天使のゆびきり 〜初夜〜




ご飯も食べました。
お風呂にも入りました。
あとはもう寝るだけです。
あぁ、長かった一日が終わった……
今日ほど長く感じた日はないな、うん。
そんな事を考えてると、御菜が風呂から上がってきた。
髪の毛は乾かしていないようで、まだ濡れている。
やっぱりと言うか、なんと言うか、着ている服はパジャマである。

「そう言えば御菜」
「はい」
「御菜は布団とかも持ってきてるのか?」
「と、言いますと?」
「いや、どこで寝るのかな〜と思ってさ」

すると、御菜がふふっと笑うと、

「総太さんと一緒に寝るに決まっているじゃないですか〜」
「あっな〜るほど」

と言った。
そうかそうか、俺と一緒にね……え?

「い、今何と仰いました?」
「私、総太さんと一緒に寝ます♪」
「……本気ですか?」
「はい。もしかして……ダメですか?」
「そそそう言うわけじゃなくて、その……」
「その?」
「う、ううん。なんでもない」
「そうですか。じゃあもう今日は遅いですし、寝ましょう」

半分御菜にせかされる形で、一緒に寝る事になった。
俺が使っているベットは一人用にしては大きいサイズだ。
これは、昔寝相が悪かった所為で一人用だと転げ落ちてしまうから……
という理由で大きいサイズのを買ったんだけど、
そのうちに直ってしまって、かえって大きく感じてしまっていた。
まさかこんな形で使う事になるとは。
ははっ思っても見なかった。
備えあれば憂いナシってか? ……本日二回目だな。この言葉。
しかも、何の備えがあって何の憂いがあるって言うんだよ。

「それじゃ、おじゃましま〜す」

ドライヤーで髪の毛を乾かし終わった御菜が隣にもぐりこんだ。
肩と肩が軽く触れてドキッとしたが、平常心を保ちながら話し掛ける。

「なぁ御菜。御菜はなんとも思っていないのか? 俺と一緒に寝る事にさ」
「総太さんは、何か思って欲しいんですか?」
「いやっ! そ、そういう訳じゃないけど……」

思いがけない答えが返ってきたので慌てていると、御菜がクスッと笑っていた。

「ふふっ、ごめんさない。ちょっとからかっちゃいました」
「こ、こらぁ御菜」

お返しとばかりに、御菜の頭を少し乱暴に撫でる。

「きゃ、あははは。ひどいですよ〜総太さん」

その時、ふわっと髪の毛の先が俺の鼻をかすめた。
ほんのりとシャンプーの香りがした。
俺は、乱暴に動かしていた手をだんだん緩め、最後は壊れ物を扱うかのように優しく撫でていた。

「さらさらしてるな、髪の毛」
「ふにゃあ……」
「なぁにヘンな声出してんだよ」
「総太さんに撫でられると、何だかすごく安心します」
「……そうか」

その後も、ずっと御菜の頭を撫でていた。
ふと見ると、目を瞑っていたので、もう寝たのかと思って手を止めようとした瞬間、声が聞こえた。

「本当は……私、とても緊張していました」
「――御菜?」

御菜の口は動いていない。
そして、俺の耳から入ってきているのではない。
直接脳に響いているかのような……

『でも、総太さんに撫でられているうちに安心してきて不安がなくなりました。……一応、覚悟はあったんです。総太さんに抱かれてもいいような……』
「ッ!!」
『ふふっ、総太さん。どうして私の声が聞こえるか分かりますか? これはテレパシーみたいなもので、私が頭で思った事を相手に伝える事が出来るんです』
「なるほど……」
『それで、さっきの話ですが……』
「いや、いいよ」

俺は話を止めた。
そして、撫でていた手も止めると、今度はギュッと御菜を抱きしめた。

「えっ……総太さん?」

びっくりした御菜が、目を開けて俺を見つめる。
話していた内容の直後にこれなので、頬が赤く染まっていた。

「流石に、いくらなんでもそんな邪な考えはしないよ」
「じゃ、じゃあどうして抱きしめているんですか?」
「なんとなく、かな。こうした方がもっと安心するかなって思って」
「……心臓が、ドキドキ言ってます」
「安心しろ、俺もだ」

普段なら、あまりいい印象を持たないドキドキ感が、今日はすごく安らかなものに感じた。

「……寝ましょうか」
「そうだな」

俺が背中に回した手を離そうとすると、御菜が『待って』と言って止めた。

「そのままで、いて下さい」
「え?」
「このまま……寝たいな……」

と言う事だ。
結局、そのままの体勢で寝る事になった。
最初は寝られなくて困っていたけど、しばらくして御菜の寝息が聞こえてきた。

「すぅ……すぅ……」

よくもまぁこんな状況で寝られること。
これからのことを考えると、俺も見習わなきゃいけないんだろうなぁ。
……慣れるまでしばらくは寝不足が続きそうな予感。
不足分は学校で補うとするか。

「おやすみ、御菜……」

片手で寝ている御菜の頭を撫でると、ふにゃあ、と声が聞こえてきた。
起こしてしまったら悪いので、すぐに止めると、俺も目を瞑った。



いつ寝付いたのか分からない。
気が付いたら眠っていた。
だから、夜中に来たメールなんて気付くわけがなかった。
その内容というのが……


『明朝貴宅ニ奇襲ヲ仕掛ケル……
                  彰&悠也&秋伸』


つづくっ!


N e x t T o p