〜やくそく……だよ〜


天使のゆびきり 〜再会〜




「………ん」

目が覚めた。
カーテンの隙間から、太陽の光が線となって入り込んでくる。
枕もとにある目覚し時計に目を向けると、時間は朝の7:00。
いつも起きる時間より30分も早く目が覚めてしまった。
もう一度寝ようかとも思ったけど、過去に同じような経験があってそれが大変な結果に終わっているので、止めた。

何かが心の中に残っているような感覚。
俺は、夢の中で何かを言っていたような……
思い出そうとしても何も覚えていない。
でも、何か懐かしいような、久しぶりに何かを見つけた時のような感じ。

「ま、夢は夢、か」

そう区切ると、う〜んと伸びをして眠気を飛ばしてから起き上がり、着替える事にした。
夢は夢……そうさ。
特に意味は無い。

『今日の天気は概ね晴れで、雨の降る心配はありません。しかし、山沿いで夕立が降る可能性がありますので――』

テレビから今日の天気予報が流れてくる。
それを耳で聞きながら、顔を洗い、歯を磨いて、学校の制服に着替え、軽く朝ご飯を食べる。
俺は朝はあんまり食欲は無い。
朝は低血圧……なのかな?
バターを塗ったパンとコーヒー、それで十分だ。
食べ終わると、まだ時間が結構あるのでニュースを見ながらゆっくりとしていた。
早起きは3文の得って言うけど、あれは正解だな。
おかげでのんびりと家を出られる。
さて、そろそろ家を出るかな。

「行ってきます」

誰もいない家に声をかけて、外に出た。

俺の名前は『磯原 総太(いそはら そうた)』。
親元離れて、念願の一人暮らしを始められた高校1年生だ。
今ではすっかり慣れて、気ままで楽しい生活を送っている。
掃除とか洗濯とか、そう言った家事などをやらなきゃいけないのはつらいけど……
あ〜、お手伝いさんが欲しい。
そしたら自分でやら無くて済むのになぁ。
そんな事を考えながら、学校までの道のりを歩いていく。
学校に近づくにつれて、同じ制服を着た生徒が増えてきた。
その中で、見知った顔があったので後ろから声をかける。

「よっおはようさん」
「ん?よぉ、総太じゃん」

彼は『川越 悠也(かわごえ ゆうや)』と言って、同じクラスの友人だ。
そのまま2人で雑談しながら教室へと向かう。
高校生活が始まってもう2ヶ月、ようやく学校の事にも慣れて来た。
最初は大変だったんだ。
登校2日目で教室を間違えたからな〜、あの時は本当に恥かしかった。



「おっ、やっときたか2人とも」
「遅かったから、また総太が教室間違えたかと思ったぜ」

教室に入った俺を見るなり笑い出したのは、上から『鴨居 彰(かもい あきら)』と『蘇我 秋伸(そが あきのぶ)』と言う。
彼らも俺の友人だ。
ったくあいつらめ、人の気にしてる事を……

「なぁなぁ、それより聞いてくれよ。昨日の帰りさ、可愛い娘見かけたんだよ」
「……幼稚園児か?」

ガンッ!

「……痛い」
「話を変な方向へ曲げるな!それに、ンな趣味はないわッ!!」

ボケた悠也が、彰から手痛い突っ込みを食らった。
それをみて笑う俺と秋伸。
こいつらが高校に入って出来た最初の友人だった。
さっきも言った通り、俺は親元を離れてここにいる。
つまり、元々住んでいた所から引っ越してきたわけだ。
当然、この地域に知ってる人なんていない。
ちょっと前まで通ってた中学で、ここの高校を受けたのは俺だけだ。
と言うか、俺が初めてだ。
それは当然だろう。
何せ、県が違うんだから。
入学した当時は、ちゃんと友人が出来るか心配だった。
が、それをさっきの事件が吹き飛ばしてくれた。
俺は、遅刻したあげく教室まで間違えたので、自分のクラスにたどり着いた頃にはとっくに先生は来ていた。
遅れた理由を話してどっと笑われるなか、顔を真っ赤にしながら席についた時、横と後ろから同時に声をかけられた。
それが、こいつらと言うわけ。
あまり嬉しくないが、それを通してクラスに溶け込める事が出来たわけだ。

キーンコーンカーンコーン……

チャイムが鳴って先生が入って来た。
やれやれ、これからまた退屈な一日がスタートするわけか。
しかも、今日は1時間目からめんどくさい数学だ。
となると当然俺たちは――

