天使のゆびきり 〜私はあなたの―――♪〜




「お帰りなさいませ。あなた……」

玄関前で正座している一人の少女。
見た感じ俺と同じ歳ぐらいか。
HAHAHAッな〜んだ女の子か。
泥棒じゃなかったのか〜……

「――って、女の子!?」

えっ? えぇっ!? 何故に俺の家に女の子が?
しかも全ッ然知らない人。
何故!?Why??
頭の中で『大根乱星人(あえて大混乱ではない)』が駆け回っている。
すると、

「きゃっ!」

俺の声に驚いたのか、女の子がびっくりしていた。
うわっ結構可愛いな……じゃなくって!
まさか俺、家間違えたとか!?
あわてて外にでて表札を確認する。
そこにはちゃんと『磯原 総太』となっている。
よかった〜ちゃんと俺の家だ。
これで間違えてたら、学校の二の舞になるところだった。
じゃあいったいこの娘は……?

「もうっビックリしちゃったじゃないですか。脅かさないでくださいよ〜」
「えっ?あ、すっすいません……」

何故か反射的に謝ってしまう俺。
そうじゃないだろ。
どうして俺の家に居るか聞かないと。

「あ、あのさぁ」
「ささ、いつまでもここにいても仕方がありませんから、部屋へまいりましょう。お鞄お持ちします」

そう言って彼女は、俺から鞄を取ると部屋へ歩いていく。
いや、だから俺はだなぁ〜


「はい、お茶です」
「どうも……」

居間――と言っても部屋一つしかないんだから居間とはいえないか?――でお茶をすすっている2人。
あ、丁度いい温度だ。
猛者か?
と、本来聞くべき事からずれている事が分かったのはすぐ後だった。
それに、猛者って……あ〜いかん、またずれた。
聞くべき事を聞かないと!

「あのさぁ」
「はい?」
「キミの名前は?」
「私ですか? …あっごめんなさい。肝心な事忘れちゃって、私『高麗 御菜(こま みな)』と言います」
「はぁ、こまさん」
「あっ、私の事は『御菜』と呼び捨てで呼んで下さって結構ですから」
「はぁ……」

御菜、ねぇ。

「じゃあ、御菜。質問……してもいいかな?」
「なんですか?」
「どうして俺の家にいるの?」

一番聞きたかった事。
だが、俺が言った瞬間、彼女の顔が曇った。
何かヘンな事言ったか? 聞いちゃまずかったか?

「……やっぱり、覚えていないんですね」

え? 覚えていない? 俺が?
覚えたもなにも、会った事すらないと思うんだけど。
それとも、俺が忘れてるだけなのか?
はて……会ったことあったかなぁ。
高麗 御菜さん……高麗……御菜……う〜ん。
必死に記憶を辿ってみるが、思い当たらない。
そもそも、高麗なんて苗字の人に会ったことすらないぞ?

「昔、あなたが小さかった頃、同じ歳くらいの女の子を助けた事、覚えていますか?」
「助けた?」

その時、俺の脳裏に1つの映像がよみがえって来た。


夕焼けの中……
俺は、一人の女の子を見つけた。
怪我をしているらしく、とても悲しそうに泣いていた……
大丈夫?と声をかけると、『痛いよぉ』と言っていた。
見れば、彼女は所々にキズがあるではないか。
一体誰がこんな事を?とは思わなかった。
その前に、彼女の事が心配で心配で……
俺はそっと頭を撫でて、立てる?と聞いた。
立ち上がった彼女の手を引いて、俺は自分の家に行って手当てをしてあげた。
決して満足な手当てではなかったけど、彼女の悲しみが消えるように、一生懸命やった。
そして最後に『痛いの痛いの飛んでいけーっ!』と言ったのを覚えている。
子供だけに通じる不思議なおまじない――
一度それをやれば、あっという間に痛みが消えてしまうのだ。
すると彼女は、涙はあったが笑顔で『ありがとう』と言った。
そして、俺に目を瞑るようにいって、一言……
部分的にしか覚えてないけど、何かになってあげる、とか言っていた気がした。
しばらくして、目を開けると彼女の姿は無かった。
どこを探しても。
その時俺は、きっと帰ったんだろう、と思った。
名前も知らない女の子と過ごした、ほんの小さな時間……そして、何かの約束
――


「あの時の女の子……」
「はい……そうです」

ちょっと涙目になった彼女。
見れば、どことなくあの頃の面影が残っているようにも見えた。
幼さを残した顔立ちに、俺は素直に可愛いと思った。

「でも、どうして今ごろ?それに、家だって変わったのに」
「それは、失礼ながら調べさせて頂きました」
「はぁ。でも、どうして今ごろなんだい?」

すると彼女、急にキリッとした顔になった。
一体何を言うつもりなんだ?

「私はもう16になりました」
「え?16って……歳の事?」

それと一体何の関係が……?

「はい。この国の決まりによれば、女性は16歳になれば結婚できるんですよね?」
「へっ?そ、そうだったかな?」

俺は憲法なんて知らないぞ……って、え? この国?
あなたも日本人なのでは? それとも実は違うとか?

「それで、私も16になりましたので、昔交わしたあなたとの約束を守るために来ました」
「やくそく?」
「はい」

ひょっとしてあれか、俺が覚えていない部分の出来事……
一体何を約束したんだ?
しばし考える。
…………
……………
思い出せない。
でも、彼女結婚がなんたらって言ってるし……
う〜む。
と、そこに何やら1枚の紙を出してきた。

「あとは、あなたの署名と拇印のみです」

手渡され、中を見ていく。
そこには、彼女の住んでいるらしい住所から年齢――あ、ホントに16歳だ。
血液型などなど……妙に細かく書いてあった。
あとは俺が書けばいいのか?と思い、さらに紙をよく見る。
……ん?
……えっ?
……おぉ!?
ちょ、こっこれはぁ!?

「こっここここここここ婚姻届!?」

超・唖然とする俺に、彼女からの痛烈な一言が。

「約束、です♪ およめさんになりに来ました。総太さん」

しかも、彼女の背中からは白い大きな羽が見えた。

……え、羽?


つづくっ!


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