

「もう1回まわして、ドアを開けてみたらどうだ?」
「それで、もっもし中に今朝みたいな変な人が居たら……」

今朝の人って、文句ナシにあいつ等の事なんだろうなぁ〜。

「大丈夫だって。その時は俺が何とかする」
「何かあったら、絶対に助けてくださいね?」

ガチャリ

再び音がして、今度こそドアが開いた。
御菜を俺の背中に隠して、恐る恐る部屋の中へと入っていく。
何にも音がしないぞ……やっぱ泥棒じゃなかったとか?
でも、それじゃあ鍵が開いてた訳が分からないし、う〜ん。

「ネズミでもいたか……?」
「家の鍵を閉めるネズミですかぁ!?」

びっくり御菜。
いや、これは冗談で言ったんだが。

「このドアの向こうにいるんでしょうか?」

俺たちの目の前には、居間へと通じるドアがある。
閉まっているので中は見えないが、いるとしたらもうこの中しかないだろう。
まぁ、トイレとか風呂場に逃げ込んだとしても、必ず居間を通らないと家から出る事は出来ない。
そしたら袋のネズミだ。
俺は、そんな事を考えながら、そっとドアノブに手を掛けた。

ガチャ……

居間を見回す。
しかし、全く荒らされた形跡なんて無かった。
家を出たときのままの状態だ。

「どうなってんだこりゃ」
「はい……」
「やっぱり、鍵を閉め忘れたのかなぁ」
「でも、総太さん閉めたっていいましたよね?」
「あぁ、自分で閉めたんだ。間違いないハズだ。でも」
「でも?」
「もしかしたらってのも、あるんだな……」

我ながら、なんと頼りのない言葉だろうと思う。
こんなのじゃ、これからの1人暮らし――いや、2人暮らしが頼りないものになってしまう!
でもなぁ、確かに閉めたハズだったんだが……

「ん?」

周りを見回していた俺は、テーブルの上に置かれている何かに気が付いた。
そこにあるのはぬいぐるみ……か?変だな、俺の家にぬいぐるみなんてないハズなのに。
御菜が持ってきたとか?

「なぁ御菜。ぬいぐるみ持ってきたのか?」
「え?そんなもの持ってきていませんよ」
「だよなぁ」
「何でですか?」
「いや、ここに何故かあるんだ。確か家を出る前は無かったはずなんだけど」

俺はそのぬいぐるみを指差した。
その時……

ぺしっ!

「ん?」

伸ばした指に、なにか痛みを感じた。
しかし、なにも周りに変化は無い。
気のせいかなぁ?

ぺしっ!ぺしっ!

「…………」

今度は、2度叩かれた感じ。
丁度御菜のほうを向いているときに叩かれた。
俺は、指の先にあるそのぬいぐるみをじっと見つめる。
しかし、当然のように動かない。
でも、何となくさっきと位置がずれてる気がしてならないんだが。

「……!」

クルッ!

「…………」

ちょっと目を逸らして、すぐにもとに戻してみた。
でも、相変わらずそのぬいぐるみはじっとしたまま動かない。
じっと俺のほうを見たままだ。

「(なんか気になるんだよなぁ)」
「あの、総太さん」
「…………」
「総太さ〜ん」
「…………」
「……そうたさ〜ん。ねぇ〜聞いてくださいよ〜」
「…………」
「そう」

バッ!!

「!!」

俺は見た。
ぬいぐるみである筈のそれが、今、動いたのを!

「こ、これは一体……」
「あ〜あ、バレちゃった」
「「えぇッ!?」」

突然部屋に響く誰かの声。
それは女の子の声だった。
しかし、姿が見えない。

「誰だ!?そして、何処にいるんだ!」

闇雲に天井に向かって叫ぶ。
すると、クスクスっと笑う声が聞こえた。

「そんなに大声出さないでよ。別に怪しいものじゃないよ」

……そんな事してる時点で十分怪しいぞ!
って言うか、何処にいんだよ。

「この声は……」

そう御菜が言った時、パッと光が部屋中に広がった。
眩しくて思わず目を瞑ってしまう。

「御〜菜、元気にしてた?」

光が消えると、その中心に1人の女の子の姿がにっこりと笑って立っていた。
そして、御菜に声を掛ける。
か、彼女は一体……

「あっ彩音!?」

御菜がびっくりして両手を口元に当てている。
な、なんだ、どうなってるんだ?
すると、その子がペコっと頭を下げると、

「こんにちは。わたし、御菜の妹の彩音って言います。どうぞよろしくっ♪」

と言って、にっこりと笑った。


つづくッ!



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