「ZZZZZ……」

許してくれ!
陽気が眠気を誘う…ん……だ………



「うぅ〜ん、よく寝た」

1時間目終了のチャイムが鳴ったと同時に目を覚ました。
が、他の3人は目を覚まさない。
ぐ〜ぐ〜寝たままだ。
2時間目からはちゃんと授業を受ける。
俺が嫌いなのは『数学』ただ1つだ。
あれさえなければ学校も少しは楽しくなるのに……
結局、3人が目を覚ましたのは4時間目が終わったときだった。

昼休みが終わって、午後の授業。
俺と悠也の後ろ、彰と秋伸の席は綺麗に空いていた。
彼らはもうこの校舎内にはいないだろう。
多分、今ごろはゲームセンターか駅前。
俺も誘われたが、断った。
確かに授業はめんどくさいけど、流石にサボりまではしたくない。
それに、単位だって落としたくないし。
まぁそんな簡単に落とすなんて事はないと思うけど、念には念を入れておくのがいいだろう。
さて、如何にして午後の眠気と戦いながら授業を乗り越えようか?
などと考えているうちにあっけあく6時間目が終わってしまった。
これって、学校サボったのと結果一緒なんじゃ……
いや、俺はちゃんといたんだ。
同じって事はない!多分ッ!!

「いやぁ〜2時間授業はめんどかったな〜」

隣の悠也が、さもそうでなさそうな声で言う。
悠也はちゃんと授業を受けていた――ように見えたが、実は机を盾にしてこっそりと漫画を読んでいたのを俺は見ている。

「漫画読んでて、よくそういう事言えるな」
「なぁに、明日はちゃんと受けるさ」

毎日同じこと言ってると説得力無いぞ!
たまには別な事いえよ。

「ま、明日は土曜で休みだけどな」

それを聞いた俺は、はぁ〜と溜息をつくしかできなかった。
程なくしてHRも終わり、1日の学校生活が終わった。
……こう書かれるとあっけなく感じられるけど、実際はホント長いんだぞ?
学生諸君は分かるよな?なっ??なぁ!?

「……さて、帰るか」
「んじゃ、俺は部活だから〜」
「頑張れよ」
「テキトーにな」
「ははっ。それじゃ」
「あぁ」

悠也は部活にいってしまった。
俺はどこの部活にも入っていない。
帰宅部だ。
クラスメートに声をかけてから教室を出て、学校を後にする。
やった〜、明日明後日は連休だ。
家でのんびりできるぞ〜。
何をしようか考えながら歩いていると、もう家の目の前まで来ていた。
ははっ、考え事してると時間が経つのは早いなぁ。
ポストに何も入っていないのを確認すると、鍵を取り出して差し込む。
ガチャリと音がして解除されるのが分かる。
そして、ドアを開けようと―――

ガッ

「???」

ドアを開けようと―――

ガッ……ガッ……

「あっあれれ??」

開かなかった。
って、ちょっと待て。
今俺は鍵を開けたはずだよな?
それなのに、実際は鍵が閉まった。
てコトは、元々は開いてたと言う事、ですか?
朝出るときは……ちゃんと閉めたよな。
閉め忘れるようなドジはしない。
閉めたって記憶だってある。
じゃあなんで??????
ここで俺は1つの結論に達した。
それは――

「ど、泥棒……?」

まさかまさかまさか!
この一人暮らしで、あんまり金の無い俺の家に泥棒!?
俺ン家入ったって盗むもの無いぞ。

……あ、あった。

「ゲーム機……」

俺の家で唯一高価な品と言えばテレビかゲーム機くらいだ。
一応貯金通帳と印鑑もあるけど、それは普段から俺自身が肌身離さず持っているから大丈夫。
とするとやっぱり……

ゴソゴソ……

「!」

なっ中で音がしたぞ!
って事は、今まさに犯行真っ最中!?
うわっどうしよう、なにか武器は――
辺りを見回したが、武器になるようなものは無かった。
くそっ!どうするっどうする!
しばらく考えていると、音がしなくなった。
しまった、逃げられたか!?
俺は音を立てないように再びキーをいれて鍵を開けると、ゆっくりとドアを開く。
もし犯人がいて、殴りかかってきたらヤバイので、身体はドアに隠しながら中を見る。

「……(ドキドキドキドキ)」

まず、玄関が見えた。
荒らされた形跡は無い。
次に玄関マット。
どうやら盗られていない。
まぁ、あんなの盗って嬉しい奴なんていないと思うけど。
なんだ……もう居ないのか。
ホッと一息してドアを開けた。

「やれやれ、ホント参ったものだ…ぜ……」

固まった。
いや、本当に固まった。
俺が玄関の前で見たもの、それは……


「お帰りなさいませ。あなた」


3つ指ついて正座をしている少女だった。

これから、俺にとって長い長〜い夜の始まりだった――


つづくっ!


N e x t T o p